作品タイトル不明
特別話 初夢
「「「明けましておめでとうございます!」」」
年が明けて新年。
今年も無事に、みんなと新しい年を迎えることができた。
「ふにゃー……こたつ、最高だよぉ」
「このぬくぬく、たまらないわー……」
「我はもう、こたつに住みたいのだ……」
「こたつで寝たら風邪を引きますよ。ああ、でも、引いてもいいと思えてしまいます……」
みんな、こたつの魔力にやられてしまい、とろけきっていた。
わかる。
こたつは、一度ハマると、もう二度と抜け出せないからな。
そんな魔力を持った、秘密の道具だ。
「みかん、おいしい」
「ニーナ、白いやつを取ってあげましょうか?」
「ダメやでー、ノキアさん。それ、けっこう栄養あるんやで」
「え、そうなんですか?」
「せやでー。だから、ちゃんと食べないとダメや」
「うん、食べる」
こたつにみかん。
この組み合わせも最強だ。
「みかんも素敵ですが、わたくしは、このおせちという料理が好きですわ」
「い、色々な料理があって目移りしてしまいます!」
「オンッ!」
「フィーニアさんは、どれがお好きですか? ちなみにわたくしは、栗きんとんでしょうか」
「わ、ワタシは、えっと、その……」
フィーニアがおせちを睨むように見て、それから目がぐるぐると回る。
「た、たくさんありすぎて、一つに絞れませぇん……」
「オフゥ……」
「ふふ、それはそれでアリの答えですわね」
ちょっと高いおせち料理だったけど、購入して正解だったな。
おいしい料理を味わうだけじゃなくて、こうやって、みんなで楽しむことができる。
これも、おせち料理の醍醐味なのかな、なんて思う。
「ところで、みんなはもう初夢を見たか?」
「初夢?」
「今年、最初に見た夢のことだよ。夢の内容で、今年一年の運勢が決まるって言われているんだ。確か……鷹とナスと山が出てくる夢を見ると、縁起が良いんだったかな?」
「にゃるほど。鷹とかナスとか山は出てこなかったけど、私、初夢を見たよ!」
聞いて聞いてと言うように、カナデは満面の笑みで手を挙げた。
「どんな夢なんだ?」
「ふっふっふ、それはねー……お魚の夢だよ!」
「魚?」
「大好きなお魚に囲まれて、お魚のお風呂に入る夢」
「魚の……風呂?」
「うん! それで、私はお腹いっぱいになるまで、お魚を食べることができたんだ。じゅるり」
魚風呂っていうのは、ちょっと想像しづらいけど……
でも、カナデらしい夢だと思った。
「あたしも夢を見たわ。ソラとルナが出てきたわね」
「なに、我らが?」
「それは、どんな夢なんですか?」
「……とても屈辱的な夢ね」
「「どんな夢!?」」
タニアはとても苦い顔をして、話を続ける。
「あたしは、ソラとルナと一緒に竜族の里に帰ったのよ。あ、なんで二人と一緒に帰ったとか、そんなこと聞かれてもわからないわよ? 夢だもの」
「うむ。それで、どうなったのだ?」
「普段は、里に帰ると、母さんがまっさきにやってきて、ものすごく構ってくるんだけど……」
「その光景は、簡単に想像できますね」
「……夢の中だと、母さんはあたしのことはどうでもよく、ソラとルナをめっちゃくちゃかわいがるのよ」
「我らを?」
「そう。普段のあたしにしている以上に、目をハートマークにして、かわいがっていたわ」
「「……」」
その光景を想像したらしく、ソラとルナは微妙な顔に。
そこまでかわいがられるのはちょっと……と思っているようだ。
「母さんのちょっとうざいかわいがりがなくなるのはいいんだけど、でも、それがソラとルナに向けられるとなると、なんかこう……屈辱的ね。ちょっと、どうしてくれるわけ?」
「「まったくの無関係!」」
「罰として、今日の夕飯のデザート、あたしが徴収するわ」
「「横暴!?」」
タニアはぷんすかと怒っているものの……
それ、言い換えると、他の子を甘やかすミルアさんに嫉妬している、ということになるのだけど。
そのことを自覚しているのかいないのか、タニアは頬を膨らませていた。
「わたしも……夢、見たよ?」
「おっ、ニーナも見たん? ウチは見なかったけど、どんな夢やったんや?」
「ママと一緒に……お昼寝、する夢」
「「「ほわぁ」」」
うれしそうに語るニーナに、みんな、骨抜きにされていた。
「夢の中なのに、お昼寝してて……ずっと、寝ちゃいそうだった」
「ふふ、ニーナはお昼寝が好きですね」
「ううん。ママと一緒なのが……好き」
「「「はふぅ」」」
ニーナの純粋な笑顔に、再びみんなの心が撃ち抜かれていた。
うん、仕方ない。
今のは俺も危なかった。
「えっと……イリスは夢を見ていないのか?」
ニーナの話を聞いていると微笑ましい気持ちで胸がいっぱいになってしまいそうなので、話をイリスに振る。
イリスは待ってました、という感じで微笑む。
「ええ、もちろん見ましたわ」
「へえ、どんな夢なんだ?」
「レインさまが出てくる夢ですわ」
「俺が?」
どんな扱いになっているんだろう?
