作品タイトル不明
711話 もう一度会いたい
それは奇跡だ。
あの子のことが心配だ。
たった一人、残されてしまった。
家族を失い。
友を失い。
なにもかも、全て手の平からこぼれ落ちて……
このままだと、本人の命も消えてしまうかもしれない。
そう心配するほど、少年は弱り、憔悴していた。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
彼が死んでしまうなんて、絶対に嫌だ。
私達はいい。
もう死んでしまったのだから、今更、どうこうすることはできない。
生きたいと願ったとしても、それは死者の妄念でしかない。
でも、彼は違う。
まだ生きているのだ。
未来があるのだ。
それなのに……
「……どうか……」
みんな、彼の心配をしていた。
健やかに育ち、笑顔があふれることを祈っていた。
その想い。
祈りが力となる。
彼のためにできることをしたい。
彼のために力になりたい。
そうした願いが奇跡を呼んだ。
――――――――――
「幽霊になった後、そんなことをずっと祈っていたんだけど……ある日、奇跡が起きたの」
レイチェルの話を聞いているのだけど……
祈りとか奇跡とか、ちょっと想像の範囲外の話ばかりだ。
幽霊?
ティナがいるから、幽霊は当たり前のように存在すると認識しているため、今更、それを否定するような考えはない。
「なんか、ものすごい力が流れ込んできて……それで、願ったの。レインくんのためになるような、あの時の村が戻ってきますように、って」
「そうしたら……村が復活した?」
「うん」
と、いうことは……
レイチェル達は、元々幽霊だった?
みんなの持つ力が重なり、大きなものとなって、村を復活させた?
いや。
でも、突然、ものすごい力が流れ込んできたというし……
第三者が介入している可能性も否めない。
「むううう……なんか、複雑すぎる話で頭が混乱してきたのだ」
「ソラもです……そのような現象、今まで聞いたことがありません」
「ティナは、なにか心当たりはないか?」
「うーん、せやなー……」
ティナは少し考えて、ややあって首を横に振る。
「ウチもわからんな。長く幽霊やってれば、そりゃ、多少なりとも力はつくよ? でも、村一つ復活させるなんて、そんなもん、無茶苦茶や」
「だよな……」
ある意味で、死者を復活させるのと変わらない。
ミナが使った死者蘇生魔法は、代償として自分の命を捧げなければならなかった。
それくらい、死者蘇生というのは難しいものなのだ。
それなのに、村人全員を元に戻して……
焼け落ちたはずの村も復活させて……
神の御業としか言えない。
「詳しいことは……」
「ごめんね。理屈とか原理とか、そういうことはわからないんだ。ただ祈っていたら、いつの間にかこんなことになって……ただ」
困り顔から一転して、レイチェルは優しい顔で言う。
「私が核になっていることは間違いないよ。その、うまく説明できないんだけど……そう感じるの。私の願いがきっかけになって、力があふれた……そのはず、なんだよ?」
自分でも自信がないらしく、ちょっと不安そうだ。
「そっか……ありがとう、レイチェル」
「え?」
「どういうものか、まだよくわからないけど……でも、また家族に会えた。村のみんなに会えた。それと……レイチェルに会えた。すごく嬉しいよ」
「……レインくん……」
レイチェルは瞳を潤ませて、それから、小首を傾げる。
「でも、疑わないの? なにかの罠だったりするかもしれないよ?」
「その可能性は考えたけど……」
カグネの時と似た事件かもしれない。
ただ……
目の前にいるレイチェルは、本物だって感じた。
幻でも誰かが化けているわけでもなくて、確かに彼女なんだ、って思う。
「レイチェルは本物だ。嘘を言っているとは思えない」
「なんで断言できるの?」
「幼馴染だろう? わかるよ」
「……っ……」
レイチェルは、ぐっと言葉を詰まらせて……
「わーん! やっぱり、レインくん大好き!」
思い切り抱きついてきた。
「「あーーーっ!!!?」」
ソラとルナが、なにしているんだ!? というような感じで叫んで、
「おー、新しいライバル出現やな」
ティナは、楽しいことが起きたとばかりに、ニヤニヤと笑うのだった。