作品タイトル不明
566話 最強無敵万能メイド
「にゃーん♪」
久しぶりの我が家。
家に帰るなり、カナデはリビングのソファーにダイブした。
「懐かしい我が家の匂い!」
「なんでカナデが懐かしいとか言うのよ。それ、あたしらのセリフでしょ」
「でもでも、私も少しは王都にいたし」
「まあ、わからないでもないな」
ちょくちょくどこかへでかけて……
最近はあまり家にいることがないのだけど、それでも、ここは大事な場所だ。
家があるからこそがんばれるというか、みんなとの思い出の場所というか。
戻るところがあるというだけで、いつでも元気になれるような気がした。
「それにしても……」
しばらく家を空けていたはずなのに、大して汚れていない?
というか、綺麗な気がする。
みんなもそのことに気がついたらしく、不思議そうに小首を傾げる。
「なんか綺麗なのだ?」
「おかしいですね? ソラ達は、それなりの時間、家を空けていたはずなのですが……」
「カナデさん達はしばらく家にいたと思いますが、それでも、王都にはそれなりに滞在していましたし……」
昨日も人がいたかのように、家は隅々まで綺麗だ。
ピカピカだ。
誰かが毎日掃除をしていたとしか思えないけど、でも、みんなは王都にいたわけで……どういうことだ?
「ふっふっふ」
ふと、不敵な声が聞こえてきた。
その声の主は……ティナだ。
「ついに、うちの秘められた力を明かす時が来たようやな」
「「な、なんだってー!?」」
ノリの良いソラとルナだった。
「うちは、常々思うてたんや。レインの旦那が言ったように、うちらはけっこう家を空けることが多い。その度に家が汚れてしまう。そんなんいやや! メイドとして見過ごすことはできん!」
「確かに、綺麗な方がいいね」
「でも、それはどうしようもないんじゃないかな?」
「どうしようもないことをどうにかする……そうすることで、常に人は進歩してきたんや!」
「おー」
パチパチとリファが拍手した。
感銘を受けたのなら、せめて無表情はやめてあげて。
「うちは何度も何度も考えて、繰り返し研究をして……そして、ついに完成させたんや! その成果がコレや!」
ティナが指差した先、そこには……
「ぴゃあ!? ほ、ほうきと雑巾が勝手に動いていますぅ……?」
「ぐるるる……オンッ、オンッ!」
フィーニアが言うように、誰も使っていないはずなのにほうきと雑巾が動いていた。
ほうきは床を掃いて、雑巾は窓や棚を拭いている。
その奇怪な光景にフィーニアは怯え、サクラは敵か!? と吠えていた。
「これは……もしかして、魔力でほうきや雑巾を操っていますの?」
「すぐに気づくとは、さすがイリス。目が高いなー」
「鮮度のいいお魚を見つけた時のように言われても……」
「でも……すごい、ね」
「これは魔法なのか? むう……我は、このような魔法は見たことも聞いたこともないのだ」
「正確に言うと、魔法ってよりは幽霊の力なんやけどね。魔力を注いでおくことで、あらかじめセットしておいた行動をしてくれるんや」
「それを利用して、あたしらがいない時でも掃除ができていた、っていうわけね」
「これ、もしかしてもしかしなくても、大発明じゃないかな?」
カナデの言う通り、とんでもない発明だ。
精霊族が知らない魔法を開発するなんて、普通はできることじゃない。
「ティナ、これってどうやって開発したんだ? 俺も気になるんだけど」
「んー……具体的に説明するっていうのは難しいなー。うち、わりと直感で動いて、閃きに任せて行動するタイプやねん。勘に任せてこねくりまわしていたら、いつの間にかできたんや」
「素直にすごいな……」
「ティナは、カナデと同じ脳筋だと思っていたのだ」
「なんか私の扱いが最近ひどい!?」
「ふっふっふ、もっと褒めてもええんやでー」
褒められたティナは、得意そうな顔で胸を張る。
「ティナ、すごいです。ソラはティナのことを尊敬します」
「うむ。まさか、魔法で先を越されるなんて思ってもいなかったのだ。すごいのだ」
「えっと……」
「ティナ……すごい、ね」
「すごい、かっこいい、さいきょー」
「ティナさん、わ、わたしなんかと違って、すごくすごいです……!」
「うっ……」
年少組のキラキラとした視線。
それを受けてティナが怯む。
自分はがんばった。
しかし、幼い女の子たちにすごいと言わせて、それでいいのだろうか?
そんなことをしたら、なんかこう、大人としてダメではないか?
そんなことを考えている様子で、葛藤の表情を浮かべる。
「オンッ! オフオフ……クゥーン」
「あああっ、わんこにまで尊敬されてもうた!? やめてー、うちをそんな目で見んといてー!? 褒めてもええとか、ちょっとした出来心やったんやー!?」
頭を抱えて丸まり、羞恥に悶えるティナ。
そんな彼女を見て、カナデが不思議そうな顔に。
「なんで、ティナはあんなに恥ずかしがっているのかな?」
「メイドだから、ではないでしょうか?」
「イリス、どういうこと?」
「メイドはなにをしても、それが当たり前。できて当然ですわ。それなのに、当たり前のはずのことで褒められたら、それはもうむずがゆくなるのでは?」
「にゃるほどー」
メイドは複雑なんだな。
俺達はそんなことを思い、労るような視線をティナに向けた。
「その視線もやめてやー!?」
「あ、ごめん」