作品タイトル不明
723話 さらに奥へ
過去の映像がゆっくりと薄くなって消えていく。
ほどなくして景色が切り替わり、元のダンジョンに戻っていた。
「……」
思い出した。
全部、思い出した。
そうだ、俺は昔、ラインハルトと会っていた。
彼に師事して、色々なことを教わっていた。
そして……
「にゃー……レイン、大丈夫?」
振り返ると、カナデが心配そうに眉をたわめていた。
他のみんなも似たような顔をしていて、次々に「大丈夫?」と声をかけてくれる。
……うん。
ラインハルトの記憶は衝撃的だった。
ガツンと頭を殴られたような感じで、ともすれば混乱して錯乱してしまいそうだった。
でも、大丈夫だ。
俺は一人じゃない、みんながいる。
みんなの存在が、俺の心を落ち着かせてくれる。
「大丈夫だ」
「うん……そっか、よかった」
カナデがにっこりと笑う。
「みんな、気になることはたくさんあると思うけど、説明は後でいいか? 村に残ったみんながいるところで、まとめて説明をしたい」
「だい……じょうぶ」
「二度、説明するのは面倒だからね」
「レインに任せるよ」
「アニキの言う通りにするっす!」
「ありがとう。ひとまず、今は最深部を目指そう」
ラウドネアはレイチェルが復活させた、ということらしいけど……
それだけの力はどこから持ってきたのか?
本当に他者の意図は絡んでいないのか?
レイチェルも知らないという、このダンジョンの正体は?
色々な謎が残されている。
その全ての解がこの奥にあるような気がした。
俺は、改めて覚悟を決めて奥へ進む。
――――――――――
いくつかの階段を下り、通路を進み……
ほどなくしたところで広場に出た。
さきほどとは違い、大して広くない。
普通の家のリビングと同じくらいだ。
奥に続く扉は固く閉ざされていた。
その脇に石版が見える。
「なにかしら、これ?」
「解錠のヒントが記されているのかな? えっと、にゃににゃに?」
「『資格を示せ』……なんのことかな?」
「私が読みたかったのに!?」
リファに先を越されてしまい、カナデの尻尾がへにょへにょと垂れる。
「資格……資格か」
最初、動物達を従えることも試練だとしたら……
「……なにも起きないか」
ビーストテイマーの血が関係していると思い、扉に触れてみるが変化はない。
予想は外れたみたいだ。
「ボクが斬る?」
「自分が殴ってもいいっすよ!」
「あんたら、なんでそう、物理で解決しようとするのよ……? 少しは考えなさい」
「……にゃっ」
「カナデも、こっそり扉を殴ろうとしないの!」
みんなもうまい方法は思いつかないようだ。
「……?」
そんな中、ニーナがとてとてと扉に歩いていく。
なんだか餌に誘われる小動物みたいだ。
ニーナは扉の前に立ち、じっと見つめる。
「ニーナ?」
呼びかけても返事がない。
なにか感じるものがあるのだろうか?
「えい」
ややあって、ニーナは左手で扉をタッチした。
なにも起きない。
「えい」
今度は、右手でタッチした。
すると……
「「「えっ」」」
鈍い音を立てて、扉がゆっくりと開いた。
「ひらい……ちゃった」
ニーナ自身も驚いているらしく、目を大きくしていた。
「えっ、えっ? ニーナ、今のどうやったの!?」
「まさか、ニーナにはカナデを凌ぐパワーが……そうなるとカナデの出番がないじゃない!」
「そうそう、私の唯一の長所が……って、ひどくない!?」
「おー、ノリツッコミだね」
「勉強になるであります!」
ニーナは扉に触れただけだ。
なら、鍵は神族?
でも、左手で触れた時はなにも起きなかった。
……もしかして。
「契約の証に反応した……のか?」
「にゃん? それ、どういうこと?」
「ほら。みんなは、俺と契約したことで手に模様があるだろう?」
「そういえば……」
「それが鍵の役割を果たしたんじゃないかな、って思ったんだけど……」
「にゃん!」
俺の言葉を受けて、カナデが右手で扉に触れた。
ガコンッ。
限界まで開ききっているため、それ以上扉が動くことはないものの、音を立ててわずかに反応した。
「間違いないっぽいね」
「すごいわ、ニーナ。よく気づいたわね」
「えっと……なんとなく、そう思って……」
「すごいすごい」
「ニーナのアネキ、すごいであります!」
「えへへ」
みんなに褒められて、ニーナは嬉し恥ずかしそうに三本の尻尾をぴょこぴょこと揺らしていた。
「単純に、契約の証が鍵なのか? それとも……」
最強種との契約が鍵となるのか?