作品タイトル不明
693話 間違っていた
いつの間に動いていたのか、ティナが跳躍。
そのままサクラの頭の上に着地した。
「ティナ、危ない!?」
「大丈夫や。この体は仮のものやし、うち、幽霊やから物理は効かないで」
「それは……」
「待っててな! ちと、強引に取り憑いてみるわ」
そう言って、ティナはサクラの頭に両手を当てた。
「ガァアアアッ!」
離れろというようにサクラが暴れた。
ティナが振り落とされそうになって……
「ティナ!」
慌てて駆け寄り、支える。
「おおきに!」
「頼む!」
ティナを支えつつ、さらに魔眼でサクラの動きを封じる。
それでも尚、サクラは暴れるのをやめない。
みんなの拘束を振りほどこうとして、怒りに吠える。
くそっ、なんて力だ。
みんなで協力しているのに、抑えるのが精一杯なんて。
これが闇落ち。
とんでもない力だ。
ただ……
どこか、今の状態のサクラに見覚えがあるような気がした。
「いくでー!」
気合を入れるような声を上げて、ティナが再びサクラに取り憑いた。
「ガウ……!?」
途端にサクラの動きが鈍くなった。
自由に動けない様子で、時折、体がビクビクと震えている。
うまくいったのだろうか?
引き続き、全力でサクラの動きを封じつつ、様子を見る。
「ガッ……グググ、ウウウウウゥーーー!」
唸り声は継続して響いていた。
まだサクラの自我が残っている証拠だ。
そして……
「あわわ!?」
がくりとうなだれていたティナの人形が動き出した。
とても慌てた様子で、一度、サクラから距離を取る。
「ティナ、大丈夫か!?」
「ウチは問題ないで。ただ、失敗してもうた!」
ティナの憑依も通用しないなんて……
いったい、どうすれば!?
諦めるつもりなんてない。
最後の最後まであがいてやる。
ただ、攻略法を確立しないと……
「サクラちゃん!!!」
「っ……!?」
フィーニアが強く強く叫んで……
そして、サクラが足を止めた。
「だ、ダメだよ、こんなこと……こんなことしてたらいけないんだよ!」
「ウゥ……」
「お願い、元の優しくて元気なサクラちゃんに戻って?」
「グゥ……ウウウゥ……」
いつも一緒にいるフィーニアの言葉に、サクラは迷うような動きを見せた。
でたらめに暴れるのを止めて、じっとフィーニアを見ている。
ただ、完全に正気に戻ったわけじゃない。
禍々しい姿は変わらず。
どうにかこうにか殺意を押さえているという感じで、低い唸り声が響いていた。
「……そっか」
やり方を間違えていたと、今までの行動を恥じる。
無理矢理押さえつけようとしても意味がない。
動物を使役する時、心を通わせないといけない。
それと同じで、今の状態のサクラとも心を通わせないといけないんだ。
闇落ちしたからといって、力をぶつけるなんてダメだ。
フィーニアがそのことを教えてくれた。
「ありがとう、フィーニア」
「ふぇ!? わ、ワタシ、なにかしたでしょうか……?」
「ものすごく大事なことを教えて……思い出させてくれたよ」
色々とあって。
特訓などをして。
それなりの力を得ることができた。
だからこそ、本分を忘れていたのかもしれない。
「みんな、別の意味で援護を頼む」
「別の意味……ですか? それはどういう……」
「詳しく説明しているヒマはないけど、でも、わかると思う」
そう言って、俺はサクラの前に立つ。
「サクラ!」
「グルルルゥ……!!!」
「両親があんなことになっていてショックだよな。悲しいよな、苦しいよな。でも、大丈夫だ。二人は絶対に助けてみせる」
「……」
「だから、絶望することなんてないんだ。いつもみたいに、元気に笑ってくれるところを見せてくれないか?」
「ガァッ!!!」
吠えて、駆け出した。
速い。
目で追えないほどで、圧も半端ない。
でも、無理に対抗する必要はない。
武器を向ける理由もない。
だって、サクラは仲間だ。
「止まってくれ」
「っ……!?」
俺に襲いかかろうとしていたサクラが足を止めた。