作品タイトル不明
712話 試練のダンジョン
一時、場が混乱したものの……
なんとか落ち着かせて、話を続ける。
「わからないところも多いけど、でも、ある程度は把握したよ」
ラウドネアが復活したのは、村のみんなの祈りと願いによるもの。
レイチェルが起点となったため、彼女は事実を知っている。
他のみんなはなにも知らず、姿も記憶も昔のまま。
ただ、まだ謎は残る。
村が復活する起点となった、謎の力。
それと……
「でも、あのダンジョンはなんなんだ?」
村の中に出現したダンジョン。
なぜか、俺以外、鍵を開けることはできない。
「うーん……よくわからない!」
「え? わからないのか……?」
「うん!」
ものすごく元気に肯定されてしまった。
「私が起点になって村が復活したことは事実なんだ。でも、妙な力とか、私が関与していないところもあって……だから、全部を把握しているわけじゃないの」
「なら、この村は……」
「みんな、もう一度、レインくんに会いたい。そんな思いが具現化したものだよ。会いたいだけじゃなくて、話をしたいとか、色々あるかもだけど。あ、もちろん、私もあるよ?」
「みんなの想い……か」
嬉しいような。
でも、向き合うのが怖いような。
なんだか複雑な気分だ。
あの日、あの時。
村が滅びたのは、もしかしたら……俺のせいかもしれない。
この体に流れる血のせいで、魔族に狙われたのかもしれない。
だとしたら、みんなは俺を恨んでいるかもしれない。
心の中で、鬱憤としたものを抱えているかもしれない。
村のみんなは優しい。
そんなことはないと思いたいけど……
でも、俺の心は弱くて、震えてしまう。
「「レイン?」」
ふと、心配そうな顔をした双子が俺を呼ぶ。
「どうしたのだ? なんだか、辛そうな顔をしているのだ……」
「大丈夫ですか? もしかして、風邪を引いたとか……」
「あ……いや、うん。大丈夫。ちょっと考え事をしていただけだから」
「「……」」
怪しい、という感じの視線を向けられてしまう。
みんなに相談してもいいけど……
ただ、今はうまく考えがまとまっていない。
もう少し落ち着いたら、その時は相談してみよう。
「レイチェルがわからないのなら、他のみんなもわからないか……」
「うん。村のみんなは偽物とかじゃないんだけど、昔のままで……現状を知っているのも、起点となった私だけなんだ。ごめんね、レインくん……」
「謝ることはないさ。レイチェルのおかげで、色々とわかったし……それに、みんなにまた会えたことは、すごく嬉しいから」
「レインくん……えへへ、優しいね。だから、大好き♪」
「「……」」
再び姉妹のジト目が。
いや、まあ。
返事を保留にしている俺が悪いんだけど……
これはどうしようもないのでは? と、ついつい自己弁護をしてしまう俺だった。
「それで、これからどうするんや? もう少し聞き込みをするん?」
「……いや、聞き込みは終わりにしよう」
起点となったレイチェルが知らないのなら、これ以上の情報を得ることは難しいだろう。
それよりも、確実に前に進むことができる方法がある。
「村のダンジョンを攻略してみようと思う」
「ホンマに? レイチェルちゃんも知らんみたいやし、敵の罠、って可能性もあると思うで?」
「でも、他に方法はないと思うんだ」
レイチェルの話を信じるなら……
このまま村を調査して、話を聞いて回っても、得られるものは少ないだろう。
なら、危険を犯してでも、ダンジョンを攻略した方がいい。
ティナの言う通り、罠かもしれないが……
でも、それにしてはやり方が回りくどい。
俺達をどうこうしたいなら、村のみんなを操り、襲わせた方が早い。
「罠の可能性は低いと思う。それに……」
「それに?」
「俺は、ダンジョンの奥に行かないといけない……そんな気がするんだ」
「……了解や」
ティナは、仕方ないなあ、という感じで笑う。
「ウチらのリーダーは、レインの旦那やからな。そのレインの旦那が決めたのなら、ウチらはとことんついていくだけや」
「うむ。我らマジカルプリティシスターズも力になろう」
「その呼び方、やめてくれませんか……? もちろん、ソラ達も力になりますよ。他のみんなも、同じことを言うと思います」
「うん、ありがとう」
みんなの優しい想いが、俺の心を奮い立たせてくれる。
ダンジョンの奥でなにが待っているかわからないけど……
でも、なんでも乗り越えられるような気がした。
「……」
ふと気づくと、レイチェルがまぶしそうにこちらを見ていた。
笑みが浮かんでいるけど、でも、それは少し寂しそうだ。
「レイチェル?」
「……ううん、なんでもないよ」
「そう……か?」
なんでもあるように見えたけど……
「準備とかあるから、すぐに攻略しないよね?」
「あ、ああ……そうだな」
「なら、今日はゆっくり休んで。村のみんなを集めて、盛大にお祝いをするから。さー、忙しくなるぞー!」
レイチェルは元気よく言って、駆けていった。
でも……どことなく、それは空元気に見えてしまうのだった。