作品タイトル不明
551話 真アルテラ戦・その2
ギガブランドのコピーが五体。
それに加えて、十を超える魔族の群れ。
それは、絶望的な戦力だ。
これだけの数が揃えば、街の一つや二つ、簡単に陥落してしまう。
普通に考えて、抗うことはできないのだけど……
しかし、普通ではない存在がここにいた。
「ふむ、有象無象がたくさんおるのう……ハエや蚊と同じで、とてもうっとうしいわい」
「アル、油断はいけませんよ?」
「わかっておるわい。敵と判断したのならば、全力で殲滅あるのみじゃ」
不敵な笑みを携えているのは、アルだ。
すでに背中に光の羽を展開していて、戦闘態勢を整えていた。
一方のノキアは、全身に淡い光をまとっていた。
こちらも、戦闘態勢はバッチリだ。
「おおう……母上はやる気たっぷりなのだ」
「ノキアさんも、かなりやる気みたいですね……」
二人と一緒に行動することにしたソラとルナ。
アルとノキアから発せられる闘気に押されるような感じで、たらりと汗を流していた。
アルとノキアは、それ相応の歳。
戦闘は辛いかもしれないと、ソラとルナは一緒に行動することを選んだのだけど、余計なお世話だったかもしれない。
そんなことを思うくらい、アルとノキアは、すさまじい闘気を放っていた。
「死者の複製とは……ちっ、つまらぬことをしてくれる」
「すみません。今、思い出しました……あれは、私の失われた記憶から盗まれた技術ですね」
「なに、ノキアが気にすることはないぞ。死者の複製は、妾達、精霊族の技術もないと成功することはないからのう。大方、モナ辺りがいたずらしたのじゃろうて」
「ならば、私達、共同の責任ということで」
「うむ。敵の研究内容、全てを潰してやりたいが……まあ、それは後回しじゃな。まずは、研究成果を叩き潰すとしよう」
「それから、悪用する連中も、ですね」
普段は、わりとのんびりしているアル。
そして、穏やかなノキア。
そんな二人が、目をギラリと光らせて、すさまじい表情を作る。
「おおぅ……こ、怖いのだ」
アルの怒り顔はしょっちゅう見ているルナではあるが、本気の怒り顔というものは、ほとんど見たことがない。
その威圧感、覇気はソラを軽く超えていた。
ぶるりと震えてしまい、思わず、下半身が色々と緩んでしまいそうになる。
「こ、これがノキアさんの本気ですか……」
一方で、ソラもノキアの怒りに怯えていた。
普段、穏やかな人ほど怒らせると怖いと聞くが、ノキアはその典型的な例だ。
ニーナを甘やかしている時の優しい顔はどこへやら。
今のノキアは、鬼のようにすさまじいオーラを放っていた。
「いきますよ、アル」
「うむ」
ギガブランドのコピーを先頭に、魔族達が攻撃を開始した。
巨体を盾にすることで攻撃を防ぎ、接近。
そして、一気に殲滅しようという考えなのだろう。
しかし、この二人の前では、それは稚拙な作戦でしかない。
「近づかないでくださいね?」
ノキアはくるりと手を回して、亜空間に繋がる扉を生成した。
それを使い、ギガブランドのコピー達と魔族達、まとめて遠方へ飛ばす。
「そして、あなた達は消えてください」
ノキアは、もう片方の手をくるりと回した。
それと同時に、ギガブランドのコピーが二体、消えた。
突然、味方が消失したことで、魔族達が動揺して足を止める。
ソラとルナも、なにが起きたの? と目を白黒させる。
驚く魔族達に向けてノキアは、ビシッと空を指差した。
つられて魔族達が上を見ると……
そこには、消えたはずのギガブランドのコピーが。
コピー達は、遥か上空に転移させられていたのだ。
コピー達が空から落ちてきた。
超高高度から落ちてきたらしく、かなりの速度だ。
それは、さながら隕石のよう。
ゴガァッ!!! という轟音と共に着弾して、ギガブランドのコピーが、二体とも粉々に砕け散る。
着弾地点にいた魔族達も、半数が巻き込まれて爆散する。
いかに頑丈な体を持っていたとしても、遥か上空……星の高さから落とされてはどうしようもない。
「おおぅ……なんて、えげつない攻撃なのだ……」
「あれ、飛べない者からしたら、必殺の攻撃では……?」
あまりといえばあまりの攻撃方法に、味方であるソラとルナでさえ引いていた。
ただ、これはまだ序の口。
「では、妾の番じゃな」
アルが前に出る。
その口元には、ニヤリとした不敵な笑みだ。
例えるなら、そう……
ゴミ掃除をして綺麗にするか、というような、そんな笑みだ。
「イクシオンブラスト」
何気なく。
本当に何気ない感じで、あっさりと簡単に、予備動作なしに、アルは超級魔法を解き放つ。
異界の幻獣が召喚されて、極大の雷撃が撒き散らされた。
紫電があちらこちらを迸り、残りのギガブランドのコピーを飲み込む。
だがしかし。
コピーとはいえ、四天王。
超級魔法の一撃で沈むことは……
「イフリートディザスター」
超級魔法、二発目。
紅蓮の業火が舞い踊る。
炎は意思を持つ生命体のように荒れ狂い、次々と魔族達に食らいついていく。
ギガブランドのコピー達にも突撃をして、土を溶かすほどの猛火をぶつける。
「ガルーダブラスト」
「「三連発!?」」
ソラとルナも心底驚く、超級魔法の三連発。
雷と炎の乱舞に風が加わる。
雷と炎が踊る嵐が完成した。
その威力は圧巻の一言に尽きる。
ギガブランドのコピー達は、数秒、持ちこたえたものの、それが精一杯。
三重の極大魔法から逃れる術はなく、その体が崩壊していく。
それは魔族達も同じで、次々と倒れ、その体が塵と化していく。
嵐は一分ほど続いて……
ようやく収束した頃には、ギガブランドのコピーは全滅。
魔族達も半分に減っていた。
「む? まだ残っておるか。手加減をしたつもりはないのじゃが……むう、歳はとりたくないものじゃな」
「すぐに掃除をしましょう。そして、ニーナやレインさんの手伝いにいかないといけませんね」
「「……」」
あっさりとそう言ってのける二人の偉大な母に、ソラとルナは、もう言葉が出てこないのだった。