作品タイトル不明
662話 ラインハルトの力
オフィーリアの白い羽が消えて、代わりに光で編み込まれた蝶の羽が出現した。
髪が伸びて、キラキラと星のように輝く。
これは……
「覚醒、か?」
「覚醒を知っているか。ビーストテイマーとして、それなりに成長しているみたいだな」
「ラインハルト、あんたは……」
俺以上に、色々なものを知っているように見えた。
ただ、今は問答をしている場合じゃない。
「打ち砕け、輝きの円環」
オフィーリアは光の槍を生成した。
それは彼女の身長を軽く超えるほどに大きく、もはや、槍というよりは神の鉄槌だ。
光の槍を投擲。
その巨体に似合わぬ速度で飛翔して、赤の天使に突き刺さる。
槍から光の粒子があふれ、宙を漂い……
そして収束。
全てが赤の天使に飲み込まれるようにして、最後に爆散。
世界を塗り替えるほどの光が走り、衝撃が来る。
ただ……
「対象の生存を確認」
ダメージは受けていたものの、赤の天使は健在だった。
今の攻撃は、間違いなく超級魔法並の威力があったはずなのに……
とんでもない耐久力だ。
ただ、オフィーリアは慌てていない。
むしろ、そう来たか、という感じで冷静に相手のことを分析しているようだ。
「マスター、援護をお願いします」
「俺は俺で忙しい。勝手にやれ」
見ると、ラインハルトは漆黒の短剣を両手に、地の天使と戦っていた。
どのような力を使っているのか、地の天使は周囲の瓦礫を集めて、石の巨塊を作り出した。
ティナがするように、腕を振ることで石の巨塊を薙ぎ払い、ラインハルトを押しつぶそうとする。
直撃すればタダでは済まない。
一撃で戦闘不能に陥るだろうし、下手をしたら即死だ。
そんなとんでもない攻撃を、ラインハルトは宙を自由自在に跳ぶことで避けていた。
足場なんてものはない。
シグレさんがやっていたように、空気を蹴り、空を駆けている。
「起動」
ラインハルトが小さくつぶやくと、漆黒の短剣が闇を放つ。
ゆらりゆらりと、炎のように闇がまとわりついていた。
ただ、禍々しいという感じはしない。
例えるなら夜の空のよう。
そっと包み込むような、優しさを感じる。
「三式・ダークネスバイト」
夜空を流星が駆けるかのように、ラインハルトが動いた。
両手の短剣を構えて地の天使に迫り……
そして、交差する瞬間、二つの斬撃を叩き込む。
音もなく。
衝撃もなく。
熱したナイフでバターを切るかのように、地の天使の左腕が飛ばされる。
オフィーリアの攻撃に耐えた天使に、一撃で腕を切り飛ばしてしまうなんて……
なんていう威力だろう。
ラインハルトが使っている力の正体はわからないが、相当なレベルに達していることは間違いない。
……俺よりも上かもしれないな。
「俺も負けてられないな」
クサナギをファーストフォームに。
俺はラインハルトに負けているのかもしれない。
でも、気にすることはない。
だって、
「レイン、いくわよ!」
「いっくよー!」
「ああ。タニア、カナデ、いこう!」
頼りになる仲間がいる。
だから、なにも問題はない。