軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

691話 闇落ち

二頭の動きを封じて、無力化することに成功した。

ただ、理性は失われたまま。

再び暴れだしては困るので、申しわけないけど、拘束して特殊な薬草で眠らせておいた。

サクラに語りかけてもらうことで、理性を取り戻してくれるだろうか?

それが無理だとしたら……魔法でなんとかなるかな?

ソラとルナなら、状態異常を解除することができそうだけど……

「ただ、その場合は家まで戻らないといけないんだよな」

人選を間違えたかもしれない。

捕まっているだけじゃなくて、洗脳されている可能性も考慮しておくべきだったな。

「とはいえ、今はできることをするしかないか」

今の戦闘はそれなりに派手で、大きな音が響いた。

たぶん、すぐにみんなもここに……

「レインさま!」

「レインの旦那!」

イリスと、その頭の上に乗ったティナが姿を見せた。

「なにやら、戦闘の音が聞こえてきましたが……」

「おわ!? な、なんや、このでかいワンコロは!?」

「えっと……」

二人に事情を説明した。

「なるほどなー、この二頭がサクラの」

「なぜ人型ではないのでしょう?」

「断言はできないけど、研究のせいだと思う」

たぶんだけど、獣の姿の方がより大きな力を発揮できるのだろう。

だから、強制的に獣の姿をとらされて、実験を繰り返されていた……というところか?

……嫌な気持ちになる。

「二人の方はどうだった? なにか見つかったか?」

「他に捕まってる子はおらんかったなー」

「ですが、研究に関する資料を見つけましたわ。魔力でポイントしておいたので、後で、いつでも召喚することが可能です」

「ナイスだ、イリス」

サクラの両親を元に戻すため、資料は必要になるだろう。

それを押えることができたのは大きい。

「あとは、フィーニアとサクラと合流すれば……」

「れ、レインしゃん!」

ちょうどいいタイミングでフィーニアの声が聞こえてきた。

振り返ると、サクラと一緒にこちらへ歩いてくる。

「す、すみませんっ、遅くなりました!」

「謝ることじゃないよ。それよりも……サクラ?」

「……」

状況を説明しようとしたところで、サクラの様子がおかしいことに気がついた。

呆然とした様子で立ち尽くしている。

その視線は、気絶している両親に向けられていた。

「サクラ、大丈夫だ。気絶しているだけだから、大した怪我はしていないよ」

「資料も押えたので、きっと元に戻すこともできますわ」

「よ、よかったね、サクラちゃん!」

「……」

みんなが声をかけるものの、やはりサクラの反応はない。

呆然として。

唖然として。

そして……牙を見せる。

「グルルルルルゥ……!!!」

「サクラ!?」

サクラが唸る。

果てしない怒りを込めて、憎しみを瞳に宿して。

世界に対する怨嗟を響かせる。

「さ、サクラちゃん? どうしたの、サクラちゃん!?」

「フィーニア、こっちへ!」

「え? で、でも……」

「いいから早く!」

「は、はひっ」

強い口調で言うと、フィーニアはこちらに駆けてきた。

みんなを背中にかばいつつ、サクラを視界の中央に収める。

「レインの旦那、サクラは……?」

「……以前、カナデが暴走した、っていう話、覚えているか?」

「もちろん。あれはけっこうやばい感じで……まさか!?」

「俺も詳細を知っているわけじゃないけど、たぶん、あんな感じなんだろうな」

頬を冷や汗が流れる。

「フィーニア、できる限りサクラに呼びかけてみてくれないか? もしかしたら……」

「は、はい! サクラちゃん、サクラちゃん!」

「サクラさん、落ち着いてください!」

「怒りに飲み込まれたらダメやで!」

みんなも呼びかけるけれど、サクラに変化はない。

むしろ、さきほどよりも激しく荒々しく、感情を暴走させていた。

ダメ……なのか?

カナデも同じような状態になったことがある。

心に大きな衝撃を受けたことがトリガーになったらしいけど……

でも、サクラの場合はどうして?

……いや。

考えてみれば当たり前か。

ずっと両親のことを心配してて。

ようやく会えるかもしれないと期待をして。

でも、研究のせいでボロボロになった両親を見せつけられて。

サクラはまだ幼い。

彼女の心が耐えられるわけがない。

「ガァッ!!!!!」

一際大きな鳴き声を響かせて……

そして、サクラは変貌した。