作品タイトル不明
530話 秘技
気合を入れてみたのだけど……
でも、アルテラを倒すつもりなんてない。
ここは敵陣で、どのような罠が仕掛けられているかわからない。
最悪、ルイエのようなことが繰り返されるかもしれない。
なので、まずはこの場から逃げることが最優先だ。
出口とは反対方向に行ったとしても、まずは、アルテラ達を撒かないと。
ただ、そのためには……
「オォオオオオオッ!!!」
無差別に破壊を撒き散らす巨人。
ギガブランドをなんとかしなければいけない。
「イリス! ユウキ!」
「ええ」
「了解!」
まず最初に、イリスに広範囲を薙ぎ払ってもらう。
ギガブランドを止めることは敵わないが、その他の魔族の足止めには成功した。
そこへ、俺とユウキが突っ込む。
「クサナギ、セカンドフォーム!」
クサナギに魔力を流し込む。
それに呼応するかのようにエメラルドグリーンの刃が輝いて、十二に分解される。
十二の刃をコントロールして、ありとあらゆる角度からギガブランドを切り刻む。
「グッ、ウウウゥ……オオオオオォッ!!!」
戸惑うような声。
ただ、決定的なダメージを与えることはできていない様子で、ギガブランドは足を止めない。
その向かう先は……タニア達だ。
「させないよっ!」
果敢にもユウキがギガブランドの前に立ちはだかる。
双剣を手に、踊るようにして巨体を何度も何度も斬りつけていく。
常人ならば、その刃の嵐の前になにもできず絶命していただろうが……
理性がないとはいえ、相手は四天王の一角。
しかも、以前よりも強化されているという。
ギガブランドが足を止めることはない。
「くそっ、厄介な!」
グレイが舌打ちしつつ、ユウキのサポートに回る。
舌打ちしたくなる気持ちはよくわかる。
コイツ、攻撃力がすさまじいのだけど、それ以上に防御力と耐久力がめちゃくちゃだ。
グレイも自慢の大剣を叩きつけているのだけど、それでもなお、沈まない。
時折、タニアの護衛に回っているソラとルナの攻撃が飛んでくるのだけど、それでも止まらない。
最新鋭の攻城兵器を相手にしているかのようだ。
人の身で太刀打ちするのは、かなり厳しいかもしれない。
「とはいえ」
ヤツの進撃を許したら、タニアが危ない。
ユニアとアニが危ない。
これ以上、誰かを犠牲にしてたまるものか!
「イリス、ユウキ。すまないが、ちょっとだけ時間稼ぎを頼む」
「かしこまりました」
「任せて!」
イリスはもとより、ユウキも、なにも言わずに頷いてくれる。
そこには、俺に対する信頼が感じ取れた。
うん……俺は、本当に良い友達を得た。
「なら、とっておきでいこうかな!」
「坊っちゃん、アレをやるんですかい!?」
「今やらないで、いつやるっていうのさ!」
「ったく……ああ見えて、無茶をする時はおもいきりするから、困った方だ」
苦笑するグレイ。
そんな彼を見て、イリスは小首を傾げる。
「ユウキさんは、なにをしようとしているのでしょう?」
「時間稼ぎじゃなくて、そのままあの巨人を倒しちまうような、バカでかい一撃を放つつもりなのさ」
「レインさまならともかく、ただの人間にそのような真似が……?」
「まあ、俺らは他の相手をしておこうぜ」
「気になりますが……ひとまず、了解いたしましたわ」
グレイとイリスは、隙を見て攻撃をしかけてくる、他の魔族達の迎撃にあたる。
その間に、ユウキは力を溜めて……
準備完了。
「いくよ……!」
ユウキの双剣が輝いた。
強烈な魔力を感じる。
おそらく、魔力を蓄えて、威力を増すことができる魔剣なのだろう。
ユウキが持つ剣だから、なにかしらカラクリがあるのではないか? と考えていたのだけど……
ただただシンプルに、威力を増加させるとは。
ただ、シンプル故に強力だ。
世の中には、炎や氷を放つ魔剣が存在するが、言ってしまえばそれだけ。
トリッキーな戦術を組み込むことはできるかもしれないが、それ以上のことはできない。
しかし、ユウキの場合は違う。
圧倒的な技に、圧倒的な剣。
その二つが組み合わさり……
とてつもない破壊力を生み出す。
「壱之剣……雪月花っ!!!」
ユウキの双剣が閃いた。
いや……閃いたような気がした。
なぜそんな言い方をしたのかというと、見えなかったからだ。
なにかしらの攻撃が繰り出されているのはわかるのだけど、それ以上のことはなにもわからない。
視認できないほどの速度で、繰り返し攻撃が重ねられているのだろう。
その攻撃回数は、想像になるのだけど……おそらくは、百連撃以上。
嵐のような……いや、天災のごとき激烈な攻撃がギガブランドを襲う。
「グッ、ガッ……オアアアアアッ!!!?」
これだけの攻撃を受けることは、さすがに予想外だったのだろう。
ギガブランドが悲鳴をあげて、その巨体をよろめかせた。
すごい。
これだけの攻撃を繰り出すことができるなんて……
ユウキは、紛れもない天才だろう。
最強の剣士と言っても過言ではないかもしれない。
王族ではなくて冒険者になっていたら、Aランク……
いや。
Sランクになっていたのではないか?
そう思うだけの力がユウキにはあった。
彼の本気が、四天王を圧倒する。