作品タイトル不明
564話 また
王城を後にしようとして……
思わぬ人に呼び止められてしまう。
「レインさま」
「えっ、サーリャさま!?」
聞き覚えのある声に振り返ると、第三王女の姿が。
慌てて頭を下げようとするが、それは手で制止されてしまう。
「私はただ、レインさま達をお見送りに来ただけですので」
「サーリャさまが?」
「お兄さまからレインさま達が来ていると聞いて。本当ならもっと早くにお会いしたかったのですが、気軽に顔を出せるような雰囲気ではなくて」
「そう、ですね」
魔族の件に関しては、今のところ王とユウキしか知らない。
今後、信頼できる者のみに情報を共有するらしいから、そのうちサーリャさまにも知らされるだろう。
ただ、その前に勝手に話をするわけにはいかない。
あと、色々とありすぎてサーリャさまに挨拶をする機会を完全に逃していた。
「改めて、お久しぶりです。元気にされていましたか?」
「はい、なんとか」
「レイン、ウソはいけないよ?」
「寝込むくらい無茶をしたじゃない」
「うっ……」
カナデとタニアに暴露されてしまう。
それを聞いたサーリャさまがジト目に。
「レインさまのそういうところは、まったく変わっていないのですね。みなさんがとても心配すると思うので、ほどほどにしていただければと思うのですが」
「うむ、よくぞ言った!」
「もっと言ってやってください」
ルナとソラまでサーリャさまに加勢してしまう。
この件に関しては俺が完全に悪いので、ひたすらに気まずい。
「まあ、みなさんにこってりと絞られたようなので、私からは特に言うことはありません」
「あはは……」
「ただ」
サーリャさまは、そっと近づいて……
「レインさまを慕う一人の女性として、あまり心配をさせないでくださいね?」
甘い声でそうささやいた。
「っ!?」
「ふふ」
してやったりというサーリャさま。
なんていうか、色々な意味で侮れない人だ。
「あっ、レイン。それに、みなさんも」
今度はユウキがやってきた。
俺達を探していたらしく、少し息が切れている。
「よかった、まだ城を出る前で」
「どうしたんだ? あ、いや。どうしたんですか?」
「言い直さなくていいよ。あと、挨拶もせずに出ていこうとするのはどうかと思うけど?」
「あー……いや、挨拶はしようと思っていたんだけど、ユウキは忙しいみたいなことを城の人に聞いて」
「確かに忙しいけどね。でも、大事な友達の見送りくらいは、キッチリとするよ」
「ごめん、俺が悪かった」
確かに、不義理を働くところだった。
ユウキが王族だから、いらない気遣いをしてしまっていたのかもしれない。
「というか、レインはサーリャと仲が良さそうだね?」
「そうか?」
「うん、そう見えるよ」
「はい、お兄さま。私とレインさまは、一時、苦楽を共にした仲間のようなものですわ」
「むう……」
なぜかユウキが難しい顔に。
「レイン」
「な、なんだ?」
「妹をよろしく頼むよ。しっかりしてて、とても優しい子だから」
「なんの話をしているんだ……」
サーリャさまのそういう感情を見抜いているのだろうか?
さすが兄妹。
妙なところで鋭い。
「まあ、そういう話はまた今度しようか」
「そんな機会あればいいけどな」
「なれけば作ればいいんじゃないかな? 予定がなくても、また王都に来てよ。その時は僕もサーリャも時間を作るから、どこかへ遊びに……行くのは難しいから、一緒にお茶でもしよう」
「楽しみにしていますね?」
「……そうだな、それもいいな」
ゆっくりと話をして。
お茶とお菓子を楽しんで。
そんな穏やかな時間を過ごしたいと思う。
色々あったから……
本当に色々とあったから、今度ユウキと過ごす時間はのんびりとしたものがいい。
「レイン」
ユウキが笑顔で手を差し出してきた。
俺も笑顔を返して、その手をしっかりと握る。
「また」
「ああ……また」
それは再会の約束だ。
すぐに果たされるのか。
しばらく先になるのか。
それはわからないが……
必ず果たされるだろうと、そう確信するのだった。