軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

647話 魔法陣

「……以上が、私の知る全てとなります」

一時間ほどかけて、ミナに全てを話してもらった。

その内容は、なかなかに壮絶なもので……

「そうか……アッガスは、そんなことを」

ミナから聞いた話で一番衝撃的だったのは、アッガスがアリオスに殺された、という内容の詳細だった。

アリオス達を売ろうとして……

そのことを看破したアリオスによって、逆に殺されてしまう。

アッガスのことは好きではないし、むしろ、悪印象を抱いていた。

それでも……

仲間に殺されてしまうという最期に、俺は、なんともいえない虚しさを感じてしまうのだった。

「それにしても……」

「にゃー、どうしたの、レイン? 難しい顔をして」

「あんたね……今の話を聞いて難しい顔をしない方が難しいでしょ」

「タニアよ、言うでない。カナデの頭では、そこまで考えられぬのだ」

「唐突なディスり!? そうじゃなくて! レインってば、なにか別のことを考えているみたいだったから」

カナデはよく俺のことを見ているな。

彼女の言う通りだ。

アッガスのこともあるけど、それ以上に引っかかっていることがある。

「モニカと……そして、一連の事件の背後にいる魔族……リースの目的は、いったいなんだろう? って不思議に思ったんだ」

ミナに対しては、人間と魔族の和平を考えていると言っていたが、まず間違いなく、それは嘘だろう。

それにしてはやることなすこと悪辣で、和平を考えている者の行動ではない。

それに、穏健派のジルオールと接触した時、リースの話がまるで出てきていない。

単なる偶然という可能性もあるが……

それにしては、あっさりとしすぎている。

リースは和平なんて考えていない。

穏健派ではなくて、本当の目的は別にあると考えるのが自然だろう。

「……っていうのが俺の考えなんだけど、ただその場合、本当の目的はなんだろう? って」

「本当の目的ですか……ソラ達が簡単にたどり着けないような、複雑かつ厄介なことを考えていそうですね」

「せ、世界征服……?」

「フィーニア。それ、典型的すぎ」

「はうっ」

「私も、リファさんの意見に賛成かな? 典型的というか……魔族って、そういう俗物的な欲はないと思うんだよね」

シフォンが補足するように言う。

「もちろん、全部の魔族がそうとは言い切れないけど……」

「私もシフォンさんに賛成です。なにかしら別の目的があると考えた方がいいでしょう」

エリスも賛成……か。

俺も二人と同じ考えだ。

リースと、そしてモニカ。

あの二人は、なにか別の思惑を抱えているような気がする。

そしてそれは、とても厄介なもので、そして……破滅的なもののような気がしてならない。

今のうちにどうにかしておきたい。

ただ、ミナもイリスも隠れ家は知らないらしく、こちらから手を出すことは難しい。

「どうしたものかな」

みんなで考えるのだけど、打開策は見つからない。

と、その時。

……ゴォオオオッ!!!

「にゃ、にゃに!?」

強烈な爆発音。

続けて、地震が起きたかのように揺れがやってきた。

「なんだ!?」

慌てて外に出て、音がした方……街を見る。

「なんだ……これは……?」

巨大な光の柱が立ち上がり、街を丸ごと飲み込んでいた。

よく見ると小さな光柱がいくつも天に向って伸びている。

それらが円を成して、まるで檻のように街を囲んでいる。

「これは……魔法陣、なのか? でも、こんな巨大なものは……ソラ! ルナ! これについて見覚えは!?」

魔法と言えばこの二人。

慌てて尋ねてみるものの、ソラとルナは怪訝そうに眉を潜めていた。

「なんなのだ、この術式は……? 初めて見るものではないが、しかし、でたらめな構成をしているせいか、わけがわからないのだ」

「人為的なものであることは間違いありませんが、ただ、どのような効果を持つのか詳細は……」

「零式監獄……? なぜ、このようなものが……?」

「エリス?」

エリスは心当たりがあるらしく、愕然とした様子で街を……巨大な魔法陣を見ていた。

「エリスはなにか知っているのか?」

「……はい」

小さく頷くエリスは、今まで見たことのないような深刻な顔をしていた。

「私の勘違いであってほしいのですが……あれは、零式監獄と呼ばれている、教会が用いる結界です。一般的に知られておらず、私も直接見るのは初めてなので、断定はできないのですが……」

「教会が……?」

「対象を結界内に閉じ込めて、体力と魔力を奪い取り、やがて衰弱死させるという悪辣な術です。魔族が使うものをアレンジしているもので、故に禁忌指定されているのですが、なぜ……?」

冷静沈着なエリスがひどく慌てていた。

それだけの異常事態なのだろう。

「衰弱死、って……それ、かなりまずいんじゃない?」

「レイン!」

「ああ、わかっている!」

事態の解明は後だ。

今は結界を解除しないといけない。

「エリス、結界を解除する方法は……っ!?」

ドォンッ! と、街の方から再び爆音が響いてきた。

見ると煙が上がっている。

風に乗って、わずかにだけど悲鳴も聞こえてきた。

「やばいのだ、レイン! あれは魔物なのだ!」

「魔物だけではありません。この気配……魔族もいるようです」

ルナとソラの緊張した声。

事態は急加速して、そして、最悪の方向に転がり落ちていく。