軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

577話 いざ猫霊族の里へ

ぐにゃり、と視界が歪む。

上下左右の感覚が曖昧になり……

ほどなくして元に戻る。

目を開けると、そこは見知らぬ高原。

精霊族の里を経由して移動したのだけど……ここはどこだろう?

「わぁ……!」

みんなが不思議そうな顔をする中、カナデだけは目をキラキラとさせていた。

「この景色! この緑の匂い! んーーーっ、懐かしい!」

「カナデはこの場所を知っているのか?」

「当然だよ。ここは、猫霊族の里から近いからね」

「へぇ、そう……えっ!?」

さらりととんでもないことを言われて、遅れて驚いてしまう。

目的地はどこなのか?

それは内緒にされていたのだけど……

アルさんを見ると、いたずらが成功したことを喜ぶように、ニヤリという笑みを浮かべていた。

「ふふふ……そう、今回の旅行の目的地は、猫霊族の里なのじゃ!」

「「「な、なんだってー!?」」」

みんな、ノリがいいな。

「本格的に稽古をつけるとなると、一朝一夕では無理じゃ。そこで、旅行と稽古をセットにして、楽しみつつ強くなるというプランを用意したのじゃ」

「母さんが遊びたいだけではないでしょうか?」

「うむ。母上は遊ぶことしか考えてないのだ」

「なにか言ったかのう?」

「「いえ、なにも」」

サッと視線を逸らすソラとルナ。

双子なので息がぴったりだ。

それにしても……

まさか、旅行をすることになるなんて。

しかも、行き先は猫霊族の里。

思いもよらぬ展開に、さすがに困惑してしまう。

「また家を空けてしまうな」

「レインの旦那、大丈夫やでー。ウチらがいなくても、家はちゃんと綺麗なままや」

「それはそれで助かるけど……」

最近、慌ただしいな。

それだけ情勢が大きく動いている、ということなのだろうか?

「でも、どうして猫霊族の里へ?」

「妾が魔法戦のエキスパート。猫霊族は近接戦のエキスパート。万能に鍛えることができるじゃろ?」

「なるほど……一応確認しておきますけど、先方には連絡しているんですよね?」

「しておるに決まっているじゃろ。いきなり押しかけるようなことはせんわい。お主、妾をなんじゃと思っている?」

「おもしろ精霊族かな」

「ひねくれ精霊族ですわね」

「こやつら……」

リファとイリスのストレートな感想に、アルさんがひくりと頬を引きつらせた。

あまりからかわないように。

超級魔法を連発されても知らないぞ。

「ところで、どうして里に直接繋げないの? ここからだと、一時間くらいは歩かないといけないよ?」

「里に直接門を繋げると、悪用された時、大変なことになるじゃろう? 猫霊族の里の中に門を繋げていたら、悪意ある者の奇襲を受ける可能性もある。故に、万が一のことを考えて離れた場所にしておるのじゃよ」

