作品タイトル不明
597話 思わぬ乱入者
クウの母親が魔物になってしまった理由は、森の奥に隠されているかもしれない。
調査をしてみたいものの……
しかし、せっかく助けることができたクウ達を危険に晒すわけにはいかない。
一度、猫霊族の里に戻った。
「なるほど、動物が魔物に……そのような話は聞いたことがないですね」
里に戻り、スズさんに話をしてみるものの、心当たりはないらしい。
不思議そうに小首を傾げられてしまった。
「その動物は、今どこに?」
「ノキアさんが中心になって、色々と検査をしていますよ。元に戻ることはできたものの、まだちょっと魔物っぽいところもあって……健康に問題ないか、検査しているところです」
「なにもないといいですね」
「はい」
「……むう」
俺とスズさんが話をする横で、アルさんが難しい顔をしていた。
「どうしたんですか、アルさん?」
「……本当に、動物が魔物になったのじゃな?」
「はい。ノキアさんのおかげで、なんとかなりましたけど……あのままだったら、危ないところでした」
「むう」
またしても難しい顔。
「アルさんは、なにか心当たりが?」
「……あるといえばあるが、断定はできぬ」
「アル、話してくれませんか? 今の私達は、些細な情報でも欲しいですから」
「うむ、そうじゃな」
スズさんの説得で、アルさんは話をしてくれる決意をしたらしい。
とても苦い顔をして……
そして、心当たりについての話をする。
「普通に考えて、動物が魔物になるなんてことはない。誰かが手を加えぬ限り、そのようなことは起きぬ。動物と魔物……似ているようで、二つはまったくの別種族じゃからな」
「つまり、誰かが手を加えた?」
「うむ、その可能性が高い」
アルさんは神妙な顔で頷いた。
「そして、その犯人は……妾は、モナじゃと思っておる」
「モナ? あの精霊族の?」
仲間に化けられて、スパイ活動をされて。
さらに、ノキアさんに害を及ぼしていた、魔王軍に味方する精霊族のことだ。
トリッキーな戦術を得意としていて……
それ以上に、やることなすこと意地が悪いことばかりで、とても厄介な存在だ。
彼女が暗躍しているというのか?
「あやつが精霊族の里にいた頃、色々な研究をしておってのう……お主が戦ったという四天王のコピーも、その研究の一つじゃ」
「私も軽く話を聞いていましたが、以前は完成していなかったらしいです。ただ、そこからノキアの知識を奪い、完成にこぎつけたみたいですね」
「なんてヤツだ……」
なにを考えているか?
それはわからないが、あちらこちらで災害の種をばらまいていた。
最強種がすることじゃない。
もっとも、今は魔族に堕ちたらしいが。
「モナの研究の中に、人を魔族に堕とすものがあったのじゃ。その応用で、動物を魔物にすることも可能じゃろう」
「……クウの母親は、その研究の被害に?」
「そう考えるのが、妾はしっくりくるな。自然に起きることではないし、あのような研究、他にやるヤツはおらん」
「だとしたら、とんでもなく厄介ですね……」
動物を魔物にする研究。
なにを目的としているのか?
それはわからないのだけど、ろくでもないことだけは確かだろう。
「って、ちょっと待ってください。それなら、この近くにモナが……?」
「可能性は高いですね」
スズさんは険しい顔で頷いた。
「少し前から、嫌な感じがしているんです。レインさん達が向かった森のさらに奥……とても嫌な感じがします」
「こちらにちょっかいをかけないところを見ると、研究が目的なのじゃろうな。妾達のことに気づいておらず、たまたまかもしれん」
「それはつまり……」
反撃をするのなら、今が絶好のチャンスということ?
「どうしますか、レインさん? 向こうが気づいていないのなら、無理にしかけることはないと思いますが……」
「いえ、やらせてくれませんか?」
自ら危険に飛び込むのはどうかと思うのだけど……
でも、これはチャンスだ。
うまくいけばモナを捕えられる、あるいは倒すことができるかもしれない。
それに……
「クウの母親にあんなことをしたこと、許せないので」
クウを泣かせて、ニーナを傷つけた。
そんなことは絶対に許せない。
「やれやれ。しばらく会っていませんでしたが、レインさんはレインさんのままみたいですね」
「甘いヤツではあるが、ま、それがお主の美徳じゃろう」
「ありがとうございます?」
褒められているのかな?
「大人数だと気取られるかもしれん。少数精鋭でゆくぞ。無論、妾は参加するぞ」
「なら、俺とアルさんと……」
「私は、念の為に里に残りますね。里に攻撃をしかけてこないとも限らないので」
「そうですね。なら後は……」
「わたしも、連れて……いって」
振り返るとニーナの姿が。
その瞳には、強い決意が見て取れた。
どうやら今の話を聞いていたみたいだ。
「クウにひどいことをして……ゆるせ、ない」
普段は穏やかなニーナだけど、今は怒りに燃えていた。
大事な友達を傷つけられて、心の底から怒っていた。
その怒りはよくわかる。
「……わかった。一緒に行こうか」
「レインさん? いいんですか?」
「俺が守ります。それに、ニーナの気持ちはわかるつもりなので」
もしもみんなが傷つけられたら、俺はおとなしくしていることはできない。
だから、ニーナの好きにさせることにした。
「妾とレインとニーナ……ふむ。モナが相手なら、戦力的には申し分ないが、もう一人くらい欲しいのう」
「そういうことなら、私の出番だね!」
ドヤ顔をしつつ姿を見せたのは、カナデだった。
「レインとニーナのために、私、がんばるよ!」
「あり、がと」
ニーナは、ぽふっ、とカナデに抱きついた。
そんな彼女をかわいがるように、頭をなでなでする。
「ふむ。物理に欠けているところはあったから、カナデで問題ないじゃろう」
「カナデちゃん、油断したらダメですよ?」
「にゃいあいにゃー!」
こうして、メンバーが決定した。
待っていろよ、モナ。
これ以上、好き勝手はさせないからな。