作品タイトル不明
553話 真アルテラ戦・その4
「このっ……!」
ニーナとイリスの見事な連携に、アルテラが怒りに表情を歪めた。
しかし、再び突撃するようなことはない。
そんなことをすれば、またニーナの転移に飲み込まれてしまう。
わりと完璧な連携だ。
というか……
ノキアさんの戦い方を真似たのだろうけど、ニーナも同じことができるなんて。
これ、どうやっても脱出できない、完璧な追い込み方ではないだろうか?
「リースちゃん!」
「わかりました」
リースも動くか。
魔族なので、高い身体能力と魔力を有しているだろう。
でも、それだけではないはず。
アルテラが炎を操り、自らも炎と化してしまうように……
なにかしらの能力を有している可能性が高い。
どうする?
まずは、相手の出方を窺うか?
それとも……
「ブースト!」
あえてこちらから突っ込むことにした。
敵の能力がわからないと、一気に窮地に追い込まれるかもしれない。
みんなが傷つくかもしれない。
そんなことになる前に、この身で確かめる。
身体能力を強化して、体を前に倒すようにして駆ける。
手に持つ武器はクサナギ。
燃料が切れて、魔力も残り少ないため、ただのファーストフォームだ。
それでも切れ味は抜群。
相手が魔族だとしても、それなりの威力を発揮してくれるはず。
「オンッ!」
一緒に行くよ! という感じで、サクラが並走する。
一瞬迷うものの、サクラは近接戦のエキスパートだ。
滅多なことにはならないだろうし、いざという時は、俺がフォローすればいい。
そしてやっぱり、誰かが隣りにいるというものは頼もしい。
「そろそろ、レインさんには退場してもらいましょうか」
リースは微笑みつつ、楽器を奏でるように指先を動かした。
なにかが来る!
なにが起きても対処できるように、最大限の警戒をしつつ、さらに加速。
しっかりとリースを注視して、一挙一足を見逃さない。
見逃していないはずなのに……
「え?」
気がつけば、リースが目の前にいた。
すでに手の平をこちらに向けていて、魔力を収束させている。
「レイン!」
遅れて駆けていたユウキが、体当たりをするように飛び込んできた。
俺とユウキとサクラ、一緒になって地面を転がり……
その直後、リースの手の平から黒い光が放たれる。
見たことはないけれど、攻撃魔法で間違いないだろう。
「ありがとう、ユウキ。助かった」
「どういたしまして。それにしても……」
「オフゥ……?」
いつの間に接近されたんだ?
遠くから見ていたであろうユウキもわからないらしく、怪訝そうな顔をしていた。
「あら、避けられてしまいましたか。なかなかやりますね」
「今、なにをした?」
「素直に切り札の正体を明かすとでも?」
もっともな話だ。
「ファイヤーボール!」
ゴォッ!
こちらの不意を突くように、アルテラの炎が迫る。
それを魔法で迎撃した後、一度、ニーナ達のところまで後退した。
「ニーナ、リースがなにをしたかわかるか?」
「うう、ん……よく、わからない」
狐耳をペタンと沈ませて、ニーナが申しわけなさそうに言う。
もしかしたら、ニーナと同じように空間を操作したのではないかと思ったのだけど……
ニーナがまったくわからないと言うのなら、そうではないのだろう。
「ニーナが気にすることじゃないさ。イリスは?」
「申しわけありません……わたくしも、心当たりはありませんわ。しばらくは一緒にいたのですが、あの方が戦うところは見ておらず……」
「そっか。って、イリスも気にする必要はないから」
フォローするように、ニーナとイリスの頭を撫でる。
「ふぁ……!? こ、このなでなでは、なんて心地よく、絶妙なソフトタッチですわ……」
「オフゥ……」
サクラも、うらやましそうにしないでほしい。
「えっと……レイン? みんな? 今、戦闘中だからね」
「わ、悪い」
ユウキに軽く叱られてしまうものの……
ただ、ギリギリまで張りつめていた緊張の糸が、どこか緩んだような気がした。
うん、そうだな。
みんなが一緒だ。
そして、ユウキが隣にいる。
アルテラのことは絶対に許せないし、ここで討つという気持ちに変わりはないのだけど……
ただ、怒りに振り回されるのはやめにしよう。
ヴァイスと戦った時のように、怒りをコントロールして、湧き上がる力を己のものとする。
さきほどまでは、ギリギリのところまで追い詰められていたため、心の余裕がなかったのだけど……
みんなが一緒の今なら、できるはずだ。
「それにしても、リースさんの能力は不気味ですわね……」
「転移能力を持っているのかもしれない。俺とユウキとサクラが前衛。イリスとニーナとフィーニアは後衛。ただ、イリス達の方に一瞬で移動するかもしれないから、気をつけて」
「わかりましたわ」
「ん」
「ひゃ、ひゃい!」
「なら……もう一度、いこうか!」
俺とユウキはそれぞれ武器を構えて、サクラはグルルルと牙を剥き出しにする。
アルテラとリースも構えてみせた。
そして……
最後の戦いが開始される。