作品タイトル不明
529話 外法
「あはっ、あははははは! きゃはははははっ!!!」
けたたましい笑い声が響いた。
「そう、それだよ、それ! その顔が見たかったんだーっ、あはははっ、ダメ、ホント面白い。笑い死にしちゃうよ、あはははっ!」
「お前は……ルイエになにをした!?」
「苗床になってもらったの」
「苗床……?」
「私達魔族がどうやって増えるか、知っている?」
そんな情報は持っていない。
敵対していることもあり、魔族の情報は未だ少ない。
「方法は二つ。他の生物と同じように、繁殖する。とはいえ、これってけっこう難しいんだよねー。相手はなんでもいいんだけど、でも、私達魔族って、なかなか子供ができないみたいでさー。だから、何度も何度もしないといけないんだ。お手頃なのは、やっぱり、人間をさらってくることかな? で、私達の母体になってもらうの」
「お前っ……! そのために、街の人をさらっていたのか!?」
「半分、せいかーい。ん? 三分の一くらい正解、が正しいのかな? 母体にするっていうのもあるんだけど、魂を取り出す、っていうのもあるんだよね。これはリー……おっとっと、喋りすぎちゃうところだった」
なんだ?
今、なにを口にしようとした?
もしかして、リースと言おうとしたのでは?
となると、魂を取り出すことを画策しているのはリース?
というか、リースまでここにいるのだろうか?
できるのなら、顔を合わせておきたいと思っていたが……
この状況で、敵が増えるのは勘弁してほしい。
「で、最後の目的が苗床になってもらうこと。人間の体、魂を奪い取り、新しい魔族が誕生する……もしくは、復活する。そんな実験をしているんだよねー」
吐き気がするほどにおぞましい実験だ。
強く睨みつけるものの、そんな俺の反応すら楽しいといった様子で、アルテラはニヤニヤと笑う。
「まだ実験段階だから、ちょっとダメダメなところはあるんだけどねー。ソレも、意識はないかな」
ソレというのは、ギガブランドのことだろう。
「でも……力は前と同じ、ううん、それ以上かな?」
「っ!?」
「がんばっているところ、見せて?」
「オオオオオォッ!!!」
ギガブランドが吠えた。
その瞳を紅に染めつつ、こちらに突撃をする。
「くっ……アイギスッ!!」
両手の盾を展開。
ギガブランドの突撃を真正面から受け止めた。
ギガブランドは力に特化した魔族だ。
特殊能力はなにも持たず、魔法を使うこともできない。
その代わり、身体能力が猫霊族以上に強化されている。
体も鋼鉄のように固く、五感は鋭く……ゴーレムを限界以上に強化した存在、と言えるだろう。
そんな相手と力比べをするなんて正気の沙汰ではないのだけど、下手に避ければ、みんなが巻き込まれてしまう。
「ぐっ、ううううう!?」
「グァアアアアアッ!!!」
や、やばい……コイツ、ホントにパワーアップしている。
以前、戦ったよりも遥かに速く、力が強い。
「重力操作!」
みんなが避難したことを確認した後、ギガブランドにかかる重力を横に変えた。
巨体が右へ曲がり、遺跡の壁に激突してくれる。
助かった……
でも、これで終わりじゃない。
むしろ、これからだ。
「データを取りたいから、出来損ないをぶつけるだけでもいいんだけどぉ……でも、それだけじゃつまらないよね? お兄ちゃん達、もっともっと絶望してほしいなぁ」
アルテラは、周囲の部下達に目で合図を送る。
十人の魔族が、それぞれ戦闘態勢に移行した。
アルテラは様子を見るだけらしいが……
理性はないものの、さらにパワーアップしたギガブランド。
そして、十人の魔族。
こちらは数が少なく、しかも、ユニアとアニを守らないといけない。
これは……
「おいおい、絶体絶命……っていうヤツじゃねえか」
グレイは冷や汗を流していた。
そう思う気持ちはわかる。
でも、それは早とちりというものだ。
「大丈夫だ」
「なんだって?」
「今、気づいたけど……援軍だ」
「「ドラグーンハウリングッ!!!」」
「っ!?」
竜の幻影を生み出して、その闘気をもって攻撃する魔法が炸裂した。
魔族の二人を飲み込み、壁に叩きつける。
突然のことに対処できなかったらしく、ノーガードだ。
倒すまではいかないが、それなりのダメージを与えることに成功したらしく、立ち上がることができないでいる。
そして、
「来たれ、異界の炎」
空間に穴が空いて、そこから豪炎が召喚された。
人の大きさほどもある炎弾が複数飛来して、ギガブランドに叩きつけられる。
ゴガァッ! という爆音が響いて、紅蓮がギガブランドを包み込んだ。
強烈な熱に苦しんでいるらしく、その巨体が揺れる。
「レイン、おまたせなのだ!」
「咄嗟に攻撃をしてしまいましたが、問題ありませんか?」
「ソラ、ルナ! ナイスタイミングだ!」
「あら、わたくしにはなにもないのですか?」
「もちろん、イリスにも感謝しているよ。本当に良いところで来てくれた」
ソラとルナ、イリスの三人が援軍にやってきてくれた。
本当に頼もしい。
これなら、なんとかなるだろう。
「捕まっていた人達は?」
「安心するのだ。ちゃんと、安全なところ……我らが上陸した近くの茂みに転移しておいたのだ」
「遠いので、少し時間がかかってしまいましたが……」
「わたくし達は、イヤな予感がしたので、慌てて戻ったのですわ」
「なるほど」
これなら、なんとかなるかもしれない。
希望が見えてきた。
「レインさま。これは、どういうことなのですか? わたくしの記憶違いでなければ、あれは、四天王の一角だと思うのですが……?」
「……詳細は後で説明するよ。とりあえず、今はこのピンチを脱する」
「承知いたしました」
イリスは、ちらりとユニアとアニを見る。
「子供が一緒となると、厳しいですわね。撤退を最優先にいたしましょう」
「理解が早くて助かるよ」
「ふふっ、わたくしはレインさまのものですから」
誤解があるような言い方は、やめてほしいのだけど……
「いくぞっ!」
「「「おーっ!!!」」」