作品タイトル不明
578話 母、勢揃い
「久しぶりですね、レインさん。元気にしていましたか?」
「あ、はい」
相変わらずスズさんはマイペースだ。
にっこりと笑い、ぺこりと頭を下げてきた。
俺も頭を下げて……
それから、視線をミルアさん達に移す。
「あの……どうして、ミルアさん達が?」
「タニアちゃーん!」
「はぐ!?」
俺の問いかけを無視……というか、まるで聞こえていない様子で、ミルアさんがタニアに突撃した。
タニアは慌てて逃げようとするが、間に合わず、ガッチリとホールドされてしまう。
「タニアちゃんタニアちゃんタニアちゃん! はぁああああ、久しぶりのタニアちゃんだぁ……タニアちゃん、かわいいよ。はあはあ」
女性がしてはいけないような顔になっているのだけど……
それだけタニアと再会したことがうれしいのだろう。
「よう、リファ。元気でやってたか?」
「うん、ほどほどに。母さんは?」
「俺か? 俺はもちろん、元気だぜ」
「だと思った」
レゾナさんとリファは、いつも通りだ。
「フィーニア」
「ひゃ、ひゃい!?」
「レインさんの役に立っていますか? きちんと、サポートをしていますか?」
「が、ががが、がんばっていまひゅ!」
「その様子だと、まだまだみたいですね……やれやれ。でも、元気そうなのはなによりです」
エルフィンさんは、心なしか雰囲気が柔らかくなったような?
フィーニアを見る目が、以前に比べて優しい。
「サクラよ。レイン達と一緒に行くことは反対せぬが、それなら、きちんと話をするべきじゃろう。それなのに、勝手についていきおって」
「くぅーん……」
「今更連れ戻すようなことはせぬが、説教じゃ」
サクラが「助けて!?」というような目でこちらを見るのだけど……
ごめん。俺にはどうすることもできない。
「どうして、ここに……?」
「妾が呼んだのじゃ」
「アルさんが?」
ふふんと、アルさんが得意そうに胸を張る。
「ぶっちゃけ、今のレインは普通の最強種より強いからのう」
「そうですか? そんなことはないと思いますけど……」
手の空いている時、みんなと手合わせをするのだけど……
勝率は五分以下。
けっこうな確率で負けてしまう。
「妾の娘達は、ちと例外じゃ。以前はそれほどでもなかったが、今はそれなりの経験をしておるからのう。三人は覚醒に至っておるし、並以上の力があるのじゃ」
「か、母さんに褒められた!?」
「あぁ、我らの旅はここでおしまいなのか……」
「……娘達よ。その反応について、後でたっぷりと話し合おうか?」
「「ひぃ」」
アルさんがすごみ、ソラとルナがガクガクと震えた。
怯えるなら口にしなければいいのだけど……でも、ついつい口にしちゃうんだろうなあ。
最近、ソラがルナの影響をだいぶ受けているように感じた。
「レインさんが今以上に強くなるためには、より強い相手と戦い、その技術を吸収する必要があります」
「そこで、俺らの出番っていうわけだ」
確かに、スズさんやレゾナさんに稽古をつけてもらえれば、相当なレベルアップが期待できるだろう。
とはいえ、俺のためにここまでしてくれるなんて……
「ありがとうございます。ここまでしてくれるなんて、すごくありがたいです。でも、返せるものがないから、ちょっと申しわけないですけど……」
「やれやれ、あなたはなにを言っているのですか」
エルフィンさんが呆れた様子で言う。
「私達は、すでに十分以上なものをあなたから受け取っていますよ」
「そうじゃな。レインがおらなければ、不死鳥族も呀狼族もどうなっていたことか」
「クリオスも危なかったしな。その恩を返すことができるんだから、変なこと気にするんじゃねえよ」
気にするな、とエルフィンさん達が優しく笑う。
俺の方が迷惑をかけているような気がするのだけど……
でも、そんな風に思ってもらえていたなんて、すごくうれしい。
「どうじゃ? これが妾の考えた特訓じゃ。かなりのレベルアップに繋がると思わぬか?」
アルさんは、とても誇らしげにしていた。
「ありがとうございます、アルさん」
「ふぁ!?」
なんとなく褒めてほしそうに見えたので、ついつい反射的に頭を撫でてしまう。
瞬間、アルさんは奇妙な声をあげて、ビクリと体を震わせた。
「お、おおぅ……」
「あっ!? す、すみません。つい……」
「い、いや。構わぬぞ? というか、むしろもっと撫でるがよい」
「こう、ですか?」
「おふぅ」
アルさんが恍惚とした表情に。
ただ頭を撫でているんだけど、どうしてこんなことに?
「ぐぬぬ……まさか、こんなところに我らのライバルがいるなんて」
「油断大敵ですね。ソラ達も、もっとグイグイといかなければなりません」
そんな声が後ろから聞こえてきたのだけど、聞こえなかったことにしておいた。
「なにはともあれ……遠路はるばる、おつかれさまでした。そして、ようこそ、猫霊族の里へ」
スズさんが一歩前に出て、笑顔を見せてくれた。
その笑顔だけで癒やされる。
「まずは荷物を置いて、ゆっくりと休んでくださいね。精霊族の里を経由したとはいえ、それなりに疲れているでしょう?」
「ありがとうございます」
「でも、ウチらけっこうな人数おるけど、宿とかあるん?」
ティナの疑問はもっともだ。
猫霊族が旅人を受け入れているとは思えないから……
宿なんてものはないだろう。
スズさんは、それくらい予想済みです、とばかりに得意そうな顔に。
「宿はありませんが、レインさん達が滞在する家は、もちろん用意していますよ。一人一部屋、きちんとあるので安心してください」
「わたし、ママと一緒がいい……」
「ふふ、ありがとう。ニーナ」
ほっこりとするやりとりを見せるニーナとノキアさん。
一方で、カナデがなぜか驚きに震えていた。
「そ、それだけの広さを持つ家になると……もしかして、もしかしなくても……」
「はい、カナデちゃんの想像通り、私達の家に泊まってもらいます」
「やっぱり!?」
ということは……
スズさんの家……カナデの実家にお世話になる?