作品タイトル不明
545話 VSアルテラ・その2
「死んじゃえ」
凍りつくような声と共に、アルテラの指先から小さな炎弾が放たれた。
連射。
その数は数え切れないほどで、しかも、視認できないほどに速い。
さらに、何発も連射できる。
「くぅ!?」
俺とユウキは、咄嗟に、それぞれ左右に跳んで……
直後、ガガガッ! とさきほどまでいた地面に小さな炎弾が着弾した。
小さな穴がいくつもあいて、そして、炸裂。
地面が砕け、炎が舞い上がる。
なんていう威力だ、冗談じゃない。
炸薬つきの矢を連射しているようなもの。
あんなものが直撃すれば、その時点で終わり。
一発も食らうわけにはいかない。
「きゃはははははっ! ほらほら、ねえ、踊って! もっと踊ってみせてよ!? ねえ!!! 素敵なダンスを見せて!」
「くそっ、なんて質の悪い!」
「レイン、大丈夫!?」
「なんとか!」
炎の炸裂矢が雨あられと飛んでくるのだけど、着弾は許さない。
ティナと契約をしたことで得た能力……重力操作を使い、目の前に斥力場を生成。
それを盾として、炎の炸裂矢を防いでいた。
「ユウキは俺の後ろへ!」
「ありがとう!」
炎の炸裂矢は、その連射速度は脅威ではあるものの、威力はそこまで高くはない。
もちろん、直撃すればタダでは済まないのだけど……
弾いて軌道を逸らすだけで、直撃は避けることができる。
なんとか安全は確保した。
しかし、アルテラの攻撃が苛烈すぎて、反撃に移ることができない。
「あのさー、そうやって亀みたいに閉じこもられると、興ざめなんだけど? ずるいなー、ずるいなー。そういうことをされちゃうと……私も、意地悪したくなっちゃう。きゃはははっ!」
アルテラは、右手で炎の炸裂矢を連射しつつ……
左手の手の平を上に向けた。
その動きに呼応するかのように、火球が生成されていく。
最初は拳ほどの大きさ。
それが拳大になり、さらに成長して、どんどん、どんどん大きくなる。
最終的に、視界を塞ぐかのような大きさ……十メートルほどの超巨大な火球が生み出された。
炎の炸裂矢でこちらの動きを止めつつ、先程の炎弾を放つ。
同時に行動できるなんて、反則すぎる。
「なんてヤツだ……!」
「燃えちゃえ♪ プロミネンスフレア」
特大の炎弾が放たれた。
さながら、それは隕石のよう。
防ぐことは不可能。
回避に専念したとしても、範囲外に逃げ切れるかどうか。
さきほどと同じように、迎撃するしかない!
「イグニション……」
「弐之剣……」
俺達は、それぞれの必殺技を放つ体勢に移行して……
「それはダーメ♪」
しかし、アルテラは、炎の炸裂矢も並行して連射を続けて、俺達が動くことを許さない。
そうこうしているうちに、巨大な炎弾が目の前に迫り……
「っ!!!?」
大地が揺れて、衝撃波と炎が嵐のように荒れ狂う。
俺とユウキは抵抗することができず、紙のように吹き飛ばされた。
上下左右の感覚が消失する。
俺は今、前を向いているのか上を向いているのか、それすらもわからない。
全身を焼かれ、叩きつけられ、なぶられる感覚。
その激痛に振り回されて……
「ぐぅ!?」
何度か地面を転がり、岩に激突することで、ようやく止まった。
意識はあるが……
あるいは、気絶していた方がマシだったかもしれない。
そう思うほどの痛みが体中を駆け巡り、泣いてしまいそうだ。
「くううう……れ、レイン……!」
ボロボロになりつつも、立ち上がるユウキが見えた。
よかった、なんとか無事だったみたいだ。
俺も負けていられない。
まだまだ、いくらでも……戦える!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
「う、くぅ……ふぅ、はぁ……はぁ!」
俺とユウキは、それぞれの武器を杖にするようにして、なんとか体を支えていた。
そうでもしないと、足に力が入らず、そのまま倒れてしまうだろう。
なんてざまだ。
情けない。
でも……大丈夫。
まだ戦うことができる。
決して屈してやらないし……
このまま見逃すこともしない。
アルテラは……ここで倒す!
「うわー、うわー! すごいね、うん、本当にすごいよ。プロミネンスフレアを二発も使わせておいて、それでもまだ生きているなんて、初めて。えー、すごく不思議だなあ……ねえねえ、なんで死なないの? なんで倒れないの?」
「お前には、わからないだろうな……」
「え?」
「お前のように、命を弄ぶようなヤツにはわからないさ……お前と俺達じゃあ、背負っているものが違う!」
ここで俺達が倒れたら、次に狙われるのはみんなだ。
ユニアとアニだ。
捕まっていた人達だ。
俺達の後ろには、みんながいる。
守らなければいけない人達がいる。
グレイから託された想いと願いがある。
だから、倒れるわけにはいかない。
そんなことは、絶対に許されない。
俺とユウキは、二人だけで戦っているわけじゃない。
みんなの想いを背負い、それを糧としているんだ。
「なに、それ? 誰かのために戦う、っていうこと? そんなのバカみたいだよ。お兄ちゃん達は人間だけど、でも、私を相手にしても、まだ生きていられる力がある。なら、もっと好き勝手やるべきじゃないかな? 力を持つっていうことは、なにをしてもいいっていうことなんだから」
「違う!!!」
「っ!?」
強く叫ぶと、アルテラの肩がビクリと震えた。
「好きにしていいなんてこと、あるものか。力を持っているからこそ、大きな責任を持たないといけないんだ。それに……この力は、俺達だけのものじゃない。託された願いが力になっているんだ」
グレイのことを思い返した。
無念だっただろう、生きたかっただろう。
でも、彼は俺達に託してくれた。
これからのことを任せてくれた。
その願いと想いは、絶対的な力となる。
「それが……人間の力だ!!!」