軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

658話 砕ける心

「……」

アルトリウスの言葉が刃のようにミナの心に突き刺さる。

それに耐えられなかった様子で、ミナは地面に膝をついてしまう。

その表情は虚ろで、どこを見ているのかわからない。

ミナなりの正義を信じて戦い続けて。

教会のために戦い続けてきたというのに……

待っていたのは、てひどい裏切り。

いや。

裏切りなんて生易しいものじゃない。

心を殺す陵辱だ。

たぶん、アルトリウスはミナの心をわざと折っているのだろう。

そうすることで、簡単に贄にしようとしているのだろう。

今まで、好き勝手にミナを利用しておいて。

最後の最後まで、やはり己のために利用しようとして。

「……アルトリウスっ!!!」

どうしても我慢することができず、俺は、アルトリウスに向けて駆け出した。

その刃をヤツに向ける。

「神に逆らう愚か者め」

「貴様が勝手に神を語るな!」

「死ね」

アルトリウスが勝利を確信したような笑みを浮かべた。

瞬間、アルトリウスの影が生き物のようにこちらへ伸びてきた。

風のように速く、そして鋭い。

そして、影が膨れ上がり、刃となって襲いかかってくる。

アルトリウスがこんな能力を持っているなんて、まったく予想していなかった。

完全な不意打ちだ。

俺か、もしくは他の誰かが飛び出してくることを予想して、待ち構えていたのだろう。

でも。

「甘い!」

「なっ!?」

なにかしらの罠があることは想定していた。

心構えができていれば、即座に対処することができる。

「物質創造!」

石の盾を作り出して、影の刃を受け止めた。

こういった突発的な事態を想定して、あらかじめ能力を組み立てておいたので、即座の対処が可能だ。

「ファイアーボール・マルチショット!」

複数の火球を放ち、

「セカンドフォーム!」

さらにクサナギを十二の刃に分離させて、突撃。

火球と刃、二つの攻撃を叩き込む。

「このっ、痴れ者がぁ!!!」

アルトリウスの周囲の空間が蜃気楼のように揺らぐ。

それは不可視の盾なのだろう。

火球と刃が明後日の方向に逸らされてしまう。

だけど、

「メガボルト!」

アルトリウスの行いに激怒しているのは、俺だけじゃない。

彼女も同じだ。

「雷鳴剣っ!!!」

「ぐっ!?」

あえてワンテンポ遅らせて飛び込んできたシフォンが、魔法剣を叩き込む。

今度は避けるヒマも防ぐ術もない。

アルトリウスの体に、雷撃を帯びた斬撃が叩き込まれた。

たまらずにアルトリウスは膝をついて……

「シフォン!」

「えっ」

背筋がゾクッとするような悪寒。

咄嗟にシフォンを抱きかかえて、後方へ跳んだ。

そんな俺達を追いかけるかのように、光が走る。

はや……!?

「敵の罠を想定して動いていたのなら、反撃も想定しておけ」

ラインハルトが前に出て、漆黒の短剣を抜いた。

それを水平に薙いで、追撃してくる光を打ち払う。

「た、助かったよ……ありがとう」

「礼なら後にしろ。まだ戦いは続いている」

「そうだな。それにしても……」

視線を戻すと、アルトリウスは再び立ち上がっていた。

その体は、神々しく光り……

それでいて、おぞましさを感じる黒い影がまとわりついている。

なんていう光景だろう。

相反するものを無理矢理一つにまとめたかのような、とても歪なものだ。

光は心当たりがないけれど、影を使った攻撃は見たことがある。

アルトリウスはもしかして……

「あの力、魔族のものだな」

ラインハルトも同じことを考えていたらしく、そう言う。

「わかるのか?」

「人が他種族を食らい、その力を己のものとする。昔はよくあったことだ」

「それは……」

どういう意味だ?

なにを知っている?

思わずそう問いかけたくなるが、我慢する。

ラインハルトの言葉は気になるものの、今は、アルトリウスをなんとかしなければいけない。

「この私を舐めるなよ……私は神の代弁者。それにふさわしい力を持っている。だからこそ、今ここで、お前達を殺すことができるのだ!!!」

殺気という名の嵐が吹き荒れた。