作品タイトル不明
532話 希望と絶望
地震が起きたかのような、巨大な力のうねり。
それを間近で感じ取り、自分でやったことなのだけど、その威力に震える。
クサナギとカムイを合体させて、今までにない最大威力を叩き出す。
それがサードフォームだ。
軽いテストは何度かしたものの、本格的な使用はこれが初めて。
まさか、ここまでの威力があるなんて……
こんなものを作り出せるなんて、ガンツの技術は世界一ではないだろうか?
「ふわぁ……レイン、すごいのだ」
「こ、このような切り札を隠し持っていたなんて……本当にすさまじいですね」
ルナとソラの、感心するような呆れるような、そんな声。
他のメンバーも似たような感じで、呆然としていた。
ただ、まだ勝負がついたかわからない。
クサナギを通常形態に戻して、いつなにが起きてもいいように構える。
やがて、土煙が晴れて……
「……」
上半身が消し飛び、物言わぬ骸と化したギガブランドの姿が見えた。
「……ふう」
どうやら、倒すことができたみたいだ。
まだピンチは脱していないのだけど……
大きな脅威を取り除くことができて、わずかながらに安堵した。
これでもし、ギガブランドが健在だったら、どうしようかと思う。
こちらの最大の攻撃は通じることはなくて、一方的に押し切られていただろう。
本当に危ない。
「ふぁー」
ふと聞こえてくる、のんびりとした声。
……アルテラのものだ。
ややあって、パチパチという拍手。
こちらも、アルテラのものだ。
「うんうん、すごい。本当にすごいねー。まさか、ギガブランドを半分、消し飛ばしちゃうなんて……すごい予想外。こんなこと、私もできないよ?」
「……嫌味か?」
「もう、本音なんだけどなー。称賛は素直に受け取らないとダメだよ?」
アルテラは幼く笑うものの、その笑みに隠れている悪意はもう知っている。
人の命を……あまつさえ、幼い子供の命を弄ぶ。
そんなやつは許しておけないが……
でも、今はユニアとアニを無事に脱出させることを最優先に考えないといけない。
幸いにも、ギガブランドを撃破することに成功した。
この調子で敵の包囲網を崩すことができれば、強引ではあるが、突破することも可能だろう。
……そう考えていたのだけど、次の瞬間、それが甘い考えであることを思い知らされる。
「でもでも、甘いなー」
「なに?」
「えへへー、特別に教えてあげる」
子供のように無邪気に笑いつつ、アルテラが自慢気に語る。
「直接やりあったからわかると思うんだけど、今のギガブランドは偽物みたいなものなんだよねー。回収しておいたギガブランドから、その体組織を抜き取り、培養して……まあ、めんどくさい説明はいらないよね。私も退屈だし」
とても嫌な予感がした。
でも、アルテラの話を遮ることはできない。
「面白そうなことを考えているんだよねー。聞いて聞いて♪ 魔族って、数が少ないから、そこが悩みどころなんだ。だから、細胞を苗床に埋め込んで増やす、っていう方法を考えたの。まあ、結果はびみょーな感じなんだけどね。動くは動くんだけど、ちゃんとものは考えられないし……まだまだ研究が必要かな?」
「そんなおもしろくない話の自慢をしたいのか?」
「えー、おもしろくないんだ、残念。なら……面白くしてあげる。ねえ……私達がさらってきた人間は、あと何人、いると思う?」
「……まさか」
猛烈に嫌な予感がした。
そして……それは的中する。
「ふふっ、じゃあ、お披露目しちゃおうかな?」
アルテラが指をパチンと鳴らした。
それを合図にして、ズンズンという地鳴りのような足音が複数、近づいてきた。
姿を見せたのは……今さっき、倒したばかりのギガブランドだ。
しかも、一体だけじゃない。
複数……通路を埋め尽くしてしまうほどの数がいる。
「おいおい……こりゃ、なんの冗談だよ……」
「まさか、こんな切り札を用意しているなんて……」
さすがのグレイとユウキも、顔色を悪くしていた。
ようやく倒したと思ったら、その倍以上の数が現れるなんて、悪夢以外の何者でもない。
絶望しても仕方ないだろう。
ただ……
俺は、絶望するよりもまず先に、激しい怒りを覚えていた。
「お前……」
「ん? なになに? すごい、って褒めてくれる?」
「苗床にした、っていうことは、これらは……」
「うん、元は人間だよん♪」
「……」
「人間なんて、餌とかくらいにしか思ってなかったんだけど……うん、意外も意外。まさか、こんな使い道があったなんてねー。ちょっと見直しちゃった。えらい、えらい。きゃはははっ♪」
「っ……!!!」
一瞬、頭の中が真っ白になってしまうほどの激情が湧き上がる。
今すぐに、あの耳障りな笑い声を叩き潰してやりたい。
が……ダメだ。
落ち着け、落ち着くんだ。
アルテラのことは、絶対に許せない。
人の命を弄び、その魂すら冒涜する所業は、いつか必ず報いを受けさせる。
でも今は、ユニアとアニのことを最優先に考えなければいけない。
「……グレイ、ユウキ」
連中に聞こえないように、振り返らず、小さな声で呼びかけた。
「……なんだい?」
「……ここを突破することは諦める。さすがに、あれだけの数を相手にするのは無理だ。引き返して、一度、連中を撒く」
「……うん、了解」
「……イリス」
「……はい」
「……合図と共に、特大の一撃を頼む。こちらには被害がなくて、向こう側の通路が埋まるくらいだと、なおうれしい」
「……わかりましたわ。わたくしは、人間が好きではありませんが……さすがに、このような外道は頭に来ていますの」
「……ソラ、ルナ。それとタニアは、ユニアとアニを頼む」
打ち合わせは終わり。
本当なら、もっと綿密な計画を立てたいところなのだけど、そんな時間も余裕もない。
「じゃあ、蹂躙して♪」
アルテラはとても楽しそうにしながら、複数のギガブランドに進撃命令を出した。
大きな足音が無数に重なり、ギガブランド達が迫る。
生半可な小細工は通用しない。
なので、切り札の一つを使うことにした。
「召喚!」
ガンツに作ってもらった、火の魔道具が仕込まれた投げナイフを召喚して、投擲する。
その際、とあるスイッチを押して、火の魔道具に過負荷がかかるように設定しておいた。
火の魔道具は臨界点に達して、爆発する。
投げナイフというよりは爆弾だ。
「来たれ、終焉の白撃っ!!!」
そこへ、イリスの極大の一撃が炸裂した。