軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

654話 それぞれの戦い

「クゥ!」

「コン!」

クウとコウが並び、窓に向かって吠える。

毛を逆立てて必死に威嚇していた。

その窓を突き破り、巨体が家の中に侵入する。

アーマーオーガだ。

Bランクに指定されている魔物で、高い攻撃力と防御力を持つ。

鎧のような皮膚は並の剣ならかすり傷一つつけることはできない。

倒すとしたら、複数の冒険者が一斉にかからないといけないのだけど……

「我が家は土足厳禁やでっ!!!」

「ガァッ!?」

ティナの操るフライパンがアーマーオーガの頭部を直撃した。

ただのフライパンと侮ることなかれ。

ティナの魔力によって強化されたフライパンは、魔剣以上の硬度を誇る。

カァーーーン!!!

とても良い音が響いて、アーマーオーガが吹き飛ばされた。

フライパンの一撃で頭部が陥没していて……

ほどなくして、その体が魔石に変わる。

「ふふんっ、みんなの留守はウチが守るでー!」

「クウ!」

「コン!」

仁王立ちをするティナの左右に、クウとコウが並ぶ。

そして、自分達もがんばる、という感じで鳴いた。

「さあ、かかってこいー!」

――――――――――

「……」

ふと、サクラが足を止めて明後日の方向を見た。

「ど、どうしたの、サクラちゃん……?」

「フィーニア、なに?」

突然、足を止めた二人を見て、リファが小首を傾げた。

零式監獄は解除されていない。

被害が増える一方で、時間の経過と共に状況は悪化していた。

休んでいるヒマはない。

できる限りの人を助けて、魔物と魔族を駆逐しなければいけない。

いけないのだけど……

「……クゥーン……」

サクラは足を止めて、とても悲しそうに鳴いた。

フィーニアは、長い間サクラと一緒にいた。

サクラの色々な表情を見てきた。

でも、こんなにも悲しそうに寂しそうに鳴くところは初めて見た。

「これは……」

すごく嫌な予感がする。

寒気を覚えるような嫌な予感に、フィーニアは小さく体を震わせるのだった。

――――――――――

一方……

ソラ、ルナ、ニーナ、イリスの四人は、とある人物と対峙していた。

その人物というのは……

「あなたが、ラインハルトですか?」

影を体現したかのような男……ラインハルト。

戦場と化した街を駆ける中で彼と出会う。

ソラ達はいつでも動けるように構えつつ、厳しい目をして問いかける。

ただ、ラインハルトに戦闘の意思はないらしく、早々に両手を挙げてみせた。

「焦るな。俺に戦う意思はない」

「本当なのか? 前は、いきなりレインに襲いかかったと聞いているぞ」

「あや、しい」

ソラ達は純粋で……

だからこそ、一度、敵対行動を見せたラインハルトを簡単に信じることはできない。

しかし、ここに一人、ひねくれ者がいた。

「敵対しているのではないというのなら、証拠を見せていただけませんか?」

イリスが一歩前に出て、そう問いかけた。

「証拠か……これならどうだ?」

ラインハルトは腰に下げている短剣に手を伸ばした。

「「「っ!?」」」

ソラ達は警戒するが、イリスはなにもしない。

余裕のある態度を保ち、様子を見る。

そして……ラインハルトは短剣を投げた。

その目標はソラ達ではなくて、イリスでもなくて……

「がぁっ!?」

不意を突こうと身を潜めていた魔族だ。

頭部に短剣が突き刺さり、魔族は悲鳴をあげた。

「メガボルト」

よく見ると、ラインハルトと短剣がワイヤーで繋がっていた。

そこを電撃が伝い、魔族に到達する。

バチィッ!!!

短剣を介して電撃が体内に流れ込み、魔族は抵抗をすることもできず、そのまま絶命して灰となる。

「これで、俺が敵ではないと証明できたと思うが?」

「あら。あえて仲間を犠牲にして、わたくし達の信頼を得る。そして、油断したところをぶすり、という策という可能性もあるのでは?」

「そういった可能性を考えたらキリがないだろう」

「ふふ、そうですわね」

イリスは小さく笑い、ソラ達を見る。

「この方は敵ではありませんわ。今回の事件とは関係はなく、たまたま巻き込まれただけなのでしょう」

「ふむ……イリスがそう言うのなら信じたいのだ」

「ただ、なにをしているのか気になりますね」

「この状況は俺にとっても都合が悪い。やりすぎは見過ごせないからな」

「?」

「ひとまず、共闘するということでどうだ? お前達の目的は、零式監獄の解除なのだろう?」

「そうですね。ただ、ソラ達は街の人の救助と魔物と魔族の撃退。それがメインとなりますが、問題はありませんか?」

「構わない。本命は俺の使い魔があたっているし……」

ラインハルトは、ちらりとイリスを見た。

「……ちょっとした縁もある。お前達に協力するのはやぶさかではない」

どこか神妙な顔をして、そう言うのだった。