軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

663話 どうして?

ミナは、どこか他人事で目の前で繰り広げられる戦いを見ていた。

レインとラインハルト。

カナデとタニアとオフィーリア。

エリスとシフォン。

それぞれ、アルトリウスが召喚した天使と激戦を繰り広げている。

彼らだけじゃない。

街のあちらこちらから戦いの音が響いてきた。

零式監獄を解除するため。

そして、街の人を守るため、たくさんの人が戦っているのだろう。

「……どうして……」

なぜ、彼らは戦っているのだろう?

どうして、ここまで必死になることができるのだろう?

ミナはそんな疑問を抱いていた。

「アルトリウスさまが黒幕……だから、事件を解決するために戦う? でも、そんなことをしても……」

勝てるわけがない。

敵うはずがない。

相手は、アルトリウス・グレイゴム。

教会のトップに立つ男。

ミナにとって、アルトリウスは神にも等しい存在だ。

そのように幼い頃から教育されてきた。

絶対的な存在。

永遠に超えることができない壁。

そんな相手が敵になった時点で、もう終わりだ。

負け確定。

どれだけ抗おうと、最終的に破滅が待ち受けている。

「……そんなことになる、くらい……なら……」

ミナは、ふらりと立ち上がる。

そして、どこか虚ろな目でアルトリウスを見た。

「私が……この命を捧げれば……」

そうすればアルトリウスは目的を達成できる。

これ以上、無駄な破壊行為はしないだろう。

彼が合理的な人間であることを、ミナは知っている。

「私が……」

足が震えた。

死ぬことが怖い。

どうしようもなく怖い。

でも、それ以上に……

なにも価値がないと言われる方が恐ろしい。

今までずっと、教会のために生きてきた。

外の者が見れば、一目で虐待とわかるような訓練を幼い頃から受けてきた。

教会の命令に絶対服従するように育てられた。

そして、勇者パーティーの一員となり……

いざという時は、その命を捧げるつもりでいた。

全て命令されたことで、自発的にものを考えたことはない。

だからこそ、価値がないと言われてしまうことが恐ろしい。

そんなことを言われたら、生きている価値がないと同等ではないか。

この世にいてもいなくても、どちらでもいいことになるではないか。

ならば、最後に……

せめて、自分で考えた最善を行うことこそが、『良い』ことなのではないか?

「……私、は……」

ミナは、ふらふらとアルトリウスのところへ向かう。

自ら命を捧げるために、ゆっくりと歩いていく。

……ただ。

このミナの行動は、アルトリウスも予測していなかった。

彼は、ミナが使えないものと判断して、見切りをつけていた。

だから、まったく彼女に注意を払っていない。

巻き込むことを気にすることなく、全力で戦っていた。

「……あ……」

オフィーリアと交戦する赤の天使。

その攻撃の余波がミナを飲み込もうとして……

「危ないっ!!!」

「きゃっ」

誰かに抱えられて、その場を退避する。

直後、赤の天使が放つ炎が、さきほどまでミナがいた場所を薙ぎ払った。

彼女を助けたのは……

「いったい、なにをしているのですかっ!?」

エリスだった。

抱きかかえたミナを地面におろして、それから叱責した。

子供のように、ミナはビクリと体を震わせる。

「今、ここは戦場になっているのですよ!? それなのに、あんな、ぼーっとして……死にたいのですか!?」

「で、ですが……わ、私は……もう、それくらいしか価値が……」

「あなたは……」

迷子になった子供のように、ミナは声を震わせる。

そんな彼女を見て、エリスはミナの考えを察したらしい。

驚いたように目を大きくして……

それから、キッと睨みつける。

「自分を犠牲にすることで、今までの罪を償おうと?」

「わ、わかりません……ですが、私は、もう他になにもできません……価値がありません。だから、せめて……」

「甘えるなっ!!!」

「っ!?」

エリスの一際強い声が、ミナの心を強く打つ。