作品タイトル不明
675話 遥か遠い故郷
「……」
まさか、とは思ったけど……
本当に予想通りの展開になるなんて。
覚悟を決めていたけど、でも、これは予想外だ。
動揺してしまい、一瞬、頭の中が真っ白になってしまう。
「ごめん……レイン、大丈夫?」
「……ああ、大丈夫だ」
ユウキが気遣うようにこちらを見る。
ラウドネアが俺の故郷であることはユウキも知っているのだろう。
「その名前を聞くとは思ってなかったから……その、ちょっと驚いただけだ」
「ごめん。もうちょっと気を遣うべきというか、タイミングを考えるべきだった……」
「いいよ。どんな言い方をしても、俺は驚いていたと思うから。それに、驚いただけで、他に思うところはないよ」
「……ありがとう」
そうやって、二人の間で話が完結していると、
「にゃー……レイン、どういうこと?」
「あたしらにもわかるように説明してほしいんだけど?」
事情を知らないカナデ達は、不満そうに頬を膨らませていた。
しまった。
そういえば、みんなには故郷のことは話してあるが、その名前までは教えていなかったっけ。
「えっと……」
俺の故郷の名前がラウドネアであることを説明した。
「むう、レインの故郷の話だったのか……」
「すみません。ソラ達は、レインを不快にさせてしまったでしょうか……?」
「そんなことはないよ。ユウキにも言ったけど、驚いただけだから」
「……とりあえず」
話をまとめるようにイリスが言う。
「なぜ、レイン様の故郷の話が出てくるのか。そこが気になりますわ」
「うん、そうだね。そこを今から説明するよ」
ユウキ曰く……
とある冒険者パーティーが、偶然、ラウドネアの跡地に立ち寄ったらしい。
本来なら、そこは廃墟になっているはずなのだけど……
過去の災厄なんてなかったかのように、村が復興していたという。
村人達が普通に暮らしていて。
冒険者パーティーをもてなして。
なんてことはない、普通の光景が広がっていた。
ただ一つ、以前とは違う点が。
冒険者パーティーの証言によると、村の中央に地下ダンジョンがあったらしい。
探索してみようとしたものの、村人達に「その資格はない」と拒絶されて、調査は叶わなかった……という。
「……以上だよ」
「そんな、まさか……」
ラウドネアが復興していた?
それだけじゃなくて、ダンジョンがある?
いったい、どういうことだ?
欠片も予想していなかったことを聞かされて、頭の中がぐるぐると混乱してしまう。
「旦那」
ティナが優しい声で、後ろから俺を抱きしめた。
実体がないから、なにも感じることはできないのだけど……
でも、温かい気がした。
「大丈夫、大丈夫や。なにも焦ることはないからなー。ウチらがおる」
「……ティナ……」
彼女の心の熱が伝わってくるかのようだ。
動揺は収まり、代わりに温かい気持ちが広がる。
「うん、ありがとう。もう大丈夫」
「そっかー、なら良かったでー」
ティナはにっこりと笑い、ふわりと飛ぶ。
「……まさか、ティナも?」
「……ありえない話じゃないわね」
「……敵になると厄介なのだ」
カナデ達がひそひそ話をしていたものの、それは聞かなかったことにした。
ユウキに視線を戻す。
「今の話は本当なんだよな?」
「うん。冒険者達の証言を元に、僕達の方でも調査をしてみたんだ。そうしたら、確かにラウドネアは復興してて、ダンジョンもあった」
「……」
「ただ、ダンジョンを調査することはできなくて……あと、いつの間にか復興してた原因も不明。資格がどうのこうの、って言っていたから……普通の人だと、村に立ち入ることはできても、ダンジョンに入ることはできないんだと思う」
「そこで……俺?」
「うん。レインは、たぶん、その資格があると思うから……なかったとしても、この話は伝えておかないと、って」
「そっか……ありがとう」
ラウドネアが……故郷が復興している。
俺の知っている通りの故郷なのか?
それとも、知らない故郷になっているのか?
そこは気になるが……
復興しているのだとしたら、とてもうれしいことだ。
「それで、レインさまに調査をお願いしたいのです」
サーリャさまが言葉を引き継いで、そう言う。
「いまのところ、なにかしら害が出ているという報告はないのですが……内容が内容だけに、放っておくことはできません。もしかしたら、魔族が関係しているかもしれません」
魔族と聞いて、リースが思い浮かんだ。
ヤツの仕業……なのか?
「どうでしょうか? お願いできませんか?」
「引き受けるよ」