作品タイトル不明
598話 問答無用
俺、カナデ、ニーナ、アルさん。
奇襲をしかけたいので夜まで待ち、昨日、クウの母親を見つけた場所までやってきた。
「ここに……クウのママ、いた」
「そういえば、なんでクウのお母さんは自由に動けていたのかな? 魔物化の研究に利用されていたなら、閉じ込められているようなイメージなのに」
「たぶん、用済みになったんだろうな。それで処分も面倒だから、適当に逃がした……ひどい話だけどな」
「ゆるせ、ない」
珍しくニーナが怒りに燃えていた。
クウのことはすごくかわいがっていたし……
あと、自分を重ねて見ているところもあり、なおさら許せないのだろう。
「どうやって、さがす?」
「そうだな。動物に協力してもらってもいいんだけど……アルさん、モナは探知能力に長けていたりします?」
「範囲内の生体反応を感知して知らせる、という魔法はあるな。あやつは戦闘向きではないから、間違いなく使っているじゃろう。そして、敵が来たとわかれば逃げるじゃろうな」
「ふむ」
色々と情報を得るために、ここで捕まえておきたい。
あるいは、倒しておきたい。
逃げられるという最悪の展開は絶対に阻止したいから、失敗は許されないな。
さて、どうしよう?
「にゃー、どうやって探すの? 細かい場所は、誰も知らないんだよね?」
「そこでカナデじゃ」
「私?」
「得意の嗅覚でモナの居場所を探し出すのじゃ!」
「私、犬じゃないよ!?」
アルさんの無茶振りに、カナデが憤慨してみせた。
「こんなことなら、サクラも連れてきた方がよかったかな?」
「それは悪手じゃな。サクラがおとなしくしてると思うか?」
「……」
隠密行動が原則なのに、オンッ! と元気よく叫ぶ姿が簡単に想像できた。
「というわけで、がんばるのじゃ、カナデよ」
「無茶振りすぎる!? まあ、やってみるけど……」
断らない辺り、お人好しというかなんというか。
あれこれと振り回されたりしないか、カナデのことが心配になる。
「すんすん、すんすん」
カナデは鼻を鳴らして、キョロキョロと周囲を見た。
ややあって、少し迷いが混じりつつも、森の一角を指差す。
「うーん……たぶん、こっちかな?」
「わかるのか!? 冗談のつもりだったのじゃが……」
「ひどくない!?」
まあまあとなだめつつ、カナデを信じて森の奥へ。
気配を消して、細心の注意を払いつつゆっくりと進んで……
そして、洞窟を発見した。
「怪しいな」
「うん、怪しいね」
見た目は小さな洞窟なのだけど、嫌な気配がする。
カナデの鼻も反応しているし、モナのアジトはここで間違いないだろう。
「レイン、どうする?」
「そうだな……」
モナが俺達の行動に気づいていない、という前提が必要になるけど……
このまま奇襲をしかけてもいいと思う。
今は夜。
敵がいないと油断しているのなら、モナは寝ているだろう。
多少の罠はあるだろうが、こちらが優位に立てるはず。
逆に、すでにこちらに気づいていた場合は危険だ。
大量の罠を張り巡らせて待ち構えているかもしれない。
どうするべきか悩ましい。
「なに、こうすればよいのじゃよ」
「アルさんには、なにか考えが?」
「うむ、見ておれ」
アルさんは、数歩、前に出た。
そして、光の羽を背中に生やして……
「ガルーダブラスト!」
いきなり超級魔法をぶちかました。
ゴガァッ!
極大の嵐と衝撃により、小さな洞窟が吹き飛ばされる。
「ちょっ!?」
「にゃー!?」
俺は慌ててニーナを抱き寄せて、その場に伏せた。
カナデは間に合わず、余波で吹き飛ばされてしまう。
そして……
後に残されたのは、崩れ落ちた洞窟と土砂の山。
それらを前にして、アルさんは満足そうに頷く。
「うむ。スッキリしたのじゃ」
「いきなり、なにをしているんですか……?」
「先制攻撃じゃが?」
「問答無用すぎる……」
「ルナのめちゃくちゃなところって、絶対にアルさん譲りだよね……」
俺とカナデは揃って呆れ、
「……くる」
しかし、ニーナは険しい顔でつぶやいた。
俺達もすぐに気持ちを切り替えて、土砂の山となった洞窟跡を睨む。
普通なら生きているわけがない。
でも、モナは普通ではなくて、元精霊族で現魔族という規格外の存在だ。
「ぷはーーー!!!? 驚いたぁ!!!?」
土砂の山を吹き飛ばして、土まみれになったモナが姿を見せた。
「なになになに!? なにが起きたの!? いきなり私の出張研究所が爆発したんだけど!?」
「イフリートディザスター!」
「ぎゃあああああ!!!?」
容赦のない二発目に、モナは爆炎に飲み込まれた。
いや、まあ。
モナは敵で、絶対に許せないことをしたのだけど……
それでも、問答無用の攻撃に少し同情してしまうのだった。
「ごほっ、けほっ……な、なにが……?」
さすがというべきか。
超級魔法を二発受けてもモナは生きていた。
フラフラしつつ、立ち上がり……
「げっ、アル!?」
アルさんを見て、おもいきり顔をひきつらせた。