気になるけれど、でも、イリスのことだから妙な感じになっているような……?
「夢の中では、わたくしとレインさまは、ご主人さまと下僕の関係になっていましたわ」
「ごしゅ……なんだって?」
「夢の中のレインさまはとても意地悪で、わたくしにひどいことばかりなさるのです。あぁ、でもしかし、それはそれで心地よく、まさに夢のような時間で……ふふ。わたくし、攻める方だと思っていたのですが、される方の素質もあるかもしれませんわ」
「「「変態だー!!!?」」」
恍惚とした表情さえ浮かべるイリスに、みんな、ドン引きだった。
いや、ごめん。
正直、俺もついていけない。
「り、リファは初夢は見てないか!?」
慌てて話を逸してみると、リファは悩ましげな顔に。
まさか、リファまで、とんでもない夢を……?
「んー……なんて言えばいいのかな?」
「えっと、無理に言う必要はないぞ?」
「大丈夫。イリスみたいな変態じゃないから、ボク」
「そこまで言われなくてはなりませんの!?」
イリスは抗議するが、みんなは、うんうんと賛同していた。
ショックを受けるイリスはかわいそうだけど、フォローのしようがない。
「なら、どういう夢なんだ?」
「うーん、言葉にしづらいんだけど……朝起きて、散歩をしていたら、うさぎが飛び出してきたんだ」
「へぇ」
かわいらしい夢だ。
「そのうさぎは、言葉をしゃべることができて、ボクをスカウトに来たの。夢の国につれていくから、救ってほしい、って」
「メルヘンな感じだな」
「ボクとうさぎは夢の国に行くため、海を超える丸太を作ることにしたの。素材は最高級。ダンジョンに潜り、恐ろしいパンケーキを倒して、なんとか竹船を手に入れた」
「あれ?」
「そして竹船合体をしようとするんだけど、そこでうさぎが舞茸っていう事実が判明するの。ボクは追いつめられて、地底湖に逃げる」
「いや、えっと……」
「そこで未来からやってきた椎茸がゾンビになって、あーうーって襲ってくるんだけど、ボクは新しい眷属のミミナガカブトムシを召喚して……」
「……いや、そこまででいいよ」
リファの語る内容は、間違いなく夢ではあるのだけど……
夢らしく、というべきか、内容に統一性がなく、おまけにメチャクチャだ。
たまにそういう夢を見るけれど、その話を聞くと、頭が痛くなりそうだ。
「わ、わらひも夢を見まひひゃ!」
「オンッ!」
次は自分達の番と、フィーニアとサクラが立候補した。
二人なら、なんか、ほのぼのとした話を聞くことができそうだ。
「え、えっと、まずはワタシからですが……レインさんの言う、鷹とナスと山が出てきた夢です!」
「おお、それはすごい」
「ま、まずですね……ナス料理を作っていたんですが、その、フライパンをひっくり返してしまって、大変なことになりました……」
夢の中のことだけど、よほど嫌な感じだったのか、フィーニアは早くも泣きそうな顔に。
「それから外に出ると、鷹が襲ってきましたぁ……うぅ、ワタシのこと、エサだと思ったんでしょうね。ワタシ、それくらいの価値しかありませんから」
「えっと……や、山は?」
「登山をしていたら、足を踏み外して、1000メートルくらい滑り落ちましたぁ……うぅ、これ、本当に良いことあるんでしょうか?」
「……ごめんなさい」
なぜかわからないのだけど、ついつい謝罪をしてしまう。
一応、ナスと鷹と山は出てきたのだから、今年は、フィーニアにたくさん良いことがあってほしい。
切に願う。
「オンッ!」
真打ち登場とばかりに、サクラが前に出た。
そして……
「オンオンオンッ! オフゥ、クゥーン……ハッ、ハッ、ハッ。ボフンッ! キューン……オンオンッ! アオーンッ!」
……うん。
なにを言っているか、さっぱりわからない。
とても元気なところを見ると、たぶん、良い夢を見たんだろうけど……
さすがに詳細は理解できない。
「でも、そっか。みんな、色々な夢を見たんだな」
「ねえねえ、レインは夢を見ていないの?」
「あ、それ気になるわ」
「見たけど、あえて語るような内容じゃないぞ?」
「それでも気になるのだ!」
「ソラ達が語ったのだから、レインも語らないといけませんよ?」
「教えて、ほしい……な」
「もちろん、わたくしは出てきているのですね?」
「ボクも興味あるかな?」
「お、教えていただけるとうれし……あぁ、すみません! こんな私が生意気言ってすみません!」
「オンッ!」
「ふふ、これはもう、逃げることはできませんね」
「あはは……」
ノキアさんの言葉に、苦笑することしかできない。
まあ、夢の話をしないと決めたわけじゃない。
本当に単純な夢だったから、話す価値があるのかな? と思っただけだ。
「俺の見た夢は……」
今、こうしているように……
みんなで一緒に笑顔で過ごすこと、そんな夢だ。
だから、心の中で願う。
どうか、今年が良い年でありますように。
そして、みんなと一緒にいられますように。
「改めて……みんな、明けましておめでとう」