「にゃるほど」

そういえば、クリオスも直接街に繋げることはなくて……

カグネなどに繋げた門は、後々で消去。もしくは場所を変更したと聞いていた。

いざという時の対策をキッチリ考えているアルさんは、さすがだな、と思う。

俺は、細かいところは見落としがちだからな。

見習っていかないと。

「では、猫霊族の里へゆくぞ」

「おーっ!」

カナデが元気よく手を突き上げる。

久しぶりの帰郷なのでテンションが高くなっているのかも。

そして、一時間ほど歩いて……

俺達は猫霊族の里に到着した。

「レイン、みんな。ここが、猫霊族の里だよ」

「ここが……」

緩やかな斜面の林の中に村が作られていた。

ほとんどが木造建築の建物で、石造りの建物は見当たらない。

それと、木や花などの自然が多いような気がした。

一見すると、僻地にある普通の村、という感じだ。

「海が近いのか」

斜面を下った先には、白い砂浜。

そして、広大な海が見えた。

ちょっとツンとするような匂い。

これは、潮風だったのか。

「海の近くだと、毎日お魚が食べられるからねー」

「なるほど」

なんてわかりやすい理由。

でも、猫霊族にとっては、とても大切なポイントなのかもしれない。

「ほれ、行くぞ」

「あ、はい」

アルさんに促されて、里の入り口へ向かう。

すると、いくらかの猫霊族の男女が。

こちらを警戒するように睨みつけてくるのだけど……

その視線がカナデに移動したところで、驚きに丸くなる。

「カナデ!? カナデじゃないか!」

「えっ、ウソ!? 帰ってきたの!?」

「あ、ロッソにロレンだ。ひさしぶり~」

カナデは呑気に手を振りつつ、笑顔で近づいていく。

対する二人はとても慌てているらしく、落ち着きがない。

「にゃん? 二人共、どうしたの? なんでそんなに慌てているの?」

「当たり前だろ! 里を飛び出したきり、ぜんぜん帰ってこなくて……」

「スズさんから大丈夫とは聞いていたものの、心配していたんだからね!」

「にゃふー……ごめんなさい」

飛び出したことは反省しているらしく、カナデは素直に頭を下げた。

そうなると、それ以上は怒ることができないらしく、二人は複雑な顔に。

たぶん、カナデの友達なんだろう。

とても心配していて……

でも、無事に姿を見せたのならそれでいいか、と納得したようだ。

「って、このことを早くスズさんに知らせないと……!」

「それなら大丈夫ですよ」

「あ、お母さん」

里の奥からスズさんが姿を見せた。

しかし、彼女一人ではなくて……

「わーい、タニアちゃんだ♪」

「よう、久しぶりだな。俺の娘も元気にしてるな」

「フィーニア、レインさんに迷惑はかけていませんか?」

「サクラよ、元気そうでなによりじゃ」

ミルアさん、レゾナさん、エルフィンさん、シグレさんが現れた。

特別話 宣伝その3

「ごきげんよう」

「ちわっす!」

イリスとティナが挨拶をする。

イリスは淑女らしく、優雅にお辞儀をしてみせた。

ただ、ティナは元気な笑みを浮かべて、「よっ」というような感じだ。

「おは、よう」

そんな二人の隣で、ニーナがぺこりとお辞儀をした。

「んー、相変わらずニーナはかわええなー」

「なでなでしたくなりますわね」

「ふぁ」

二人に頭を撫でられて、ニーナは恥ずかしそうに頬を染めた。

ただ、三本の尻尾はふわふわと揺れている。

うれしいのだろう。

「ニーナはふわふわもこもこやなー」

「ずっとこうしていたいですわ」

「あぅ」

「って、ちゃうねん!」

突然、ティナが大きな声を出した。

びくり、とニーナが震える。

「今日は、こうしてのんびりするために集まったんやないんや! 宣伝や、宣伝!」

「あら、なんの宣伝でしょうか?」

「それは……」

「わたし、達の漫画……新刊が、発売……するよ?」

「ウチの台詞!?」

宣伝を楽しみにしていたらしく、ティナはショックを受けた様子で叫んだ。

ぐぐぐ、とハンカチを噛んで悔しそうにする。

そんな様子を見たイリスは、やれやれとため息をこぼす。

「わたくし達で宣伝するのですから、ニーナさんが言っても問題はないでしょう?」

「でもでも、ウチが最初に言いたかったんや……」

「ごめん、ね?」

よしよし、とニーナがティナの頭を撫でて慰める。

さきほどと立場が逆転していた。

「それよりも、話を元に戻しましょう。ほら、ティナさん。元気出してくださいませ」

「うい」

「で……今回は、わたくし達の漫画の新刊が発売するのですね?」

「せやでー。なんと、次は6巻や!」

ティナは両手を使い、指を六本、立ててみせた。

「5巻を超えて、6巻なのですね」

「すごい、ね」

「10巻までの折り返しに入ったところやでー」

「夢の二桁、突入したいところですわね」

「がん、ばれ」

ニーナは、ぐっと小さな手を握る。

本人なりの応援のポーズだ。

かわいらしく、意気込みが伝わってくる。

「うんうん、ニーナはそのままでええんやで」

「そうですわね。そのまま、無垢なままでいてくださいませ」

「?」

なんのことだろう?

ニーナは、コテンと小首を傾げた。

「さて……」

ふと、ティナが真面目な顔を作る。

「今回の宣伝のために、ちょっとした余興を練習してきたんや」

「楽しんでいただけると幸いですわ」

ティナとイリスが並んで立つ。

ややあって、二人は笑顔で口を開いた。

「どもー、ティナやでー」

「イリスですわ」

「二人合わせてティナちゃんやでー」

「ちょっとお待ちください。わたくしの要素、ゼロですわ」

「そんなことないで。ほら、ちゃんが入ってるやろ?」

「わたくし、ちゃん付けで呼ばれたことないのですが……」

「ウチは心の中で、そう呼んでるでー」

「そうなのですか? なら、問題ありませんわ」

「じゃ、仕切り直して……どもー、二人合わせてティナ・ホーリやでー」

「ですから、わたくしの要素がゼロですわ」

「まあええやろ。どうでもええがな」

「名前はとても大事だと思うのですが……」

「いや、イリスのことがどうでもええねん」

「わたくし、大事な相方ではありませんの!?」

「砂糖よりは大切やな」

「ぜんぜん大切そうではありませんわ!」

「でも、塩よりは下やな」

「基準がわかりませんわ!」

「たぶん、大事やで?」

「もうええわ、ですわ」

「「ありがとうございましたー」」

二人がお辞儀をして……

カーン。

どこからともなく取り出した鐘をニーナが鳴らした。

失格、という意味だ。

「「なんで!?」」

「……だめ、だめ」

ニーナは、やれやれとため息を一つ。

それから、くるりと振り返る。

そしてお辞儀。

「『勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う』コミカライズ……6巻、10月7日発売……よろしく、お願いします」