軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

649話 ラインハルトの狙い

「……ちっ」

ホライズンの隠れ家に潜むラインハルトは、街を包む光を見て舌打ちをした。

体が重く、倦怠感に襲われる。

以前にも、何度か体験したことがある。

零式監獄が発動したのだろう。

魔族か。

あるいは他の誰かか。

零式監獄の発動を計画していたことを察知して、それを止めるために動いていたが……

「遅かったか」

ただ、ラインハルトは人命を考えていたわけではない。

彼にとってホライズンはどこにでもある街の一つで、思い入れなんてない。

そもそも……

人間に対して思い入れがない。

零式監獄の発動を阻止して人々を助ける、なんて思惑は欠片もない。

単純に、零式監獄が発動したら活動の邪魔になるため、阻止しようとしていただけだ。

ついでに……

零式監獄なんてものを使う者に問いただしたいことがある。

禁呪の中の禁呪。

そんなものをどこで覚えたのか?

どこで手に入れたのか?

人間はともかく……

世界を破壊するようなものを気軽に使う輩は放っておけない。

「あー……なんか体が重い」

「なにやら面倒なことになっているみたいね」

「いかがいたしましょう、マスター?」

ミツキは、ぐでーっとソファーに寝て。

アリエイルは余裕の態度を崩さず。

オフィーリアは、いつもと変わらず無表情でラインハルトに尋ねる。

「そうだな……」

ラインハルトの目的は、ミナと話をすること。

今度のとある活動をする上で、どうしても元勇者パーティーの情報が必要になったのだ。

ただ、それも今は難しい。

厄介な事態に巻き込まれてしまった今、ここで撤退するのもアリだ。

とはいえ……

「零式監獄なんてものを気軽に発動させるバカを放っておいては、今後、支障が出てくるかもしれない……か」

少し考えて結論を出す。

「オフィーリア、ついてこい。術者を探し出すぞ」

「探し出した後は、どうされるのでしょう?」

「殺す」

「了解いたしました」

物騒な答えを提示されるものの、オフィーリアは困惑することはない。

迷うこともない。

マスターであるラインハルトが決めたのなら、それに異論を唱えることはしない。

粛々と受け止めて、実行するだけだ。

「ねーねー、私達は?」

「置いてけぼり?」

ミツキとアリエイルが不満そうに言う。

その奥にいるモナは……寝ていた。

惰眠をむさぼることをなによりも優先しているらしい。

「二人はそこのバカを連れて、アジトを引き払え。情報を残すな」

「めんどいなー」

「そう言わないの。華麗に撤退することも私達の仕事よ」

「はーい」

「で……バカはさっさと起きなさいな!」

「ふぎゃん!?」

アリエイルのげんこつを受けて、モナは悲鳴をあげつつ起きるのだった。

――――――――――

「これは、いったい……」

家がある丘を降りて、街の中心に向かう。

異様な光景が広がっていた。

光に囲まれているせいか、空が赤く染まっている。

その中で、無数の魔物が我が者顔で闊歩していて……

それだけではなくて、いくらか魔族らしき姿も確認できた。

すでに冒険者と騎士団が動いていて、街の人達の防衛、避難に力を注いでいる。

しかし、あまりに突然の出来事のため、間に合っていないというのが実情だ。

あちらこちらから悲鳴が聞こえてきて、街に炎が上がる。

「ミナ! これはヴェルグとかいう魔族の仕業なのか!?」

「わ、わかりません……このようなこと、私はなにも……」

狼狽するミナ。

演技ではなくて本心のように見えた。

「ノキアさん、あの魔族を出してくれませんか? この状況について、聞きたいことが……」

「それが……すみません。どうやったのか、いつの間にか逃げ出していたらしく……」

「えっ」

「私の失態です。本当にすみません……」

「いえ、そんなに気にしないでください」

ノキアさんがつまらないミスをするとは思えない。

封印は完璧だったのだろうけど……

ヴェルグは、それを上回る方法で逃げ出したのだろう。

……あるいは、助け出された?

ふと、そんな考えが思い浮かぶ。

「レイン!」

カナデの声で我に返る。

そうだ、今は考え事をしている場合じゃない。

原因を突き止めるのは後だ。

「俺とカナデとタニアは、魔物や魔族の殲滅を! 他のみんなは、街の人達を守ってくれ!」

「「「了解!」」」

「シフォン達は……」

「私達もレイン君に協力するよ。こんな事態を引き起こす相手だとしたら、三人だけじゃ戦力が足りないかも」

「そうだな……頼むよ」

「うん、任せておいて」

シフォンはかっこよく笑ってみせる。

「私も協力しましょう。人々を守るのは、教会の役目でもありますから」

「ありがとう、エリス。ミナは……」

「……私も、協力させてもらえないでしょうか?」