作品タイトル不明
695話 ひとまずの勝利
「癒やしの炎よ……」
フィーニアの能力で怪我を癒やしてもらう。
傷は癒えていくのだけど、失った血や体力が戻るわけじゃない。
その場に座り、ちょっと休憩。
そんな中……
「あうー」
人型になったサクラが俺に抱きついて離れない。
どうにかこうにか、服を着せることはできたものの……
それ以上は無理だった。
磁石みたいにひしりとくっついている。
「むぅ」
イリスが面白くなさそうな顔をするものの、今は勘弁してほしい。
サクラはとても不安そうな顔をしていて……
尻尾もしゅんと垂れている。
仕方ないとはいえ、俺達を攻撃してしまったことを強く後悔しているようだ。
大丈夫だろうか? と、強く不安に思っているようだ。
なら、今はサクラの好きにさせてあげようと思った。
「お、終わりました、レインしゃん!」
「うん……痛みは完全に消えたよ。ありがとう、フィーニア」
「い、いえ! これくらい……そ、それにワタシがやらなくても、レインさんなら自然に治癒することが……あ、そうなるとワタシはいらない子……」
「……フィーニア」
「あっ」
片手は俺の服を掴んだまま、サクラがもう片方の手でフィーニアの頭を撫でる。
「フィーニア、すごい。こんなこと、できない。すごい」
「サクラちゃん……」
「ん」
フィーニアを元気づけるように、サクラがにっこりと笑う。
強い子だ。
自分もまだ不安なのに……
それでも、友達のためを想って行動することができる。
こういうところ、シグレさんに似ているな。
「よし」
サクラと手を繋いで、静かに立ち上がる。
体力は戻っていないけど、傷が癒えたからそれなりに動くことはできる。
それからサクラの両親のところへ。
「母……父……」
サクラが悲しそうな顔に。
その頭を優しく撫でる。
「大丈夫。二人は気絶しているだけだから」
「……うん……」
サクラの顔色は晴れない。
やっぱり、両親が獣型のままなのが気になるのだろう。
なにかしら異変が起きているのだろうけど……
ただ、俺達じゃあ知識がまったく足りない。
「イリス、ティナ。悪いけど、ホライズンに戻ってタニアを呼んできてくれないか? あと、ソラとルナに伝言を頼む」
「ええ、かしこまりましたわ」
「了解やでー」
俺が意図しているところを察した様子で、二人は二つ返事でオーケーしてくれた。
おつかいをさせてしまうのは申しわけないのだけど……
サクラがこんな状態なので、今はここを離れることができない。
それに、サクラの両親もきちんと守らないとな。
アリオスは消えた。
その他、敵らしい敵はいないけど……
たぶん、研究員や警備の兵はどこかに残っているだろうからな。
無理してサクラの両親を運ぼうとせず、ホライズンに残るみんなに協力を求めた方がいい。
「では、行ってまいります」
ティナを頭の上に乗せたイリスが一礼して、広間を後にした。
ティナが落ちそうになっていたけど、それは見なかったことに。
大丈夫かな?
「よし。じゃあ、まずは……物質創造」
イリスとティナが出たところで、入り口を石の壁で塞いだ。
鍵代わりだ。
「フィーニア、サクラの両親を頼んでもいいか? できる限りでいいから治療を頼む」
「は、はい。わかりました。えっと……レインさんとサクラちゃんは?」
「ちょっと奥が気になるんだ。サクラと一緒に調べてくる」
「わ、わかりました。ここは任せてくだしゃい!」
ちょっとずつだけど、フィーニアも頼もしくなってきているような気がした。
うん、大丈夫。
安心してサクラの両親を任せることができる。
「じゃあ、行こうか、サクラ」
「うん」
サクラと一緒に広間の奥へ。
見慣れないものが並んでいるけど、人の姿は見えない。
もちろん、魔物の姿も。
なにかあるような気がしたんだけど……
うーん、気のせいだったかな?
「レイン」
くいくいとサクラに服を引っ張られる。
「あっち」
「あっち?」
サクラが指差す方向を見てみると、壁に小さな亀裂が走っていた。
いや、これは……
「隠し扉……か?」
「変な匂い、する」
軽く触れてみると、やはり隠し扉だったらしく、壁が動いた。
簡単に動くみたいだ。
さて……どうする?