作品タイトル不明
567話 勉強する最強種達
久しぶりの我が家。
その屋上に設置したハンモックに寝て、のんびりとする。
「……」
そっと、空に向けて手を伸ばした。
思い返すのは、西大陸での出来事。
もっと力があれば、この手にたくさんのものが掴めていたのだろうか?
そう考えずにはいられない。
理想を理想で終わらせないために。
時に、確かな力が必要となる。
西大陸の一件は、そのことを痛感させられた。
「強くならないとな」
まだその方法は不明だけど……
必ず強くなり、そして、あのようなことは二度と繰り返さないと誓うのだった。
「おぉ、ここにおったか」
「アルさん」
顔を動かすと、アルさんが屋上に上がってくるのが見えた。
あれから、アルさんは精霊族の里に帰らず、我が家に滞在している。
理由を聞くと、観光がしたいのじゃ、とかよくわからないことを言われた。
本当の目的は別にあるのだろうけど、今はまだなにも教えてもらえない。
「もしかして、俺を探していたんですか?」
「うむ。ちと、お主に相談があってのう」
「相談……ですか?」
なんだろう?
もしかして、魔族に関することだろうか?
自然と気が引き締まる。
そして……アルさんは、ひどく真面目な顔で告げた。
「妾の娘達と、その愉快な仲間達じゃが……バカではないか?」
「……はい?」
――――――――――
アルさん曰く……
カナデ達は頭が悪いのではないか? とのことだった。
一緒に過ごす中で、みんなのことを色々と知って……
その過程で頭脳レベルに疑問を持ったらしい。
みんな、読み書きは問題ない。
ただ、計算となると半分が怪しい。
歴史の知識や学術的な知識になると、さらに怪しい。
マナーともなれば壊滅的。
そんな現状を知ったアルさんは、このままでいいのだろうか?
最強種といえど、ある程度は、人間と共存していかなくてはいけない。
それなのに頭が悪いと、下に見られてしまうかもしれない。
なるほど、と思った。
みんなの力はすさまじいけど、でも、勉強はした方がいいかもしれない。
王都でも通用するほどの学力を身につける必要はないと思うが……
ある程度は学んだ方がいいと思う。
そして、俺はアルさんに協力をすることに。
――――――――――
「……と、いうわけで。今日は一日、勉強の時間にしようと思う」
「人間の世界の言葉で言うと、臨時学習院というヤツじゃな。妾とレイン、そしてティナとノキアが講師となって、色々と教えてやるのじゃ」
「「「えええぇ……」」」
大部屋にみんなを集めてそう言うと、とんでもなく嫌そうな顔をされてしまった。
特に、カナデとルナ。
黒い悪魔を見た時と同じくらい、眉をしかめている。
「私、勉強なんてしたくないよ」
「うむ。そんなもの我に必要ないのだ!」
「阿呆」
「ふにゃん!?」
「ふぎゃん!?」
アルさんのげんこつが二人に落ちた。
ガツン! とかなり良い音がしたのだけど……
見た目に反して、アルさんはかなりの力持ち?
「知識は宝じゃ。ものを多く知っていることで得られるもの、助けられるものがある。可能性を広げることができる。学んでおいて損はないぞ」
「そういうものなのかな……?」
「むう、我にはわからぬぞ……というか、みんなはいいのか?」
イヤと明言しているのはカナデとルナだけで、他のみんなはおとなしく椅子に座り、机の上にノートを開いていた。
「まあ、勉強はめんどくさいけど……そういうこともちゃんとやってね、って母さんがうるさいのよね」
「ソラは、元々勉強は好きです。色々な知識が増えていくことが楽しいです」
「がん、ばる」
「ふふ、一人前の淑女になるためには、色々と学ばないといけないことが多いですわ」
「ボクはどっちでもいいかな。とりあえず、楽しそうだからこっちで」
「わ、わらひはまだまだまだまだなので、が、ががが、ぎゃんばりまふぅ!」
「オンッ!」
やる気の差はあるものの、他のみんなは特に問題ないらしい。
っていうか、サクラも勉強を……? 大丈夫なのか?
「そもそも、学のない者が嫁げば周囲にバカにされるぞ?」
「「っ!?」」
「挙げ句、旦那もバカにされるな。そのようなことで、お主らは問題ないのか?」
「「ある!!」」
「ならば、しっかりと勉強せい」
「「イエス、マム!!」」
「うむ、良い返事じゃ」
えっと……そこで俺をダシに使わないでください。
内容が内容だけに、ツッコミを入れることができない。
「では、これから我ら四人が講師となり、色々なことを教えていくのじゃが……その前に、皆には着替えてもらおう」
「着替える?」
「これじゃ!」
ババン! というような感じで、アルさんが服を取り出した。
紺のスカートに白の上着。
それと、リボン。
「なんですか、それ?」
「うむ。これはカグネに伝わる、伝統の衣装……せーらー服、というヤツなのじゃ。勉強をする時は、これを着ることがならわしらしいぞ」
この時、この場にいるみんなの意見が一致した。
「「「うさんくさい……」」」