作品タイトル不明
547話 全力全開
「これでも、ダメか……」
「ちょっと、危ないかな……?」
俺とユウキの切り札を同時に叩き込む。
今の状態で、考えられる最大の攻撃なのだけど……
アルテラは倒れていない。
それなりのダメージを負っているようではあるが、逆に怒りを買ってしまったみたいだ。
「私にここまでさせるなんて……許せない、本当に許せないんだから! 殺す!!! その体、全部消し炭にして、魂は燃やし尽くしてあげるんだからぁっ!!!」
アルテラから放たれる圧が急激に増していく。
息苦しささえ覚えるほどで、殺気が質量を持っているかのようだった。
ゴォッ! と、アルテラの足元から炎が立ち上がる。
それは、主を守る鎧のように、アルテラに絡みついていく。
さらに、アルテラの髪が豪炎に変わり……
全身に炎をまとわせて。
髪を炎と化して。
アルテラは、今、本気となった。
「こうなったら、もう、あなた達なんて終わりなんだから。一瞬で、刹那で、瞬間で焼き尽くしてあげる……キャハハハハハッ、死ねぇ!!!!!」
アルテラが地面を蹴り、こちらに迫る。
それなりの距離があったはずなのに、一瞬で目の前に迫るほどの超加速だ。
「まず一匹っ!!!」
「くっ!?」
アルテラの狙いはユウキだ。
彼の真似をするかのように、豪炎で剣を生成して、一気に振り下ろす。
ユウキは両手の剣を交差させて、盾のようにして受け止め……
「受けるな! 避けろっ!!!」
「っ!!!」
俺の声に反応して、ユウキは反射的に後ろへ跳んだ。
体を退避させることには成功したが、一本の剣がアルテラの炎に飲み込まれてしまう。
豪炎を受けた剣は、数秒、耐えるものの……
すぐに限界が訪れてしまい、ビシリと鈍い音を立てて折れてしまう。
いや……溶けてしまう。
「なんて威力だ……!」
ユウキは顔をしかめつつ、残ったもう一本の剣で攻撃をしかける。
アルテラの攻撃力は圧倒的だ。
しかし、それに怯え、逃げていては話にならない。
勢いを止めるためにも、多少でもダメージを与えないといけない、というユウキの判断は正しい。
しかし……
正しいはずの判断が悪手と思えてしまうほど、目の前の現実は……アルテラの力は桁外れだった。
ユウキの振るった剣は、なにも斬ることなく、アルテラをすり抜けてしまう。
確かに直撃したはずなのに、しかし、傷一つついていない。
「キャハハハっ、そんな攻撃効かないよ? 効かない効かない、効かないの!!! 今の私は、炎化……体のぜーんぶが炎になっているんだよ。剣で炎が切れる? 切れないよね。今の私を倒すには、魔法とかさっきの必殺技とか、そういうのじゃないと無理なんだよ。まあ……二度と撃たせないけどねぇ!!!」
「くっ……!?」
「ユウキ!!!」
アルテラは炎を全身にまとい、ユウキに向けて突撃をする。
単純な攻撃だけど、それ故に回避が難しい。
防御もできない。
回避もできない。
なら……!
「重力操作!」
咄嗟に、ユウキにかかる重力を横に変更。
さらに、倍にした。
巨人に殴られたかのように、ユウキが吹き飛んで……
ギリギリのところで回避に成功。
すぐに重力を元に戻して、俺もユウキのところまで退避する。
「ありがとう、レイン」
「どういたしまして」
「ただ、心臓に悪いから、事前に教えてほしかった……」
「そうしたいところだけど、そうするだけの時間がないからな」
「ふーん……こんな時なのに、そんな軽口が叩けるんだ? お兄ちゃん達、バカなの? ねえ、バカなの? それとも、恐怖で心が壊れちゃったのかな?」
アルテラは余裕の笑みを浮かべていた。
体は燃えているのに、凍てつくような眼をこちらに向けていた。
たぶん、俺達をどう料理するか。
どういたぶるか、あれこれと考えているのだろう。
かわいらしい見た目に反して、中身は最悪だ。
「……レインは、さっきの攻撃はまだ使える?」
「……もう予備のカートリッジがないから、キツイな。ユウキは?」
「……予備の剣ならあるけど、本当にただの予備だから、さっきの威力は出せないかな」
「……つまり、ヤツを倒す手段はない、っていうことかな?」
「……逃げることも、難しいだろうな」
絶望的な状況を確認して。
それから、互いに顔を見る。
「ははっ」
「ふふっ」
こんな時なのに、自然と笑みがこぼれていた。
それは、単なる強がり。
決して絶望してやらないという、アルテラに対するせめてもの抵抗。
それが、笑うということだったのだけど……
示し合わせたわけでもないのに、俺とユウキは、同時に笑っていた。
考えていることは同じ、というわけか。
気が合うというか、共感を覚えるというか。
うん。
とても良い感じだ。
後で、おいしいものでも食べながら、色々な話をしたいな。
「そのためにも……」
俺は、クサナギを構えた。
ユウキは、予備の剣を抜いて、再び両手に剣を構えた。
「コイツを倒さないとな」
「そうだね」
圧倒的に俺達が不利。
それなのに、まったく戦意が衰えない……それどころか、より強い意思を見せる俺達を見て、アルテラは戸惑うように眉を潜める。
「まだ私に逆らうつもり? もうっ、わけがわからないよ……お兄ちゃん達は、ここで死ぬの。わかるでしょ? 私に負けるって、そう感じているでしょ?」
「いいや」
心が折れたら負けだ。
だから、俺はひたすらに己を強く見せる。
「負けるなんて、これっぽっちも思っていないな」
「うん、レインの言う通りだよ。僕達は、キミに勝つ」
「ついでに、その後ろにいる魔族達も蹴散らしておくか」
「そうだね、そうしようか」
「そんな強がりを……私に勝てるわけないの! ほら、こんなに私は強いんだから! それに、お兄ちゃん達の攻撃は私に通用しないんだからねっ」
「……ならば、これならばいかがでしょう?」