作品タイトル不明
600話 頭に来た
粉々に砕けたモナは、その破片を周囲に散らした。
すると、ワイバーンに似た魔物が炎を吐く。
紅蓮の舌が地面を舐めるようにして、モナの欠片を溶かしていく。
すると、どうだろう。
モナの欠片が動き出して、それぞれ他の欠片と結合していく。
それは、さながらスライムのようで……
「私、復活っ!」
最終的にモナは自分を取り戻してしまう。
「うにゃ!? あ、あの状態から復活したの……?」
「なんてデタラメな……」
でも、不死身というわけではないだろう。
アルテラのように、どこかに体を構成する核があるはずだ。
それを破壊すればこちらの勝ち。
できることなら捕らえて尋問したいところだけど……
それが難しいなら、ここで敵の戦力を削っておきたい。
「あーもー……私は戦闘が得意じゃないのに。よってたかって、好き勝手してくれちゃって!」
「ふん、よく言うわ。お主の方が好き勝手しておるじゃろうに」
「えー、私、なにもしてないんだけど。冤罪だよね?」
「ほざけ。レイン達にあれこれとちょっかいをかけて……それだけではないぞ。お主が里を出る時、あちらこちら引っ掻き回した挙げ句、持ち出してはならぬものを持ち出したことを忘れたか?」
「道具や知識は、使われてこそなんぼ、って思わない?」
「手を出してはならぬものもある」
「やれやれ、相変わらず頭が固いなー」
モナは、演技じみた様子で肩をすくめてみせた。
それから笑みを消す。
「まあ、それはともかく。やられっぱなしっていうのも気分悪いから……殺す」
モナは、パチンと指を鳴らす。
その音に反応して、どこからともなく蜘蛛に似た魔物が湧いてきた。
「こいつ……まさか、これだけの数を?」
「あー、そういう心配はいらないよ? こいつらは、単に飼いならしただけ。魔物化に成功したのは、あのキツネが初めてかな」
「なんであんなことをした?」
「楽しいから」
「は?」
「新しいことに挑戦するって、楽しいじゃん? だからやる。それだけだよん」
まるで罪悪感を覚えていない様子だ。
むしろ、怒りを向けられることに疑問さえ持っている。
ふざけたヤツだ。
「ゆる、せない……!」
ニーナも強い怒りを覚えているらしく、モナを強く睨みつけた。
「私のことが許せない? 嫌い? いいよ。なら、やりあおうじゃないか!」
もう一度指が鳴らされて……
それが合図となり、大量の魔物が突撃を開始した。
――――――――――
「レイン、ここは私とニーナに任せて!」
「わかった!」
カナデとニーナは、迫りくる魔物の群れに立つ。
「んっ!」
ニーナはくるりと手を回して、亜空間に繋がる扉を開いた。
そこにカナデが飛び込んで……
「にゃんっ!」
魔物達の背後に転移したカナデは、逆に奇襲を仕掛ける。
拳撃と蹴撃を交互に繰り出して、魔物達を次々と蹴散らしていく。
しかし、敵も負けていない。
次から次に増援が湧き出して……
物量でカナデとニーナを押し切ろうとする。
「えいっ」
ニーナは無数の穴を開けて……
そこに石を次々と投げ込む。
上下左右、ありとあらゆる角度から魔物達に石が降り注いだ。
子供とはいえ、最強種だ。
それなりの力があり、魔物達は足を止めざるをえない。
「そして、私がトドメを刺す!」
カナデが駆けた。
風よりも速く。
嵐よりも激しく。
あえて敵陣の中央に飛び込む。
ニーナの攻撃で怯む魔物達は彼女に対処できない。
カナデは好き放題に暴れて……
瞬く間に魔物達の数が減っていく。
しかし、喜ぶヒマはない。
倒したはずの魔物が分裂して……
さらに分裂を繰り返して、最初の倍以上の数になる。
「にゃんですと!?」
「こんな、魔物……知らない、よ?」
「モナがなんかしたのかも! なにもしてないとか、そんなウソをついて私達を油断させようと考えてたのかも」
質では勝てないと悟ったのだろう。
魔物達は分裂を繰り返した。
一から二。
二から四。
四から八。
そして……
何度も何度も分裂をして、その数はあっという間に百を超える。
それでもなお分裂し続けていて、千に届こうとしていた。
「どう、しよう……?」
「大丈夫だよ、ニーナ。分裂するなら、まとめて一気に倒せばいいだけだから。全力でいこう。ニーナは、援護をよろしく!」
「うん」
長い間、一緒にいるから、深く説明しなくてもその一言だけで考えていることがわかる。
カナデは目を閉じて、深く集中した。
同じく、ニーナも心を穏やかに研ぎ澄ませていく。
「んにゃあああ……!」
「んぅううう……!」
力を溜めて溜めて溜めて……
一気に解き放つ!
「にゃん!」
「んっ!」
バチバチと放電する光をまとうカナデと、大人に成長して九尾の姿となったニーナ……覚醒した二人の姿がそこにあった。