作品タイトル不明
674話 目的がわからないからこそ怖い
「アルトリウスの行動を過去三十年に渡って調べている途中なんだけど……ところどころで魔族との密会が疑われているんだ」
「その相手が、あのリース……?」
「うん。色々な情報を重ねた結果、ほぼ間違いないと思っているよ」
ユウキの言うことだ。
間違いないのだろう。
「まさか、教会のトップが魔族と通じていたなんて……」
この分だと、他にも魔族と通じている者がいるかもしれない。
そう考えると頭が痛い。
「レインさまからの報告に目を通したのですが……アルトリウスが自らの体を異型のものとした技術は、リースから得たものと推測しています」
「そのために、アルトリウスはリースとコンタクトをとった?」
「はい。他にも目的はあるでしょうが……ただ、アルトリウスはいいように利用されていただけのようです」
「だろうな」
アルトリウスとしては、うまく魔族を利用しているつもりだったのだろう。
でも、そんなことは無理だ。
軽く顔を合わせたことがあるだけだけど……
リースという魔族は底が知れない。
果てのない地平線。
どこまでも続いていく崖。
底のない沼。
そんな不気味な感じがして、全てを見通すことはできない恐ろしさがあった。
彼女を利用しようとしても、逆にいいように転がされてしまうのがオチだろう。
事実、アルトリウスは利用されて……
そして破滅した。
「あれだけの騒動を引き起こして……リースは、いったいなにを目的にしていたんだ?」
西大陸でも事件の背後にリースの姿があった。
それ以前の色々な事件にも関わっていて……
なにをしようとしているのか?
最終目標は、どこに設定しているのか?
早くそれを突き止めないといけないような気がした。
「私達からの報告はこのようなところです」
「ありがとうございます。というか……これ、かなり貴重な情報だと思うんですけど、話して良かったんですか?」
「レインさまなら問題ありませんし……というか、レインさまにこそ知っておいてもらいたかったのです」
「俺に……?」
「これから先、シフォンさまはもちろん、レインさまもとても重要な存在になってくると思うので」
過大評価のような気もしたが、でも、否定もできない。
今回のように。
あるいは西大陸の事件のように、ちょくちょく、重要な場面に顔を出しているんだよな。
これから先、同じようなことが起きるかもしれない。
うん。
その時は全力でがんばろう。
自分にできることをやって……
後悔のないように行動していきたいと思う。
「そういえば、レイン君にお願いがあるって言ってましたけど、それ、なんですか?」
ふと思い出した様子で、シフォンがそう尋ねた。
そういえば、そんな話があったっけ。
リースのことが衝撃的で、ついつい忘れてしまっていた。
シフォンの質問にユウキが応える。
「うん。ちょっと申しわけないんだけど……Aランク冒険者であるレインに、国からの依頼があるんだ」
「国からの依頼か……」
Aランク冒険者は大きな権限を持つが、時に、国などの大きな機関から依頼が飛んでくることがある。
その場合は、なにか事情がない限り、最優先で請けなければならない。
それがAランク冒険者の義務だ。
「どんな依頼なんだ?」
「……とある村の調査を依頼したいんだ」
「とある村?」
「今はもうない村なんだけど、最近になって、ちょっと気になることがあって……色々と考えた結果、レインが適任じゃないか、っていう結論になって、それで……」
「?」
ユウキにしては歯切れが悪い言い方だ。
どことなく気まずそうにしているし……
この依頼、なにか裏があるのだろうか?
……いや、それはないか。
ユウキは無茶なことはしないし、騙すようなことも絶対にしない。
友達だからな。
「なにか気を使っているみたいだけど、ハッキリ言ってくれて大丈夫だ」
「でも……」
「大丈夫」
「……うん、わかったよ」
こちらの覚悟を察してくれた様子で、ユウキは小さく頷いた。
軽い咳払いの後、本題を告げてくる。
「調べてほしい村は南大陸にあるんだ」
「南大陸……?」
まさか、と思う。
そして……
その予感は的中する。
「村の名前は……ラウドネア」
それは、俺の故郷の名前だった。