作品タイトル不明
700話 隠されていた真実
「……え?」
魔族が最強種……?
思いもよらない話を聞かされて、思考が停止してしまう。
「それ、どういう意味なんだ?」
「どうもこうも、そのままの意味ですよ」
「魔族が……最強種?」
「そうですね。あれ、アニキは知らなかったんです?」
「知らないというか……」
それは本当のことなのか?
まず最初に疑いが出てきてしまう。
それくらいに衝撃的な話だった。
「ちょ、ちょっと! そんな話、あたしは聞いたことないわ」
「私も……もしかして、イリスならなにか知っている?」
「いえ。わたくしも初めて聞く話ですわ」
色々あったけど、イリスは百年近く前のことを知っている。
そのイリスが知らないということは……
ライハの勘違いか。
あるいは、百年よりもっと前に遡らないとわからない話なのか。
「ライハ。その話、詳しく教えてくれないか?」
「んー……アニキの役に立ちたいけど、自分も詳しいことはわからなくて。家族からそういう話を聞かされて育ったものだから、そういうものだ、っていう程度の認識なのであります」
「そう、なのか……」
そういうことなら仕方ない。
でも、落胆はしてしまう。
今……もしかしたら、世界の真理に触れたのかもしれない。
あるいは、その入り口に辿り着いたか。
でも、扉を開くことはできず、それ以上進むことはできなかった。
……もどかしい。
「よし」
わからないことを考えても仕方ない。
忘れないようにしつつ、今は保留。
これからの話をしよう。
「話を戻すけど、俺はビーストテイマーでみんなと契約している。ライハもするか?」
「お願いします! アニキの舎弟になりたいです!!!」
「舎弟って……」
この子の口調や価値観、家族の影響なのだろうか?
だとしたら、ライハの家族っていったい……?
……まあいいか。
「じゃあ、いくぞ」
「ばっちこい!!!」
すぅっと息を吸い込み……そっと吐き出した。
そうして心を整えて、深く集中する。
「我が名は、レイン・シュラウド。新たな契約を結び、ここに縁を作る。誓いを胸に、希望を心に、力をこの手に。答えよ。汝の名前は?」
「……ライハ……」
あふれた光がライハの手に収束されていく。
それは魔法陣となり、契約の証を刻む。
「ふぅ……よし、成功だ」
まさか、魔族とも契約をしてしまうなんて……
さすがにこれは予想外なので、いつも以上に緊張した。
「あん? なんでありますか、これ?」
手に浮かぶ魔法陣を見て、ライハは小首を傾げた。
そんな彼女に、カナデがにっこりと説明する。
「それは、レインとの契約の証だよ。ほら、私もあるよ」
「おー、カナデの姐さんと同じヤツですね」
「特になにかあるってわけじゃないから安心してね、にゃふー」
カナデは先輩風を吹かせたいみたいで、あれこれとライハに説明をしていた。
ちょっとドヤ顔だ。
「なにかわからないことがあれば、あたしに聞きなさい。カナデは頭空っぽ猫だから、あたしの方が頼りになると思うわ」
「唐突なディスり!?」
「ふふ、レインさまについて知りたいことがあれば、わたくしにどうぞ。わたくしが秘密裏に調べ上げたレインさまの秘密、特別に教えますわ」
いつの間に!?
「我らもいるぞ!」
こちらも盗み聞きしていたらしく、みんなが部屋に入ってきた。
「我はルナなのだ! 高貴な精霊族。こっちは、横暴で凶暴な姉のソラなのだ」
「誰が横暴で凶暴ですか……えっと、ソラです。よろしくお願いします」
「ニーナ……です」
「ティナやでー。あ、ウチは最強種やなくて幽霊な?」
「鬼族。リファだよ」
「ふぃ、フィーニアといいます! こ、こここ、こんなワタシでよかったら仲良くしてくだひゃい!」
「僕、サクラ!」
みんなは笑顔で自己紹介を重ねていく。
「……」
その様子に圧されたのか、はたまた驚いているのか、ライハはキョトンとした。
知らないものに触れたような顔。
どうしてそんな顔をするんだろう?
「ライハ? どうかしたのか?」
「……え? あ、ああ。その……」
ライハは軽くうつむきがちになって、話をする。
「自分、魔族だから人間から嫌われてて……あと、魔族の中でも異端だから、仲間からも疎まれていて……こんな風に歓迎されたこと、一度もなくて」
「……ライハ……」
「家族以外で親しい人なんていなくて、友達はもちろん仲間もいなくて……」
「「「……」」」
「だから自分、こういう時、どんな顔をしたらいいか……どんな話をしたらいいか……くっ、情けないであります」
「「「ライハーーーっ!!!」」」
「うわ!?」
とても切ない話に、みんなの涙腺は決壊寸前だ。
一斉にライハに抱きついて、もみくちゃにする。
「な、なんだなんでありますか!? 姐さん方、どうしたんです!?」
「にゃー、これからは私が……ううん、私達がいるからね。ずっと一緒だからね」
「ええ、そうね。あたしが一緒にいてあげるから、もう寂しい思いなんてさせないわ」
「我らは友であり、そして仲間なのだ!」
「とてもおもしろい本があるのですが、ソラと一緒に読みませんか?」
「一緒に……遊ぶ」
「なーなー、ライハの好きな食べ物はなんや? 今日は、それ作ったるでー」
「ボクの眷属、なでなでする?」
「ぶぇえええええ、ライハさん、かわいそうです!」
「僕、ライハと遊ぶぞ!」
「わっ、わわわわわ!?」
みんなの勢いに押され、ライハは慌てていたけど……
でも、とてもうれしそうだった。