作品タイトル不明
585話 えっち
「くらいなさい!」
「にゃん!? やったなー、この!」
「きゃ!?」
「えいっ、えいっ」
「この!」
カナデとタニアが楽しそうに水遊びをしているのだけど……
バシャアアアッ!!!
ゴガァッ!
ズバァアアアアア!!!
とんでもない量の水しぶきが上がり、盛大に海を散らしていく。
本人達は、単純に水をかけあっているだけのつもりなのだけど……
その量が半端じゃない。
局地的な津波が連続で起きているような感じだ。
水しぶきがここまで飛んできて、まるで雨が降っているみたい。
「あー……カナデ、タニア?」
「あ、レイン!」
「レインも一緒に遊びましょう?」
「遊ぶのはいいんだけど、もうちょっと控えめにしないと」
そのうち地形が変わってしまいそうで怖い。
冗談でも誇張でもなくて、わりと本気で懸念している。
「なら、どうしようか?」
「飛び込みでもしない?」
タニアはそう言って、少し離れたところにある崖を指差した。
高さは十メートルくらいだろうか?
ちょうどいい具合に先端が海に飛び出していて、飛び込みをするのに向いていそうだ。
「いいね、楽しそう!」
「飛び込みなら、レインも問題ないわよね?」
「ああ、いこうか」
三人で崖を登り、その先端へ。
「一番、カナデ! いきまーす!」
ぴょん、とカナデがジャンプ。
くるくると回転しつつ落下して……
バシャーン! と水しぶきをあげて着水。
ややあって、ぷはーとカナデが顔を出した
「これ、おもしろいかも!」
「なら、次はあたしね!」
続けてタニアが飛び込んだ。
くるっと一回転した後、体をまっすぐにして落ちる。
とても綺麗なフォームで、着水も静かなものだ。
「ふう、確かに気持ちいいわね。ちょっとしたスリルもあって、楽しいかも」
「でしょ? でしょ?」
「ほら、レインも飛び込んでみなさいよ」
「そうだな」
言われるまま俺も飛び込んだ。
二人のように器用なことはできないので、そのまま豪快に海に落ちる。
一気に水深三メートルくらいまで沈み、水に包まれ、音が遮断される。
水を蹴り、勢いよく浮上。
水面に顔を出すと、太陽が照りつけてきて、風を感じることができて……
「はぁあ……これ、病みつきになりそうだな」
ただ飛び込むだけなのに、すごく楽しい。
「もう一回やろう、レイン?」
「そうだな。もう一回と言わず、数回やってもいいかも」
「ふふ、レイン、わかっているじゃない」
そうして、何度か飛び込みを繰り返すのだけど……
ふと、カナデがこんなことを言い出した。
「にゃー……飛び込みは楽しいんだけど、この高さはちょっと飽きてきたかも」
「そうね。もうちょっと高い方が楽しめそうよね」
「でも、これ以上の崖はなさそうだな」
「なければ自分でなんとかすればいいのよ」
「あ、私、タニアの考えていることがわかったかも!」
二人はニヤリと笑い、崖の上へ。
俺は海に浮かびつつ、なにをするつもりだろう? と、ひとまず様子を見守る。
「レイン、いくよー!」
「あたしらのすごいところ、しっかりと見てなさいよ!」
カナデとタニアは崖の先端に立つ。
そして、足にぐぐっと力を込めて……跳躍!
空高く飛び上がり……
そのまま落下。
バシャアアアアアッ!!!
数十メートルから落下したことで、派手な水しぶきがあがる。
まるで、攻撃魔法を炸裂させたみたいだ。
水しぶきが舞い上がり、雨のようになって周囲に降り注ぐ。
「カナデ? タニア?」
二人の姿は見えない。
カナデとタニアのことだから大丈夫だと思うけど……
それでも姿が見えないと心配になってしまう。
でも、その心配は無用で……
「「ぷはーっ!!」」
ややあって、二人が浮上してきた。
勢いよく浮かんできたのか、イルカのように水面でジャンプをして……
「っ!!!?」
とあることに気がついて、俺は慌てて後ろを向いた。
「レイン? どうしたの?」
「なんで顔を逸らすのよ? あたしらの活躍、見てくれなかったの?」
「そ、そういう問題じゃなくて……」
「「じゃなくて?」」
「……水着が」
「「え?」」
二人のキョトンとした声。
そして少しして……
「「ひゃあああああっ!!!?」」
上の水着がズレていることに気がついたカナデとタニアは、とても恥ずかしそうな悲鳴を響かせるのだった。