軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

610話 もう一人のビーストテイマー

とある街の小さな家。

埃のない綺麗な家に、ラインハルトの姿があった。

モナを両手で抱えている。

ただ、モナを労る様子はあまり見られなくて、どことなく面倒そうだった。

「あぁ……久しぶりの我が家。うんうん、懐かしいね」

「元気になったのなら降りろ」

「ふわぁ!?」

ぽいっと、モナはベッドに放り投げられた。

そこら辺ではなくてベッドの上だったのは、ラインハルトのせめてもの優しさか。

「うぅ……私の主は、使い魔にもっと優しくするべきだと思うんだよね。厳しくない?」

「必要がある相手なら、そうする」

「つまり私に優しさは必要ないと!?」

「ああ」

「断言された!?」

ガーン、とショックを受けたような顔になるモナ。

よほどショックだったのか、背中からベッドに倒れ込んで、仰向けに寝た。

「そのまま寝てろ」

「なになに? あんなこと言いつつ、やっぱり私のことが心配? ゆっくり休んでほしい?」

「うるさいから黙ってほしいだけだ」

「やっぱり辛辣ぅ!」

しくしくと涙を流しつつ、モナはふて寝した。

そんな彼女に構うことなく、ラインハルトは寝室を後にしてリビングへ。

水を飲み、椅子に座って体を休める。

「……ふぅ」

余計な時間をとられてしまった。

ラインハルト、そうため息をこぼした。

モナはとても気まぐれな性格をしていて、いつも好き勝手している。

そのことを承知した上で、ラインハルトは彼女と契約を交わした。

ただ、あまりに好き勝手をされてしまうと困る。

モナは大抵のものに変身できるというトリッキーな能力を持つが、戦闘能力はそこまで高くない。

そこらの魔物や魔族相手なら問題はないが、歴戦の最強種などを相手にした場合、分が悪い。

もしも、あのまま捕まっていたらどうなるか?

痛いことを嫌うモナだ。

尋問などをされれば、あっさりと屈してしまうだろう。

魔族の情報をしゃべる分には問題はない。

ラインハルトは魔族の敵ではないが、味方でもない。

どうでもいい相手なので、魔族にとって不利になる情報が漏れたところで困らない。

ただ、自分に関する情報は別だ。

やらなければいけないことが。

成すべき使命がある。

それを果たす時まで、余計な邪魔はされたくない。

故に、モナを助けたのだけど……

「まったく、面倒なことになったな」

まさか、同郷の者に会うなんて。

向こうは気づいていなかったみたいだけど、ラインハルトはすぐに理解した。

レインは、同じ里の出身だ……と。

「レイン・シュラウド……か。あの泣き虫が、あんなにも大きくなっているとはな」

ラインハルトは口元に小さな笑みを浮かべる。

それから、もう一口、水を飲んだ。

「マスター」

ふと、無機質な声が響いた。

振り返ると、二十くらいの女性の姿が。

足元まで届きそうなほど長い、輝く銀色の髪を持つ。

それともう一つ、特徴的なものがあった。

それは、純白の翼。

一切の汚れのない翼が、彼女の背中に生えていた。

「おかえりなさい」

「オフィーリア、いたのか」

「はい。マスターの帰りを待っていました」

そう答える女性は、感情を感じさせない。

まるで人形のようだ。

「別に俺の帰りを待つ必要はない。オフィーリアも、モナのように好きにすればいい」

「本当に、モナのようにしてもいいのですか?」

「……」

「本当に?」

「前言撤回する。あいつほど自由にされたら面倒だ。ほどほどに好きにしろ」

「はい。では、好きにマスターのことを待たせていただきます」

「まったく……」

ラインハルトはため息をこぼす。

モナといいオフィーリアといい、自分の周りには変わり者が多い。

もっとも、世間一般から見れば、ラインハルトも変わり者なのだけど……

彼はそのことを認めない。

というよりは、自覚していない。

「モナはどうされたのですか?」

「捕まりそうになっていたから、連れて帰った」

「なるほど。いつものように、やらかしていたのですね」

「ああ、いつも通りだ」

やれやれと、オフィーリアは頭を振る。

無表情ではあるが、やや呆れている様子だった。

その仕草は、彼女が人形などではなくて、きちんと感情があることを示していた。

「ミツキとアリエイルはどうした?」

軽く家を見回した後、ラインハルトはオフィーリアに尋ねた。

「すみません。二人は消息不明です」

「俺は、ここで待機していろと命令したはずだが……」

「マスターの帰りが遅いので……ミツキが、『ちょっとくらい遊びに行っても大丈夫だね? うん、大丈夫!』と言い残して、どこかへ出かけました。帰りは未定です」

「あの不良猫とバカドラゴンが……」

ラインハルトはこめかみの辺りをひくつかせた。

それから、何度目になるかわからないため息をこぼす。

「どうされますか?」

「……まあいい。しばらくは好きにさせておくが、もう少ししたら動く予定だ。それまでに、最低、自由に連絡をとれるようにしておけ」

「かしこまりました」

一礼して、オフィーリアは家の奥に消えた。

小さな家に見えるが、色々な仕掛けが施されているため、実際に使えるスペースはかなり多い。

一人になったラインハルトは水を飲み干して、空になったグラスを睨む。

「もうすぐ時代が大きく動く……その時、俺は……」