作品タイトル不明
661話 アルトリウスの力
「しぶとい連中だ!」
アルトリウスの猛攻が続くのだけど、俺達は、なんとかしのいでいた。
小さな傷は無数に増えていくけれど、致命傷は一つもない。
ただ、これは時間の問題だ。
巨大な嵐を相手にしているような感覚で、長時間、耐えられるとは思えない。
今のうちに勝負を決めたいところだけど……
「なら、本気で行くぞ!」
「なっ」
まだ本気じゃなかった!?
ラインハルトも予想外だったらしく、険しい表情に。
「我が天使よ、顕現せよ! ミカエル!!!」
アルトリウスが杖を天に向けると、空が輝いた。
光のカーテンが舞い降りて、そこから女性が現れた。
燃え盛る炎を体現したかのような、赤い剣と鎧。
そして、純白の翼。
天族?
いや……違う。
「……天使?」
「偽物だ」
俺のつぶやきに、ラインハルトが即座に反応した。
「神の使いの模造品だな。本物には遠く及ばないだろうが……それでも、厄介なことに変わりない。気をつけろ」
「了解」
アルトリウスは召喚術師ということか。
ラインハルトは模造品と言っているが、それでも天使を召喚するなんて、とんでもない力量の持ち主だ。
「ァアアアアアァッッッ!!!」
金属がこすれるような甲高い声を響かせつつ、火の天使が突撃してきた。
速度は大したことはない。
しかし、その手に持つ赤い剣が厄介だ。
紅蓮の業火が剣から吹き出した。
それは竜巻のように渦を巻いて、刀身を長くする。
そのままの勢いで巨大な斬撃を放つ。
「ディバインシールド!」
迎撃か、回避か。
迷っている間に、エリスが援護の魔法を唱えてくれた。
光の盾が展開されて、炎を受け止める。
しかし、それは一瞬だけ。
すぐに打ち砕かれて、業火が目の前に迫る。
「くっ」
横に跳んで……
同時に自身にかかる重力を操作して、急加速。
紅蓮の剣を回避する。
ガァッ!
さっきまで俺が立っていた場所に炎が舞い降りた。
ありえないことに石畳が溶けて、斬撃の跡がくっきりと刻まれる。
なんて威力だ。
直撃したら、ほぼほぼ即死。
かすっただけでも重傷は免れないだろう。
ここは距離をとって……
「ラァアアアアアッ!!!」
再び火の天使が吠えた。
翼を広げると、白が赤に変化する。
そして、羽を飛ばすかのように、炎の矢が無数に打ち出された。
さきほどのアルトリウスの攻撃に似ている。
星の数ほどに打ち出された炎の矢は、この場を制圧するかのように荒れ狂い、そして、爆発する。
「くっ!」
みんな、どうにか防いで、あるいは避けているみたいだけど……
ここまでの力を持つなんて。
アルトリウスも攻撃に参加したら危ないかもしれない。
すぐに、どちらかを倒さないといけない。
でも……
事態はさらに最悪の方向へ転がっていく。
「ウリエル、ラファエル、ガブリエル……顕現せよ!!!」
「なっ!?」
さらに三体の天使を召喚した!?
追加で召喚された天使は、水、風、土の属性を持っているのだろう。
それぞれ攻撃を繰り出してきて、嵐の中にいるかのように暴力が荒れ狂う。
「にゃー!? 私の尻尾が焦げたー!?」
「猫なんだから、それくらい我慢しなさい!」
「猫関係なくない!?」
カナデとタニアはなんとか耐えているが、長時間は難しいだろう。
「くううう、これほどの力を持っているなんて……!」
「アルトリウス、あなたという人は!」
シフォンとエリスも厳しい状況に置かれていた。
「……」
ミナは放心状態で、なにもできない。
そして……
「マスター、現状のままでは危険と提言いたします」
「確かに……な」
ラインハルトがちらりとこちらを見た。
「こいつの前でアレを使うのは避けたかったが……そうも言ってられないか。オフィーリア」
「はい」
「許す。全力でいけ」
「かしこまりました」
こんな状況なのに、オフィーリアは優雅に一礼して頷いてみせた。
そして、その体が輝きを放つ。