軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

710話 幼馴染

「わーい、レインくんだ! おかえりなさい! いつ帰ってきたの? ねえねえ!」

「えっと……」

女の子は俺の上に乗ったまま、にこにこ顔で質問をぶつけてきた。

まったく邪気のない笑顔。

太陽のような明るさ。

なんだろう?

どこかで見覚えが……

「れ、レイン!? 大丈夫ですか!?」

「あ、うん。俺は大丈夫。これくらいで怪我をするほどやわじゃないから」

「そうですか……ほっ、よかったです」

「ところで、そのちんまい女は誰なのだ? まさか……現地妻!?」

「違うから」

どうして、そんな発想になるのだろうか?

ルナは、ちょっと日頃の自分を改めてもらいたい。

「こーら!」

女の子は不満そうに頬を膨らませた。

「ちゃんと、ただいま、って挨拶をしないとダメなんだよ?」

「……あっ……」

その顔が、その声が、記憶の中のとある人物と重なる。

物心ついた時には隣にいて。

遊ぶ時はいつも一緒で。

大事な……幼馴染。

「レイチェル……?」

「だーかーらー、挨拶!」

「あ、うん。ただいま」

「うん。おかえり、レインくん!」

にっこりと笑う幼馴染は、やっぱり、記憶の中のものとなにも変わらないのだった。

――――――――――

レイチェル・クラフト。

物心ついた時からの幼馴染で、いつも一緒の時間を過ごしていた。

一緒に遊んで。

一緒にごはんを食べて。

一緒に寝て。

大事な幼馴染なのだけど……

でも、あの日、その命は失われた。

この目で確認しているから間違いない。

だけど……

「んー? どうしたの、レインくん。じっと私を見て」

「あ、いや……なんでもないよ」

俺と手を繋いで、とてとてと隣を歩くレイチェルは、あの頃となにも変わらない。

見た目も、性格も、その心も……

なにも変わらない。

またレイチェルと話をすることができて、それは素直にうれしい。

うれしいけど……でも、複雑な気分だ。

夢を見ているような感じで、現実感が乏しい。

「「むー」」

ちなみに、ソラとルナもこちらをじっと見つめていた。

半ば睨みつけている。

「レインの旦那は、罪な男やなー」

「悪いと思っているけど……」

二人の気持ちを知っているから、そんな行動に出てしまうのも、わからなくもない。

でも、小さな女の子にまで嫉妬しなくても。

「今のレイチェルは子供なのに」

「あかんなー、あかんで。恋愛において、全ての女性がライバルやねん。幼いとか高齢とか、関係ないんよ」

「そういうものなのか……?」

「そういうもんや。ましてや、レイチェルはレインの旦那の幼馴染。ものすごいパワーワードや! ソラとルナが警戒するのも当然やな。他のみんなも、同じように警戒すると思うで?」

「本当に、ただの幼馴染なんだけどな……」

レイチェルは大事な幼馴染だけど、恋心はない。

いや。

もしかしたら、昔はあったのかもしれない。

でも、子供だったから自覚はなくて……

やがて別れが訪れて……

幼い想いは、そのまま思い出に変換された。

だから、今、レイチェルに抱いている想いは友達に対するそれだ。

恋心とは違う。

違うんだけど……

「「むむむ……」」

ティナが言ったように、ソラとルナにとっては恐るべき敵という認識らしく、険しい表情を崩してはくれない。

これ、カナデ達もそうなるのかな?

そんな光景を想像して、やれやれとため息をこぼすのだった。

「ところで、レイチェル」

「なーに?」

「俺達、どこに向かっているんだ?」

こっちに来て?

と、手を引かれるまま彼女についてきたのだけど……

行き先は告げられていない。

「もしかして、一緒に遊びたいのか? でも、悪いけど今は……」

「一緒にお話しよう?」

「お話?」

「うん。レインくんに話しておきたいことがあるの」

「それは……」

ふと、レイチェルは足を止めた。

繋いでいた手を離して、まっすぐこちらを見上げる。

「レイチェル……?」

彼女は、子供らしからぬ表情をしていた。

大人のように、とても落ち着いていて……

まるで、一気に十年くらいの年月が流れたかのようだ。

その変化に唖然とする中、レイチェルは静かに口を開く。

「私なら、レインくんの疑問に答えられるよ」

「え? それは、どういう……」

「この村は、私が作ったんだ」