軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

554話 真アルテラ戦・その5

アルテラの炎は厄介極まりない。

その上リースは、ニーナの空間転移に似た不思議な能力を有している。

後手に回っていたら勝てない。

そう判断した俺は、先に動くことにした。

みんなを誘導するように先陣を切る。

体を前に倒すようにして、被弾面積を少なく。

その状態で、時折、左右にステップを踏みつつ、距離を詰めていく。

「ああもうっ、うっとうしいなあ!」

炎弾を連射するアルテラではあるが、それが一発も当たらず、苛立った声をあげた。

彼女の脅威的な能力に驚いて、ついつい勢いに飲まれてしまっていたが……

今になってようやく、ある程度の行動パターンを把握することができた。

攻撃する時は、そちらに一瞬だけ視線が動く。

回避行動をする際は、わずかに反対側の足が動く。

……などなど。

戦いの癖というものは誰にでもあり、アルテラにもあった。

それを、しっかりと観察することで、ある程度を見極めることができた。

みんなが来てくれて、ある程度の余裕ができたから、できたことだ。

改めて感謝しかない。

「穴を……開けて」

「来たれ、嘆きの氷弾……ですわ」

「わ、わらひもっ!」

ニーナが亜空間に繋がる穴を開いて、そこにイリスとフィーニアが攻撃を叩き込んだ。

アルテラとリースの周囲に穴が繋がり、そこから二人の攻撃が飛来する。

「くっ、トリッキーな攻撃ですね!」

リースは顔をしかめつつ、回避行動に専念していた。

わざわざ回避するということは、ニーナのように、亜空間を操ることができるわけじゃないのか?

そうなると、彼女の能力はいったい……?

いや。

今は、考えるのは後にしよう。

「はぁあああ!」

「せぇえええ!」

距離は十分詰めることができた。

俺がアルテラに、ユウキがリースに斬りかかる。

「そんなもの!」

アルテラは、とっさに炎の剣を生成して、クサナギの刃を受け止めた。

一方で、リースは後ろに跳ぶことでユウキの双剣を避けた。

さきほどのような瞬間移動は、何度も使えないのだろうか?

使うための条件が定められているか、それとも、魔力消費が大きいのか……

いや。

そう見せかけたブラフで、ここぞという時に、能力を使い手痛いカウンターを繰り出してくるかもしれない。

今はまだ、力を温存していると考えた方がいいだろう。

そのことはユウキも理解しているらしく、決して深入りはせず、様子見の攻撃を連続で繰り出していた。

双剣だから、とにかく手数が多く、リースの動きを探るのにはちょうどいい。

「このっ! いい加減、燃えちゃえ!」

「わかりました、ってやられるわけにはいかないんだよ!」

「生意気、生意気、生意気! 人間のくせに!」

ゴォッ! と、アルテラがまとう炎がさらに大きくなる。

余力を残していたというよりは、怒りで限界を突破しているような感じだ。

すさまじい力だ。

さすが四天王、と称賛するべきか。

「今度こそ、これで燃えちゃえ!」

アルテラの全身が燃え上がり……

その炎が右手に収束された。

アルテラは右手を空に向けた。

その先に炎が移り、どんどん大きくなる。

それは、さながら太陽のようだ。

「プロミネンスフレア!」

地上に顕現した太陽が落ちてきた。

なんていう化け物。

こんな攻撃、直撃したら骨も残らない。

かといって、避けることも防ぐことも難しい。

でも、俺は心配はしていなかった。

「い、いきまひゅ!」

背中に炎の翼を生やしたフィーニアが突撃してきた。

そのまま、アルテラが生み出した太陽に向かい……

手を突き入れる。

たったそれだけのこと。

それだけのことで、アルテラからコントロールを奪い、小さな太陽を反射してみせる。

そう。

彼女は、炎を操ることに長けた最強種。

炎に関することなら、たとえ四天王にも引けをとらないだろう。

つまり……

フィーニアは、アルテラの天敵なのだ。

「なぁ!?」

とっておきの攻撃を押し返されるとは思っていなかったらしく、アルテラが目を大きくして驚いた。

それから、慌てた様子で周囲を見る。

アルテラの視線の先には、リースや他の魔族達が。

「ああもうっ、本当にイライラする! プロミネンスフレア!」

いくらアルテラといえど、一度繰り出した攻撃をキャンセルすることはできないのだろう。

だからといって、フィーニアのように自由自在に操ることもできない。

なので、選んだ選択肢は相殺。

同じ攻撃を繰り出して、小さな太陽同士をぶつけた。

カッ!!!

熱波と衝撃が荒れ狂う。

「くっ……重力操作!」

とっさに、斥力場による簡易的な盾を生成して、みんなを守る。

それでも熱を完全に遮断することできず、サウナの中にいるような気分だった。

ややあって炎が収まり、視界が元に戻る。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」

アルテラは肩で息をしていた。

リースもそれなりの怪我を負っていたが、それでもまだ健在だ。

ただ、他の魔族はそうもいかなかったらしい。

全滅というわけではないが、あちらこちらで攻撃に巻き込まれ、倒れているのが見えた。

「このっ、よくも……!!!」

「散々、僕達人間のことをなぶっておいて、自分達がやられると怒るんだね」

激怒するアルテラに一歩も引くことなく、ユウキが真正面から言い返した。

俺と同じように、ユウキも相当頭に来ているのだろう。

「なに、それ……? 人間なんて、いくら死んでも構わないの! 邪魔だし、うっとうしいし、憎たらしいし……それに、生きているだけで害なんだから! 存在そのものが罪にまみれているんだから!」

アルテラは、さらなる憎悪を瞳に宿して、俺達を睨みつけてきた。

その瞳に宿る憎悪は……どこか、過去のイリスと似ていた。