作品タイトル不明
620話 捜索開始
シフォンとステラを連れて、一度、家に帰った。
そこで、もう一度、みんなで情報を共有して、今後の方針を決める。
「それじゃあ、あたしとリファとイリスは、なにかあった時のために街に残るわね」
先の魔族の目的は不明で、その背後にいる者もわからない。
ただ、街に対して危害を加えようとしていたことは明らかで……
同じことが起きてもすぐに対処できるように、防衛戦力として、タニアとリファとイリスが街に常駐することになった。
さらに、ショコラとミルフィーユも協力を申し出てくれた。
勇者パーティーの一員として、街を守ることも大事な任務だから……と。
感謝だ。
「我らは情報収集をすればいいのだな? ふふん、任せるがよい!」
「ソラ達ならば、話を聞くだけではなくて、魔法で色々な痕跡を探すことも可能です」
情報収集は、ソラとルナが担当することに。
そこに、フィーニアも参加する。
フィーニアは、ああ見えて細かいところに気づくことが多い。
他のみんなが見落としていることを、しっかりと拾い上げてくれるかもしれない。
「留守はうちらに任せといてなー」
ティナとニーナ、ノキアさんは留守番だ。
クウとコウのことがあるため、完全に家を空けることはできない。
かといって、連れて行くのは危険だ。
家を守るために、ティナ達にがんばってもらうことになった。
そして……
ミナの目撃情報がある場所の調査は、俺とカナデとシフォン。
それと、ステラとサクラの五人で行うことになった。
――――――――――
「ここが目撃情報のあったダンジョンか」
ホライズンから一時間ほど歩いた場所に、中規模のダンジョンがある。
このダンジョンでミナらしき人を見かけた、という報告が冒険者からあったという。
ちなみに、ダンジョンは小中大の三つの規模で分けられている。
小規模ダンジョンは、十階層以下。
中規模ダンジョンは、三十階層以下。
大規模ダンジョンは、それ以上。
規模が大きくなればなるほど、ダンジョンに眠っている財宝は多くなる。
リターンは大きいが、しかし、危険な魔物やトラップも数多く存在しているため、自然とリスクも大きくなる。
余談だけど、未踏破ダンジョンという分類もある。
誰も最下層に到達したことがなくて、正確な情報がないダンジョンのことだ。
財宝が多く眠る可能性はあるが、未知の危険が待ち受けている場合があるため、挑む際は入念な準備が必要だ。
「にゃー、ここに、あの腐れ神官がいるのかな?」
「腐れ神官って……」
「あんな女、腐れ神官でも優しいくらいだよ!」
ミナのことを思い出して怒っているのか、カナデの尻尾は逆立ち、ぶわっと毛が膨らんでいた。
当たり前だけど、良い印象は抱いていないみたいだ。
「ミナさんって、そんなにひどいことをしたの?」
「したよ! だってだって、レインを追放したんだよ? それから、私達に攻撃してきて……あと、レインにひどいことばかりしているんだよ」
「レインくんに……うん、それは許せないね。会うことができたら、しっかりとおしおきしないと」
シフォンがにっこりと笑う。
しかし、その目は笑っていない。
絶対零度の凍てつきを放っているかのようで、正直、怖い。
「さて、これからどうする? ひとまず現地までやってきたが、まずは軽く中を探索してみるか?」
ステラがそんな提案をした。
「本格的な探索は……難しいよな?」
「難しいな。多少の準備はしてきたが、せいぜい、一泊というところだな。中規模ダンジョンとなると、最短でも踏破に数日はかかるから、少し心もとない」
「でもでも、私とサクラがいるから、大丈夫じゃないかな? 魔物が出ても私がやっつけるし、ミナは、サクラが探し出せると思うし」
「オンッ!」
「む……そう言われると、そうかもしれないな。最強種が二人。そして、レインと勇者さま……中規模ダンジョンに挑むにしては過剰戦力で、踏破が目的ではないから、わりと早く終わるかもしれない?」
ステラが悩ましい顔に。
それは俺も同じで、どうするべきか迷っていた。
ダンジョンに挑むのなら、それなりの準備は必須だ。
でも、今回は踏破が目的じゃない。
財宝を得ることが目的でもない。
中に潜んでいるかもしれないミナを探し出すことが目的だ。
そこに焦点を置いて、効率よくダンジョンを攻略していけば、時間はかからないかもしれない。
しかし、ダンジョンに危険はつきものだ。
軽く考えた結果ひどいことになった、という話はよく聞くし……うーん、どうするべきか悩ましいな。
シフォンとステラがこちらを見た。
俺に任せる、という感じだ。
少し考えてから結論を出す。
「……よし。まずは、上層を探索してみよう。そこで、なにかしらの痕跡を見つけることができたのなら、一度戻り、準備を整えてから再び挑もう。なにもなければ撤退して、改めて考え直す。運良くミナを見つけた場合は、儲けものということで」
「らにゃー!」
「オンッ!」
シフォンとステラも賛成らしく、それぞれ頷いてみせた。
「じゃあ、探索開始だ」
「「「おー!」」」
意気込み、ダンジョンへ突入する。
「へー、ダンジョンってこんな風になっているんだ」
カナデがキョロキョロと周囲を見回す。
「なんで珍しそうにしているんだ? ダンジョンなら、Aランク昇格試験の時に入っただろう?」
「そうだけど、あれは野良ダンジョンじゃないというか、人間の手で管理されていたじゃない? でも、野良ダンジョンは初めてだから新鮮なんだ」
わからないでもないが、野良ダンジョンって……
もう少し、他の言い方はなかったのだろうか?
「ふむ? 普通なら、すぐに魔物が襲ってくるのだが……」
「レインくんがいるから、怖がって出てこないんじゃないかな?」
「ああ、なるほど。それはありえるな」
「二人の中で、俺はどういう認識をされているんだ……?」
魔王とか、そんな風に思われているのだろうか?
そうやって、のんびりと探索をしていると、
「ウゥーーー……オンッ、オンッ!」
突然、サクラが牙をむき出しにして、鋭く吠えた。