作品タイトル不明
622話 ひとまずの同盟を
「ミナとコンタクトを……?」
エリスの目的を聞いて、ついつい眉を潜めてしまう。
シフォンは、ミナの捕縛、もしくは討伐と言った。
その一方で、教会に所属するエリスは、ミナとコンタクトを取りたいと言う。
この差はなんなのか?
ただの言葉の違いなのか、それとも、別の思惑が隠されているのか。
「ミナさんとコンタクトを取り、どうするつもりなのかな?」
シフォンも同じ疑問を抱いたらしく、やや厳しい視線をエリスに向けた。
ストレートに問いかけないで、疑いを持っているぞ? ということはひとまず隠した方がいいと思うのだけど……
でも、どんな時もまっすぐなところは、彼女らしいと言えて、好感が持てた。
「まずは、事情を聞きたいと思います。なぜ、あのようなことをしたのか? 今、どこにいるのか? 元勇者はどうしているか? 話を聞かなければいけないことはたくさんあります」
「話を聞いて、それからどうするの?」
「やむを得ない事情があったのならば、彼女の力になりたいと思います」
「そうでなかったら?」
「断罪を」
二人の視線が真正面から激突した。
その迫力はかなりのもので、俺達は口を挟むことができない。
ややあって、シフォンが柔らかい表情に。
「そっか……うん、信じるよ」
「ありがとうございます」
「レインくん、みんな。私は、エリスさんを信じて、一緒に行動してもいいと思うんだけど、どうかな?」
「私は問題ないと思う。同じ騎士として、彼女は信用できる気がした。ひとまず、今の言葉にウソはないと思う」
「うーん……私もステラに賛成かな? あまり嫌な感じはしないよ」
ステラとカナデは賛成。
ただ、サクラは……
「グルルルゥ……!」
低い唸り声を上げて、エリスを威嚇していた。
「サクラ、どうしたんだ?」
「ウゥ……!」
「サクラは、エリスのことが信用できないか?」
「ウー……」
尋ねてみると、サクラはなんともいえない反応に。
引っかかるところがあるみたいだけど、でも、具体的な指摘はできない様子だ。
サクラが警戒しているのなら、それを勘違いと決めつけることはできない。
エリスが隠しているであろう、なにかを感じ取っているのだろう。
ただ、それならそれで逆に放置することはできない。
一緒に行動して、エリスを目の届く範囲に置いた方がいいだろう。
「俺も賛成だ。一緒にミナを探そう」
「ありがとうございます」
疑うような真似をしたにもかかわらず、エリスは怒ることなく、逆に礼を口にした。
人は良いのかもしれない。
まあ、演じているだけという可能性もあるが。
「それじゃあ、私達は今から、パーティーということで。同じ目的を追いかける者同士として、一緒にがんばって、仲良くなっていこうね」
「ああ」
「うむ、そうだな」
「がんばるね」
「はい」
「オンッ!」
ひとまず、みんなで手を重ねて気合を入れた。
サクラも思うところはあるらしいけど、唸るのはやめて、歩み寄ってくれている。
うまくいってほしいところだけど……
さて、どうなるか?
――――――――――
「はぁっ!」
エリスの剣が閃いて、魔物が両断された。
断末魔の悲鳴をあげることもできず倒れて、そのまま魔石に変わる。
さすが、聖騎士というべきか。
その剣はとても鋭く、シフォンに匹敵するほどの技だ。
「レインさん、残りがそちらへいきました!」
「了解だ!」
エリスの合図を受けて、カムイを抜いた。
やや通路が狭いので、クサナギは不向きなのだ。
「にゃんっ!」
「オンッ!」
カナデとサクラが、それぞれ牽制の一撃を叩き込み、魔物の足を止めた。
続けて、俺とステラが左右から切り込み、刃をぶつける。
トドメはシフォンだ。
「メガボルト!」
雷撃魔法が走り抜けて、魔物の核を撃ち抜いた。
「ふぅ……みんな、大丈夫か?」
「うん、私とサクラは大丈夫だよ。シフォンとステラは?」
「問題ないかな」
「ああ、大丈夫だ」
「エリスは……」
「心配していただき、ありがとうございます。私なら、問題ありません」
「そっか。なら、よかった」
あれからダンジョンの探索を再開して、中層に辿り着いていた。
そこまで難易度の高くないダンジョンではあるものの、中層となれば油断は禁物。
ベテランパーティーも、ちょっとした油断から一気に壊滅してしまうことも、稀にだけどある。
なので、エリスとの連携を確認するためにも、ゆっくりと攻略を進めていたのだけど……
「エリスさんって、やっぱり強いんだね」
シフォンは、目をキラキラとさせてエリスを見た。
そんな純粋な反応に、エリスはそんなことはないと恐縮してみせる。
「いえ、そのようなことは……!」
「謙遜しないで。すごく高い技術を持っていることは、見ればわかるし……うーん、剣技は私も見習いたいところ」
「勇者さまにそう言っていただけるとは、光栄です」
一緒にダンジョンを攻略する仲間ということで、シフォンも素性を明かしている。
「私もまだまだだから。今度、機会があったら一緒に稽古しよう?」
「はい、喜んで」
シフォンは、早くもエリスと仲良くなっていた。
まっすぐな性格の彼女だからこそできるものだろう。
「……ウゥ」
一方で、サクラはまだ警戒を緩めていない。
一応、同行は認めたようだけど、心はまったく許していない様子だ。
でも、エリスに敵意は感じられないんだよな。
サクラは、いったいなにに警戒をしているのか?
こういう時、言葉を交わせないことが、とてももどかしい。