軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

621話 聖騎士

「サクラ、どうしたんだ!?」

「オンッ!」

「えっと……この先で誰かが戦っているみたい」

サクラの鳴き声をカナデが翻訳してくれる。

シフォンが小首を傾げる。

「他の冒険者かな?」

「その可能性は高いが……しかし、当たりを引いたという可能性もある」

「ひとまず、様子を見に行くか」

「オンッ!」

「サクラ、静かにしような?」

「キューン……」

落ち込むサクラをごめんごめんと撫でつつ、音がする方へ向かう。

ほどなくして、剣撃の音と魔物の咆哮が聞こえてきた。

誰かが魔物と戦っているみたいだ。

そっと覗き込んでみると……

「はぁっ!」

赤い髪の騎士が魔物と戦っていた。

歳は二十半ばくらいだろうか?

どこか中性的な顔立ちをしているが、基本、とても綺麗な女性だ。

ステラと同じような鎧をまとっているところを見ると、騎士なのだろう。

ただ、細かい作りが違う。

それに、肩に教会の紋章が記されていた。

赤髪の女騎士は、複数の魔物に囲まれていたが……

「せいっ!」

自分の背丈ほどもある巨大な大剣を自由自在に操り、次から次に魔物を両断した。

すさまじい力だ。

それに、力だけじゃなくて技術もすごい。

魔物に一切の反撃を許すことなく、一撃で倒している。

Aランク冒険者でも、これだけのことはなかなか真似できない。

「……ふぅ」

ほどなくして戦闘が終了した。

赤髪の女騎士は、一つ吐息をこぼすと、大剣を背に戻す。

「うん?」

そこで俺達に気がついたらしく、怪訝そうな顔に。

「こんにちは」

赤髪の女騎士は微笑み、そう挨拶をしてきた。

突然のことに面食らってしまうのだけど、でも、おかげで警戒も解けた。

「えっと……こんにちは。邪魔をしてしまったのなら、すみません」

「いいえ、そのようなことはありません。ちょうど、戦闘は終了したところなので」

「なら、よかった」

見た感じ、ソロでダンジョンに挑んでいるみたいだ。

でも……

ただの直感なのだけど、ミナと関係があるような気がした。

彼女の仲間というわけではないだろうが、まったくの無関係ではないと思う。

なので、もう少し話を続けてみることに。

「一人なんですか?」

「ええ、そうですね。ちょっとした事情があり、ダンジョンに潜っているのですが……えっと」

「あ、すいません。俺は、レイン・シュラウドっていいます」

「カナデだよ。この子は、サクラ」

「オンッ!」

「私は、ステラ・エンプレイスという」

「えっと……シフォンです」

最後、シフォンは名前だけで済ませた。

勇者ということがバレると面倒なことになると思ったのだろうが……

それなら名字を名乗るべきでは?

ちょっと抜けたところがあるんだよな。

まあ、それもらしいと言えるのだけど。

「なるほど、あなたがホライズンの英雄ですか」

「えっ。俺のこと、知っているんですか?」

「はい。有名ですから」

「えっと……ありがとうございます?」

少し恥ずかしい。

「私は、エリス・ランドールです。教会に所属している、聖騎士です」

聖騎士というのは、騎士と似て異なる存在だ。

教会が抱えている独自戦力のことで、Aランク冒険者に匹敵する実力者と聞いている。

冒険者のように依頼を請けることはないし、騎士のように街の秩序を守るために戦うことも少ない。

基本、教会の意思に従い活動をする。

例えば、魔族を崇拝するカルト集団の討伐。

例えば、神を穢す愚者の討伐。

……などなど。

教会からの指示で動き、その力を振るうらしい。

なかなか珍しい存在で、俺も実際に目にするのは初めてだ。

「……聖騎士が、こんなところでなにを?」

「それは……ふむ」

エリスは迷うように視線を揺らす。

ややあって考えがまとまったらしく、俺に視線を戻した。

「質問に質問を返す無礼を許してください。シュラウドさん達は、ここでなにを?」

「それは……」

正直に話すべきか?

それとも、ごまかすべきか?

普通なら前者なのだけど……

エリスが聖騎士だというのなら、もしかしたら協力関係を築くことができるかもしれない。

とはいえ、俺一人で決めていいことではないと、みんなを見る。

「にゃー、私はレインに任せるよ」

「オンッ!」

カナデとサクラは問題なし。

「彼女が聖騎士ならば、良い方向に話が向かうかもしれないな」

「うんうん。私もそう思う」

ステラとシフォンも問題なし。

よし。

そういうことなら、もう少し深い話をしてみよう。

もっとも、全部を打ち明けるつもりはない。

ミナの捕縛、もしくは討伐が目的なんて知られたら、教会に属するエリスがどんな反応をするか。

なので、そこはぼかしつつ、ミナを探しているという目的を伝えた。

「なるほど……ここでシュラウドさん達に出会ったことに、なにか運命のようなものを感じたのですが、それは正しかったみたいですね」

「と、いうと?」

「私の目的も、元勇者パーティーの一員であり、教会に属する神官、ミナ・ルサージュとコンタクトを取ることなんです」