軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

699話 アニキ!

「……アニキ?」

アニキって……兄貴?

え?

それはどういう意味なんだ?

訳がわからなくて、ぽかーんとしてしまう。

そんな俺に、ライハは追加で説明をしてくれる。

「自分、あなたの心意気に一目惚れしました!」

「「「なんだってーーーっ!!!?」」」

バーン! と扉が勢いよく開いて、カナデ達が部屋に飛び込んできた。

どうやら盗み聞きをしていたらしい。

俺のことを心配してくれたんだろうけど……

でも、半分くらいは興味なんだろうな。

「レインに、ひ、一目惚れとか……そういうのはダメなんだよ!?」

「そうよ! いきなり現れて一目惚れとか、あたし達よりインパクトのある行動をとってるんじゃないわよ!」

「わたくし達を差し置いて、大胆な行動……ふふ、調教しなくてはいけませんわね」

「ひっ!?」

それぞれ殺気を発する。

いや、あの……

気持ちはわからないでもないんだけど、だからといって殺気はやめてくれ。

ライハも怯えているだろう?

「大丈夫。カナデ達は荒っぽいことをするわけじゃないから……たぶん」

「たぶん!?」

「それよりも、もう少し詳しい説明をしてくれないか? アニキとか心意気とか、よくわからない」

「すまないっす。えっとですね……」

ライハ曰く……

彼女の家系は、義理と人情を命よりも大事にするらしい。

恩を受けたのなら必ず返せ。

どのような状況であれ、人の心を失ってはならない。

そんなことを徹底的に教え込まれていて……

それともう一つ。

己の人生を捧げる主を見つけることが、彼女の家系の生きる道らしい。

主を見つけて、自分の全てを捧げる。

そうして忠義を尽くして奉公することが最高の生き方……という。

「それで……俺に仕える、っていう話に?」

「はい! お願いしますです!」

「うーん」

いきなりの話に困惑しかない。

「俺、ライハに尊敬されるようなことはしていないんだけど」

「自分を助けてくれました! 魔族だからって差別しないで、普通に接してくれました!」

「……」

「……」

「え? それだけ?」

他に理由があるのかと思い、言葉を待つのだけど、なにも出てこない。

「それだけっすね」

「そんな単純な……」

「人生の真理なんて、意外とわかりやすいものですよ?」

「そう言われると、そうかもしれないけど……だからって、主を決めるとかすごく大事なことだろう? 普通に接したとか、そんなことだけで決めていいのか?」

「その普通が大事なのであります」

そう言うライハは、どこか苦い表情をしていた。

「自分、魔族なんで……けっこうきつい生活をしてきました。自分は人間のことはどうとも思ってないけど、向こうは違う。敵って決めつけて攻撃してきて……普通に扱われたことなんて一度もないです。刃を向けられるのが当たり前で、助けられたことなんてないであります」

ライハの言葉から深い悲しみが伝わってきた。

特殊なケースなのか、この子は人間を嫌っていないみたいだ。

でも、人間はライハを嫌う。

嫌うだけではなくて、殺そうとして憎しみをぶつけている。

そんな人生を送ってきたのなら……うん。

ライハの言葉に納得できるところがあった。

俺としては、ただ助けただけ。

でも、ライハからしたら、初めて人間に優しくされた。

助けてくれた。

それが、どれほどうれしいことか。

俺は想像もできないけど……彼女の人生観を変えてしまうくらい、衝撃的なことだったんだろう。

「だから、自分はアニキをアニキになってほしいであります! 自分の全部でアニキの力になって、支えたい! この人しかいないって、初めてそう思うことができたのであります!」

「……そっか」

ここまでの情熱、想いを向けられたら断ることはできない。

「えっと……」

カナデ達の方を見ると、やれやれとため息をこぼされてしまう。

「にゃー……本当はすっごい微妙な気持ちだけど、でも、仕方ないよね。この子の気持ち、私もちょっとわかるし」

「魔族までたらしちゃうなんて……レインのおかしさは慣れたつもりだったんだけど、まだまだみたいね」

「罠の可能性もありますが……まあ、その時は、わたくしやみなさま方でなんとかいたしますわ。レインさまは、レインさまのしたいようにされればいいかと」

「ありがとう、みんな」

ライハに手を差し出す。

「君の主らしくなれるかどうか、そこはなんとも言えないけど……でも、胸を張って自慢できるようにがんばるよ」

「それじゃあ……」

「これからよろしく」

「あっ……」

ライハは驚きに目を大きくした。

次いで、にっこりと笑顔の花を咲かせる。

「はいっ、アニキ!」

その笑顔は百点満点で、見る者の心を晴れやかにするものだった。

「よろしくね、ライハ。私はカナデだよ」

「竜族のタニアよ」

「ふふ、イリスと申しますわ」

「自分はライハであります! 姐さん方、よろしくお願いします!!!」

「「「……姐さん……」」」

かわいい妹分ができたことはうれしそうだけど、姐さん呼ばわりに対しては微妙な顔をするカナデ達だった。

「ねえねえ、レイン。仲間になったっていうことは、ライハとも契約するの?」

「契約? どういうことでありますか?」

「あ、ライハはまだ知らないんだっけ。レインはビーストテイマーなんだよ」

「……ビーストテイマー……」

「規格外のとんでもテイマーだから、あたし達とも契約しているの」

「じ、自分もしたいであります!」

「それは……」

俺は、ついつい言葉を詰まらせてしまう。

最強種と契約することはできたけど、魔族と契約することはできるのか……?

そんな話、故郷でも聞いたことがない。

「アニキ……自分では不満ですか?」

「あ、いや。そんなつもりじゃないんだ、ごめん。ただ、魔族と契約したなんていう話聞いたことがないから、できるのかな……って」

「ふふ、レインさまなら、なんだかんだ言いつつも成し遂げてしまいそうですが」

茶化すイリス。

そんな中、ライハが不思議そうに小首を傾げた。

「でも、アニキは、カナデの姐さん達と契約してますよね?」

「そうだよ」

「なら、自分ともできるのでは?」

「え? ……それ、どういう意味なんだ?」

「だって……」

ライハの口から衝撃的な事実が告げられる。

「魔族も最強種ですよ?」