作品タイトル不明
646話 信じるということ
「俺は信じるよ」
みんなの前で、俺はそう言った。
え!? 本当に!?
というような感じで、いくらかの人に驚かれてしまう。
その反応は当たり前だよな。
今までミナがやらかしてきたことを考えると、信じる要素はないし……
そもそも、俺とミナの関係を考えると、彼女を受け入れることはおかしなことだ。
普通に考えて、拒絶して、突き放すだろう。
「でも……」
拒絶してどうなるのか?
突き放してどうなるのか?
そこで終わり。
縁は断たれ、先に繋がるものはない。
それは、少し寂しいような気がした。
家族を奪われたとか、絶対に許せない理由があるのならともかく……
俺はパーティーを追放されただけだ。
それくらいなら、そこまで気にすることじゃない。
「ただ、これはあくまでも俺の考えで、みんなの意見を無視するつもりはないんだ。みんなはどう思う?」
「どうって言われても……」
「……ねえ?」
カナデとタニアが顔を見合わせて、そしてにっこりと笑う。
他のみんなも似たような感じだ。
「ソラ達は、レインにどこまでもついていきます」
「そういうことなのだ!」
「オンッ!」
みんな、賛成してくれるみたいだ。
本当、ありがたい。
「シフォン達は?」
「うん、私達も問題ないよ。討伐を命令されているけど、和解できるのなら、それに越したことはないからね。大丈夫。なにか言われても、勇者権限で納得させちゃうから」
パチリとウインクをして、シフォンがいたずらっぽく言う。
「エリスは……どうだ?」
「……」
彼女はミナを断罪する権利がある。資格がある。
もしもエリスがミナを拒むのならば、それに従うつもりだ。
最終決定権はエリスにあると思う。
「私も問題ありません」
意外というか……
わりとあっさりと、エリスはミナを受け入れるのだった。
「……いいのか?」
「はい」
短く断じるエリスは、以前とは違う顔をしているように見えた。
以前は、張り詰めた糸のような顔で、切れてしまう寸前。
でも今は、どこか余裕が戻っているような気がする。
なにがあったのか?
それはわからないが、いつか、本人の口から話してくれるとうれしい。
「よし、決まりだ」
エリスを含めて、みんなが納得してくれたのなら問題はない。
俺達はミナを受け入れる。
「いつまでの協力関係になるかわからないけど、これからよろしくな」
「あ……」
手を差し出すと、ミナは目を大きくして驚いた。
「本当に……私を信じてくれるのですか?」
「ああ。そうすると決めた」
「……そう、なのですね。レインさん、あなたという人は、そんな……それなのに私は……いえ、私達は……」
なにか思うところがあるらしく、ミナは言葉に詰まる。
軽くうつむいてしまう。
でも、それは少しの間だけ。
ミナは、ほどなくして顔を上げた。
その表情は強く凛々しく、澄んでいた。
不覚というべきか……
少し綺麗と思うのだった。
「にゃほんっ、にゃほんっ」
二人きりの世界を作るなと、カナデがわざとらしく咳払いをする。
タニア、ソラ、ルナ、イリス、ニーナにも睨まれてしまう。
失敗した。
彼女達の気持ちを知っているのだから、こういうことは……うん?
なんでニーナにまで睨まれるんだ?
「とりあえず」
話をまとめるように、シフォンが言う。
「ミナさんのことを教えてくれないかな?」
「私の、ですか?」
「ミナさんがどんな話を聞いて、どんなことをしてきたのか。あと、一緒にいたヴェルグっていう魔族のこと。それと、少し前に街を襲撃した魔族のことも」
「街を襲撃……?」
初めて聞いたというように、ミナは驚いてみせた。
とても演技とは思えない。
ということは、やはり魔族はミナに黙って、勝手に動いていたのだろう。
ミナが言う、人間と魔族の和平は本気で考えているのだろうが……
魔族は……リースとモニカの狙いは別のところにあるのだろう。
ミナはいいように利用されているだけ。
そう考えるのが妥当だ。
「では……」
そして……
俺達は、元勇者パーティーのミナの軌跡を辿る話を聞いた。