軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

659話 食らう者

「おおおおおぉぉぉオオオオオっっっッ!!!」

獣のような咆哮が響いた。

アルトリウスがまとっていた光と闇が消えて……

代わりに、赤黒いオーラをまとうように。

その瞳は赤く光る。

今までに感じたことのないような、強烈な殺意。

「なんだ、こいつは……!?」

当たり前だけど、もはやアルトリウスは人間じゃない。

かといって、魔族というわけでもなさそうだ。

もちろん、最強種でもない。

いったい、なんなんだ!?

「……そこまで堕ちていたか」

ラインハルトはなにか知っている様子だ。

尋ねようとするが、

「さあ、神の裁きを受けるがいい!」

それよりも先にアルトリウスが動いた。

右手を大きく振りかぶり、勢いよく薙ぎ払う。

その軌跡に従い極大の竜巻が生まれ、全てを飲み込んでいく。

「こんな場所で!」

ちらりと後ろを見るが、ミナはまだ放心状態だった。

無理もない。

親と言っても差し支えのない教会に、てひどい裏切りを受けたのだから。

「カナデ、ミナを頼む」

「うん!」

「タニアは一緒に……!」

「オッケー!」

タニアはミナに同情する素振りはない。

自業自得と思っている様子だった。

それでも、アルトリウスのやり方には腹が立っていたらしく……

「これでも……食らいなさいっ!!!」

必殺のドラゴンブレス。

極大の光が竜巻を打ち消して、さらにアルトリウスを飲み込む。

って、タニアも街中で大技を使うなんて……ああもう!

この辺りの避難は済んでいるみたいだから、人的被害は気にしなくていいけど……

建物に関する被害はひどいことになりそうだ。

でも……

ここでアルトリウスを止めなければ、建物だけじゃすまなくなる。

たくさんの人が傷つくだろう。

最悪、街が壊滅するかもしれない。

そんなことは許せない。

「召喚!」

イリスと契約した能力で無数の短剣を召喚した。

それらを次々に投擲して、アルトリウスの動きを封じる。

「来たれ、嘆きの氷弾」

「ドラグーンハウリング・マルチショット」

オフィーリアとラインハルトも攻撃に参加する。

オフィーリアの放つ氷弾はイリスのものと似ているが、しかし、数は圧倒的だ。

視界を埋め尽くすほどの氷の弾丸が射出されて、アルトリウスに叩き込まれる。

ラインハルトは俺と似た能力を持っているのか、一つの魔法を同時に複数回使ってみせた。

竜の幻影を模した衝撃波が十数回、連続で叩きつけられる。

「雷鳴剣っ!!!」

そして、トドメとばかりにシフォンの魔法剣。

これだけの攻撃を叩き込めば、魔族だとしても倒せるはずなのだけど……

「愚か者め!」

粉塵が晴れた後、無傷のアルトリウスが。

反撃として、手にした杖から無数の光弾を放つ。

一つ一つは指先くらいの大きさなのだけど、数がおかしい。

夜空に輝く星の数ほどが飛んできて、しかも、着弾と同時に大爆発を引き起こす。

「こ、のぉっ……!!!」

再びの召喚で短剣をばらまいて、光弾とぶつけて……

物質創造で石の壁を作り、それで爆発を無効化して……

重力操作で、破片が飛び散り、凶器と化すのを防いだ。

「みんな、大丈夫!?」

「あいつ、なんて化け物なのよ……!?」

シフォンとタニアが焦りを表に出してしまう。

こちらの士気をくじいて、相手の戦意を高めるようなことなので、そんなことはしない方がいいのだけど……

どうしても感情が表に出てしまうほど、今のアルトリウスの攻撃はすさまじかった。

できれば、渾身の一撃と思いたいが……

そんなものを初手で放つわけがないか。

「ラインハルト、アルトリウスの力はなんなんだ?」

警戒をしつつ、隣のラインハルトにそう問いかけた。

アルトリウスの力の源を知ることで、突破口が開けるかもしれないと思ったからだ。

「おそらく、キメラだろうな」

「キメラ?」

異なる生物の特徴を複数持つ、魔物のことか?

「他者を食らい、その力を己のものとする。外法に手を染めて、人間を捨てたのだろう」

「他者を食べるなんて、そんな……」

「人間だけじゃないだろうな。あの力、魔族に……最強種も手にかけているだろう」

「っ……!?」

アルトリウスはそんなふざけたことをしてきたのか?

怒りを覚えるよりも先に、そこまでして力を求める姿勢を恐ろしいと思った。

どうして、人であることを捨ててまで力を求める?

自分の欲望のため?

それとも、教会のため?

アルトリウス・グレイゴムという人間を心底理解できない。

「落ち着け」

ふと、ラインハルトが俺の肩を叩いた。

やや強めだけど、でも、気合を入れるような感じで痛くはない。

「ヤツがなんであれ関係ない。あれは、倒すべき敵だ。そう考えればいい」

「……」

「どうした?」

「い、いや……」

なんだか、以前にもこんなやり取りがあったような……気のせいか?

ただ、ラインハルトのおかげで動揺を鎮めることができた。

再び闘志が湧き上がり、アルトリウスを止めなければという使命感が出てくる。

「いくぞ」

「ああ!」

ラインハルトと一緒に駆ける。