作品タイトル不明
601話 私達の前に敵はいない
猫霊族の里でレインが修行をする一方で……
カナデ達も修行をしていた。
レインに甘えてばかりではいれない。
なによりも、レインは無茶をしがち。
ならば自分達が強くなり、サポートするしかない。
そのために、日々、腕を磨いてきた。
その結果……
カナデとニーナは、任意で覚醒状態へ移行できるようになった。
もっとも、五分という制限時間があるものの……
今はそれで十分。
「ニーナ!」
「うん!」
ニーナはくるりと手を回す。
迫りくる魔物が亜空間に飲み込まれて……
そのまま離れたところに強制転移させられた。
以前、ノキアが見せた戦い方だ。
母の背中を見て、娘は成長する。
「ナイスだよ、ニーナ!」
カナデが駆ける。
いや。
駆けるなんて生易しいものではない。
翔ける。
風のように。
音のように。
気がつけば彼女の姿が目の前にあり、魔物達は次々と粉砕されていく。
反応することはできず、抵抗することも許されない。
絶対的な執行者だ。
「これなら!」
半数程度の魔物をバラバラにした後、戦果を確認するため、カナデは一度距離を取る。
「カナデ、すごい……ね」
「えへへー、それほどでも」
「ただのびっくり、ねこ……じゃなかった」
「ここでそれを言うの!?」
個性的な仲間に囲まれて、精神的にも成長したニーナだった。
ただし、その成長の方向が正しいかどうか、それは微妙なところではあるが。
「むっ!?」
カナデが険しい顔をして魔物がいた方を睨む。
バラバラになったはずの魔物は……
しかし息絶えることなく、再生してしまう。
四つに断たれた魔物は、四体の魔物に。
それぞれの欠片から新しい魔物が生まれていく。
「あれでもダメなの? うにゃー、なんて面倒な」
「どう、しよう?」
「うーん……さすがに、粉々にしたら再生できないよね? なら……」
カナデは、そっとニーナに耳打ちした。
ニーナはふんふんと頷いて……
問題ないよ、という感じで力強い笑みを浮かべてみせる。
「じゃあ、私は準備をしておくから、お願いね!」
「うん」
「うにゃあああああ……!!!」
カナデは気合の声を響かせて、力を溜める。
彼女の体を駆け巡る光がバチバチと音を奏でる。
時間が経つにつれて放電が激しくなり、やがて、それは右手に収束されていく。
力を溜めているカナデは動くことができず、無防備だ。
それを魔物達は見抜いたらしく、カナデに殺到する。
このままだと、無防備なカナデは魔物達の牙を受けてしまうが……
ただ、それはニーナが許さない。
「んっ」
ニーナは次々と亜空間に繋がる扉を開いて、魔物達を強制転移させていく。
一匹も漏らすことはなく。
全ての魔物の接近を絶対に許さない。
次々と強制転移させて、一箇所に集めていく。
そして……
「これで……終わり」
最後に、巨大な亜空間の扉を開いた。
それは、さながら獣の口のよう。
ニーナは巧みに力を操作して、一箇所にまとめた魔物達をぱくりと飲み込んだ。
そのまま強制転移。
厄介な再生能力を持つ魔物は、まとめて上空百メートルほどに跳ばされた。
これも母の戦い方を真似たものだ。
とはいえ、魔物は頑丈だ。
ましてや再生能力を持つため、百メートルから落下しただけでは無力化はできないだろう。
でも、それはニーナもきちんと理解している。
なので、ここでバトンタッチ。
「カナデ……おね、がい」
「うん、任せておいて!」
準備完了。
そう言うかのように、カナデの全身が輝いていた。
中でも、右手が強く光っている。
太陽をその手に掴んでいるかのようだ。
「うにゃあああああ……」
深く深く集中。
一点に圧縮された力を、さらに極限まで押し込めて、まとめていく。
そして、限界が来たところで、全てを一気に解き放つ!
「にゃんっ!!!」
カナデは勢いよく右手を突き出した。
溜め込まれた光が放たれて、極大の力が吹き荒れる。
嵐のように踊る光は、さながらドラゴンのよう。
超級魔法に匹敵する一撃が、まとめて魔物達を飲み込んだ。
後に残るものはなにもない。
強いて挙げるのならば、パラパラと極小の塵が落ちるだけだ。
その状態ではさすがに再生できないらしい。
魔物が復活することはなくて、そのまま風に飛ばされて消えた。
「カナデ、すごい……ね」
「ふっふっふ! 覚醒状態限定だけど、私の必殺技だよ」
「おー」
「名付けるとしたら……スーパーカナデアタック!」
「おー……?」
その名前はどうなの?
そんな感じでニーナは小首を傾げるのだった。