作品タイトル不明
552話 真アルテラ戦・その3
「もう、みんな役に立たないんだから!」
少し離れたところで起きた惨状を見て、アルテラが舌打ちした。
一方の俺達は、アルさんとノキアさんのとてつもない力を見て、唖然としているのだけど……
でも、そうか。
アルテラは、あの二人の力を見てもまだ、余裕を保つことができるのか。
それはつまり、それだけの力があるということ。
やはり、とんでもない相手だ。
「リースちゃんは、あんな役立たずとは違うよね? ちゃんと、私のためにがんばってくれるよね?」
「はい、もちろん」
「うんうん、期待しているからね」
俺達の相手は、アルテラと……そして、リースという魔族。
偶然の一致ということでなければ、彼女がモニカの主のはずだ。
そのリースがこちらを見て……
イリスのところで視線が止まる。
「あら、すっかり元気になったみたいですね」
「ふふ、その節はどうも」
「回復祝いを贈った方がよかったでしょうか?」
「お気遣いなく。代わりに、お礼を差し上げたいですわ」
「お礼ですか?」
「ええ、お礼ですわ。わたくしに対して、色々としてくれたお礼……たっぷりと、全力でもてなして差し上げたいですわ」
「あらあら」
「ふふ」
イリスとリースは笑っているのだけど、目は笑っていない。
すでに水面下で激しい攻防が繰り広げられているかのように、視線と視線が激突して、バチバチと火花が散っていた。
「イリス、冷静にな?」
「わ、わたしなんかが一緒にいても、み、ミジンコくらいにしか役に立てないと思いますが……!」
「がんばる……よ?」
「オンッ!」
「……」
みんなに声をかけられて、イリスは目を丸くした。
ややあって、小さく優しく笑う。
「ふふ」
「どうしたんだ?」
「いえ……わたくしは今、一人ではないと強く実感することができまして。仲間がいる……誰かがいるということは、とても素晴らしいものですね」
「ああ、もちろんだ」
こんな時だけど……
いや、こんな時だからこそ、俺達の絆がさらに強くなることを実感した。
「……ちょっとレインが羨ましいな」
「ユウキ?」
「僕も、もう少し、レインと早く出会っていたら……」
「そんなことはない」
ユウキの言いたいことを察して、先を言わせない。
「ユウキも、もう仲間の一員だ」
「……レイン……」
「立場は違うし、背負っているものも違うと思う。でも、今、胸に抱えている想いは同じのはず。同じ怒りを覚えているはず」
「……うん、そうだね」
「決着をつけよう」
「やろう」
俺とユウキは、それぞれ武器を構えて……
他のみんなも、いつでも動けるように構えた。
そんな俺達を見て、アルテラが舌打ちする。
「あーもう……うざいうざいうざい、すごくうざいなぁっ!!!」
ゴォッ! と紅蓮の業火が舞い踊る。
それは、アルテラの怒りを表しているかのようだ。
「人間なんか、私達のエサにすぎないんだから! それなのに生意気なことばかり言うし、わがままだし……燃えちゃえええええっ!!!」
先に動いたのはアルテラだ。
両手を左右に出して、その先に炎を生み出していく。
豪炎が渦を巻くようにして手の平に収束する。
そして、両手を合わせて二つの炎を一つに。
激しく揺らめく業火の色が変わり、漆黒へと変貌する。
それはさながら、地獄の業火。
「イフリートディザスター!」
それは、今さっきアルさんが見せた超級魔法だった。
炎が生き物のように荒れ狂い、命を喰らうため、猛烈な勢いで俺達に迫る。
「ほ、炎ならわひゃひにまかひぇてくらひゃい!!!」
フィーニアが前に出た。
噛みまくっているせいで、なにを言っているかよくわからないのだけど……
うん。
たぶん、わたしに任せてください、ということだろう。
なので、任せる。
フィーニアを……仲間を信じる。
「え、えいっ!」
大気を震わせて、触れるもの全てを燃やし尽くして迫る豪炎に対して、フィーニアは真正面から手を突き入れた。
瞬間、ピタリと炎が止まる。
漆黒の炎が普通の赤へ戻り……
そして、分解されて消えた。
「なっ!?」
あっさりと攻撃が無力化されてしまい、アルテラは目を大きくして驚いた。
俺も驚いた。
不死鳥族のフィーニアは、治癒能力に長けていることは知っていたが……
まさか、こんなことができるなんて。
でも、考えてみれば当たり前か。
エルフィンさんは治癒だけではなくて、自由自在に炎を操り、苛烈な攻撃を繰り出していた。
ならば、炎に関することならば、防御もほぼほぼ無敵と考えるのが当然だろう。
「このっ……生意気! 生意気生意気生意気!!!」
攻撃をあっさりと防がれて、プライドが傷ついたのだろう。
激高した様子のアルテラが突っ込んできた。
体から吹き出す炎を推進力として利用しているらしく、すさまじい加速だ。
風よりも速いのではないか?
しかし……
「あっち……行って」
あらかじめ罠を設置していたのだろう。
アルテラは、ニーナが開いた亜空間の扉に突っ込むハメになり、再び後方に戻されてしまう。
「来たれ、嘆きの氷弾」
そこに、イリスの召喚魔法が炸裂した。
異界から呼び出した氷を雨あられと降らせて、絨毯爆撃を見舞う。