軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

535話 一人の戦士の戦い

「おらぁあああああっ!!!」

迫りくるギガブランドの群れに、グレイは一人で突撃した。

無謀を通り越して、自殺としか思えない行為だ。

敵の数は、すでに十を超えている。

一体であれだけ苦戦した相手を、一人でどうにかできるわけがない。

生身で暴走する馬車の前に立ちはだかるようなもので、そのまま殺されてしまうのがオチ。

そうなることが当たり前なのだけど……

「甘い甘い甘いっ、甘いんだよ、お前らっ!!!」

グレイは倒れない。

ギガブランド達の猛攻を受けて、血が流れ、骨が折れて……

一瞬でボロボロになってしまうのに、それでも倒れない。

そして、反撃。

大剣でギガブランドの群れを薙ぎ払う。

どこにそんな力が隠されていたのか?

ギガブランドの群れはグレイの力に圧倒されて、まとめて吹き飛ばされていた。

「ははっ、その程度か、四天王さんよぉ。これなら、坊っちゃんやレインが出るまでもねえな……俺一人で十分だ!」

グレイは圧倒的な闘気を放つ。

それは視覚化してしまうほどのもので、彼の体からゆらりゆらりと光が立ち上がっていた。

いや……それは、闘気ではない。

命の輝きだ。

グレイは命を燃やすことで、圧倒的な力を得ていたのだ。

――――――――――

グレイ・サガは、孤児だった。

物心ついた時には一人で、親は知らない。

ゴミを漁り、時に盗みをして生きていた。

グレイは腕っぷしが強く、盗賊まがいの犯罪にも手を染めていた。

殺しはしていないが、金品を奪う。

そうでもしなければ生きることができない。

そんな彼は、ある日、ミスを犯す。

あろうことか、王族の馬車を襲ってしまったのだ。

腕が立つといっても、所詮は子供。

精鋭の騎士に敵うはずもなく、あっさりと撃退されてしまう。

あぁ……俺はここで死ぬのか。

つまらない人生だったな。

グレイは死を覚悟したが……

「ねえ。キミに仕事を頼みたいんだけど、どうかな?」

予想外すぎる展開が訪れた。

馬車に乗っていた幼い王子……ユウキは、なぜかグレイのことを気に入ったのだ。

彼を、自分専属の執事にしたい。

そんなことを言い出して……そして、本当に実行してしまった。

そうして、グレイはユウキの執事になった。

ユウキなんてどうでもいいが、生きていけるのならなんでもいい。

仕事ができるのならなんでもいい。

そんな心境だった。

そして、グレイは執事としてのイロハを叩き込まれることになるのだけど……

ガサツな性格をしているせいで、一向に執事として成長しない。

毎日、怒られてばかりだ。

執事だというのに、グレイはユウキに愚痴をこぼして……

しかし、ユウキは怒ることなく、むしろ楽しそうに彼の話に付き合った。

二人に身分の差はある。

その溝はとても大きいものだ。

しかし、そんなものは関係ないというかのように、二人は……友達だった。

結局、グレイは執事を諦めた。

色々と努力してみたものの、自分に執事は心底向いていない、という結論を出したからだ。

代わりに、ユウキの専属の護衛となった。

執事としての能力はまるで成長しなかったが、剣の腕はメキメキと育ち、いつの間にか王の親衛隊でも敵わないほどの実力になっていたのだ。

グレイは素直に喜んだ。

ただ、それ以上にユウキが喜んだ。

自分のことのように全力ではしゃいで、とびっきりの笑顔を浮かべて、おめでとうと心からの祝福を口にしてくれて……

そして、

「これで、いつも一緒にいられるね。これからもよろしく」

なんてことを言われたのだ。

その時、グレイは決めた。

己の心と魂に誓いを刻んだ。

ユウキのために生きて、ユウキのために死のう……と。

――――――――――

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」

グレイは肩で息をしていた。

必死に呼吸を整えようとするが、どうしても整えることができない。

呼吸をする度に血が流れていく。

それと同時に体の力が抜けていって、ゆっくりとだけど視界も暗くなってきた。

寒い。

血が水になってしまったかのようだ。

「ちっ……さすがに、きついな……」

目の前に並ぶのは、四天王と呼ばれていた魔族の群れ。

どうにかこうにか、二体を倒すことに成功したものの……

そんなグレイをあざ笑うように、さらに五体のギガブランドが現れた。

しかし、グレイは絶望しない。

絶望なんてする暇があるのなら、その分、一度でも多く剣を振るだけだ。

「きついが……まあ、それだけの晴れ舞台ってことだよな。坊っちゃんも、ちゃんと俺に任せてくれているし……ははっ、よくよく考えてみれば、最高じゃねえか。敬愛する主に認められて、そして、力になることができる。男に生まれた価値があるってもんだ」

不思議と力が湧いてきた。

ボロボロで、瀕死の状態だ。

立っていることすらおかしい。

それなのに……

グレイは、しっかりと立ち、大剣を構える。

衰えは見られない。

むしろ、今まで以上の覇気にあふれていた。

「グレイ・サガ……推して参るっ!!!」

主のために、グレイは剣を振るい続けた。