軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

612話 サクラの散歩

「ふむ」

武術に関することが書かれた本を読む。

色々な戦術が載っているだけじゃなくて、戦う際の心構えや気の持ち方。

意識するべきことなども書かれていて、非常に興味深い。

ただ訓練をするだけじゃなくて、こういう知識も積極的に取り入れていかないとな。

「……レイン」

「うん? ……あ、ニーナか」

いつの間にか、ニーナがすぐ隣に。

本に夢中になっていたせいで気づかなかった。

「ごめん、本に夢中になってた」

「ううん、だい……じょうぶ。えっと……お願いが、あるの」

「お願い?」

「この子達、の……お散歩に、付き合ってほしいの」

ニーナの後ろから、クウとコウが出てきて、それぞれ一度ずつ鳴いた。

散歩を期待しているらしく、尻尾がふりふりと揺れている。

ニーナの三本の尻尾も、どこか落ち着きのない様子で揺れていた。

「ウチからも頼むでー。勉強してるところ悪いんやけど、ちょっとした息抜き、って感じで行かん?」

ふわふわと浮かびつつ、こちらにやってきたティナがそう援護した。

「それくらいなら問題ないよ。勉強といっても、今すぐに詰め込まないといけないわけじゃないし」

「……すまんな、レインの旦那」

そっと、ティナが耳打ちしてきた。

「……この子ら、ニーナが飼うんやからニーナだけで散歩、ってのが普通なんやろうけど、ちと不安でなー」

「……大丈夫。その気持ちはわかるし、それに、ちょっと体を動かしたい気分だったからな」

「……さすが、レインの旦那やでー。そういうところ、ポイント高いで」

そのポイントは誰に対してのものなのか?

詳しくは聞かないでおいた。

「オンッ!」

ふと気がつくと、サクラがキラキラした目でこちらを見上げていた。

自分で散歩用のリードを咥えて、尻尾をぶんぶんと横に振っている。

「サクラも一緒に散歩するか」

「オンッ! オンオンオンッ!」

ものすごくうれしそうだった。

その後……

準備をして、ニーナ、ティナ、サクラ、コウ、クウと一緒に外へ出る。

コウとクウはそのままだけど、一応、サクラはリードを繋いでおいた。

リードなんて必要ないくらい、サクラは賢くきちんとした子なのだけど……

大きいからリードを繋いでいないと不安に思う人がいるかもしれない。

「よし、いくか」

サクラのリードを俺が引く。

ニーナはサクラの背中に乗り、人形バージョンのティナはニーナの頭の上に。

サクラ、ニーナ、ティナの三人合体だ。

クウとコウは、サクラの隣を仲良さそうに歩いていた。

時折、サクラの尻尾がぶつかっているものの、それはそれで楽しそうにしていて、じゃれついている。

「わぁ……」

サクラの背中に乗るニーナは、とても楽しそうだ。

普段と違う視線を楽しんでいるらしく、目をキラキラさせている。

「サクラ……わたし、重くない……?」

「ワフッ」

「えへへ、ありがと」

たぶんサクラは、そんなことないよ、と言ったのだろう。

言葉はわからないけど、長く一緒にいるから、言いたいことはなんとなくわかる。

「でも……わたしも、お散歩するね」

しばらく歩いたところで、ニーナがサクラから降りた。

「お散歩……楽しい」

「なら、ウチも自分の足で歩くかなー」

「クウ!」

「コン!」

クウとコウが、ティナを歓迎するように高く鳴いた。

そして、それぞれティナに寄り添い、テテテと歩いていく。

「みんなで、お散歩……楽しい、ね」

「オフゥ」

ニーナが笑顔でそう言って、同意するかのようにサクラが鳴いた。

うん。

やっぱり、こういうのんびりした時間は大事だな。

心が癒やされるというか、安らぐというか……

肉体的な疲れだけじゃなくて、精神的な疲労もとれていく。

そして、明日からまたがんばろう、という活力が湧いてくる。

ニーナとティナだけじゃなくて、今度はみんなを誘おうかな?

「あっ、レイン達なのだ!」

「こんにちは」

買い物をしていたらしい、ルナとソラと出会った。

「サクラ達と一緒に散歩をしているんですね」

「むぅ、すごく楽しそうなのだ。そういうイベントがあることを、なぜ我らに黙っていたのだ?」

「ごめん、ごめん。黙っていたわけじゃなくて、突発的に開催されたから」

「では、我らも今から参加するのだ!」

「はい。とても楽しそうです」

ルナとソラが仲間に加わった。

「レイン、サクラのリードを貸してくれ。我がサクラを先導するのだ」

「サクラ、一緒に散歩をしましょう。サクラが満足するまで、ソラ達は付き合いますからね」

「オンッ!」

本当に!? というような感じで、サクラはキラキラと目を輝かせた。

そして……

「オォーーーンッ!!!」

「「ぎゃあああああああっ!!!?」」

サクラが思い切り駆け出して、それに耐えられず、ルナとソラが引きずられてしまう。

あっという間に三人は見えなくなった。

「ウチ、なんとなくやけど、こうなる気がしてたで」

「なら、止めてくれよ……」

「てへ♪」

ティナはぺろりと舌を出してかわいらしく笑い、ごまかすのだった。