作品タイトル不明
584話 スイカ割り
「みんな、注目やでー」
海を満喫していると、ティナの声が聞こえてきた。
振り返ると、サクラの背中に乗ったフィーニアの頭の上に乗るティナが。
親子亀的な構図になっていて、ちょっとおもしろい。
そして、サクラの頭にはスイカが乗っていた。
絶妙なバランス感覚で、砂浜に落とすことはない。
「あら。それ、もしかしてスイカ?」
「にゃー、私食べたことないよ。じゅるり」
「よだれを拭きましょうね、よだれ猫ちゃん」
「お母さんにまで言われた!? というか、私の変なあだ名のこと、なんで知っているの!?」
「ふふ、秘密です」
相変わらずというか、スズさんは謎が多いな。
「よーく冷えたスイカやでー」
「「「おー!」」」
「でも、このまま普通に食べるのはつまらんやろ? そこで、スイカ割りをせん?」
「「「スイカ割り?」」」
半分くらいが頭を傾げた。
俺もスイカ割りということを理解できず、同じく頭を傾げる。
「ティナ、スイカ割りってなんだ?」
「スイカを使った、夏だけの贅沢な遊び、ってところやな」
ティナ曰く……
目隠しをして、その場でぐるぐると回転。
目が回り方向感覚を失ったところで、周りからの声を頼りにスイカまで歩いていき、棒で叩いて割るという遊びらしい。
「方向感覚がなくなるほどに回転するのですか……けっこう大変そうですね」
「でも、楽しそうなのだ!」
ソラとルナを始め、みんな乗り気だった。
「どや、レインの旦那?」
「おもしろそうだから、やってみようか」
――――――――――
準備が整い、第一回スイカ割り大会が開催される。
記念すべき一番手は、カナデだ。
「にゃふー、いきなりスイカを割っても、みんな恨まないでね?」
カナデは自信たっぷりだ。
目隠しをして、棒の先端を額に当てて、その場でくるくると回転。
「お、おぉ……?」
ややふらついているものの、カナデはしっかりと砂浜を踏みしめて、倒れるようなことはない。
さすが猫霊族。
バランス感覚も優れているみたいだ。
「えっと……どっちかな?」
「カナデ、右よ」
「いいや、左なのだ!」
「まずは、まっすぐ……だよ?」
こういう遊びだからなのか、タニアとルナは悪い顔で適当なことを言う。
ニーナはいい子なのでウソがつけないらしく、ちゃんとスイカに至るルートを指示していた。
「私はニーナを信じるよ!」
ニーナを信じて、多少ふらふらしつつも、まっすぐ歩くカナデ。
「ここら辺かな?」
「もうちょい右やでー」
「うん、右」
「その後、左ですわ」
「最後に上だぜ」
「右、右、左……そして上だね!」
「あ……」
ニーナの慌てたような声。
それも当然。
ニーナが口を挟まないことをいいことに、途中から、カナデはとんでもないところに誘導されていた。
ニーナは慌てて軌道修正をしようとするが……
それも遅い。
「いくのだ、カナデ! そこでフルスイングなのだ!」
「オッケー、いくよ!」
「ちょ、まちなさいあわてんぼう猫!?」
カナデの先にはタニアがいて……
「うにゃあああああんっ!!!」
「このアホ猫ーーーーーっ!!!?」
――――――――――
ちょっとしたハプニングはあったものの、スイカ割りを再開。
ソラ、ルナと続けて挑戦するものの、共に失敗。
さらにイリスとリファとフィーニアが挑戦したが、やはり失敗。
最初のぐるぐると回転するところが辛いらしく、みんな、途中で転んでいた。
そして、ニーナの番に。
タニア?
タニアは今、カナデとわりと本気の追いかけっこをしている。
「ん、しょ」
「ニーナ、がんばるんやでー!」
「がんばってくださいね、ニーナ」
「がん、ばる」
頼りになる姉のような存在と、大好きな母親の応援。
ニーナはやる気たっぷりに棒を握り、くるくると回転する。
「ふぁ……」
右へふらふら、左へふらふら。
相当に目が回っているらしく、ニーナは今にも倒れてしまいそうだ。
「ニーナさん、そちらではありませんわ。少し左へ」
「うん、いい感じ。そのまままっすぐ」
「が、ががが、がんばってくらひゃい!」
「うー」
みんなの声援を受けて、ニーナはゆっくりとスイカに近づいていく。
よたよたとしているものの、しかし、目標はすぐそこだ。
「そこやー、いけ!」
「おもいきり振り下ろしてくださいね」
「んっ!」
ニーナはスイカの前に立ち、棒を高く構えた。
そして、一気に振り下ろす。
バチンッ!
スイカが砕け散り、赤い実が周囲に炸裂する。
「……」
それもそうか。
ニーナは幼いけど、でも、最強種だ。
普通の人以上の力を持っていて、全力でスイカを叩けば粉々にしてしまうだろう。
ニーナは目隠しを取り、にっこりと笑う。
「成功……した?」
「「「ダイセイコウダネ」」」
みんな、そう言うしかなかった。