作品タイトル不明
709話 異物
「……ごめん、もう大丈夫」
みんなのおかげで落ち着くことができたけど……
冷静になると、ものすごく恥ずかしくなってきた。
みんなの前で、あんなに泣いてしまうなんて……
ダメだ、ものすごく恥ずかしい。
たぶん、俺の顔は今、赤くなっていると思う。
「ふふ、照れるレインはかわいいですね」
「うむ。普段、しっかりしている男性がこうなると、なんだかキュンとくるのだ」
「母性をくすぐられるなー」
「やめてくれ……いや、ホント勘弁して」
穴があれば入りたい気分だった。
「ふぅ……でも、こんなところで時間を潰していられないな」
理由はわからないけど、ラウドネアの人々が当時のまま蘇った。
本人達にその自覚はない。
今のところ、幻影や幻覚という可能性は低い。
少しずつ状況を把握できている。
ただ、謎は謎のまま。
全容を解明するのは、かなり大変そうだ。
「となると……やっぱり、あそこを調べるべきか」
――――――――――
村の中心にやってきた。
本来なら、そこには湖があるはずだった。
村の水源になっていて、湖底が見えるほど綺麗な場所……だった。
でも、今は湖はない。
代わりにダンジョンが作られていた。
地下に伸びているダンジョンらしく、地上にあるのは入り口のみ。
家二軒分くらいの大きさで、パッと見、遺跡と勘違いしてしまいそうだ。
「ふむ。これが、ラウドネアにできたというダンジョンか」
「一般的なダンジョンとあまり変わらないように見えますが……でも、なんでしょう? この感覚は」
「魔力じゃない、なんか妙な力を感じるなー。なんやろ、これ?」
みんな、それぞれ怪訝そうな顔に。
滅んだはずの村が、昔のまま復活してて……
さらに、その中央には、なかったはずのダンジョンができていた。
謎だらけだ。
「レイン、このダンジョンについての調査は行われていないのですか?」
「調査を試みたものの、失敗したみたいだ。扉が開かなくて、誰も中に入れなかったらしい」
ユウキとサーリャさまから預かった報告書を見つつ、そう答えた。
「扉は……頑丈そうやな」
「普通の鍵だけじゃなくて、なにやら、魔法を用いた封印が施されているっぽいのだ」
「見たことのない術式ですね……ソラ達なら解除は可能かもしれませんが、それでも、相当な時間がかかるかもしれません」
「できれば、ここを調べたかったんだけど……厄介だな」
ため息をこぼしつつ、ダンジョンの扉に触れた。
「えっ」
なにもしていないはずなのに、扉に刻まれた魔法陣が光り輝いた。
わずかに鳴動しつつ、扉がゆっくりと開いていく。
「「「……」」」
突然の出来事に、俺達はぽかーんとしてしまう。
ややあって、最初にソラが我に返る。
「えっと……レイン、今、なにをしたんですか?」
「い、いや……なにもしていないんだけど。見ての通り、軽く触っただけだ」
「でも、開きましたよ?」
「レインだから、なにかしたのではないか?」
「レインの旦那やからなー」
「あのな」
俺だから、という理由でなんでもかんでも片付けないでほしい。
「もしかして……レインが鍵の役割を持っていたのでしょうか?」
「どういうことなんだ?」
「推測でしかありませんが……このダンジョンには鍵がかけられていました。それは、報告書などを見て明白です。故に、誰も入ることはできませんでしたが……しかし、封印されている以上、解錠方法はあります。その鍵がレインなのではないか、ということです」
「俺、なにも持っていないけど……って、まさか」
「はい。レインそのものが、鍵としての役割を果たしたのかと」
物理的な鍵ではなくて。
魔力の鍵でもなくて。
個人を鍵とする技術があるらしい。
王家でもその技術が用いられていて……
王族しか入ることができない隠し部屋が存在するとか。
たぶん、このダンジョンはそれと同じ技術が使われているのだろう。
でも……なんで俺?
「レインが調査に適任というのは、こういう意味もあったのかもしれませんね」
「それは……」
ありえない、と否定することはできない。
ユウキやサーリャさまなら、ここまで予測していた可能性がある。
「あ……」
あれこれ話し合っていると、扉は再び閉じてしまう。
侵入者対策なのか、一定時間で閉じてしまうみたいだ。
「どうしますか、レイン?」
「……ダンジョンの攻略はする。ただ、その前に、村を隅々まで調べておきたい」
準備はもちろん、できる限りの情報を集めておきたい。
そうやって、万全の体勢で挑まないと。
「ひとまず、ダンジョンはこれくらいにして、続けて村の調査を……」
「あーーーっ!!!」
突然、大きな声が響いた。
何事かと振り返ると、幼い女の子が。
たぶん、十歳くらい。
大きなリボンがトレードマーク。
丈の長いスカートを履いているけど、構うことなく全力ダッシュ。
その顔はキラキラと輝いていて、とびっきりの笑顔が浮かんでいた。
太陽のような笑顔には見覚えがあって……
「レインくんだーーー!!!」
「「「っ!!!?」」」
駆け寄ってきた女の子を支えられず、そのまま押し倒されてしまい……
それを見たソラとルナとティナが、それぞれ驚きの表情を浮かべるのだった。