軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

523話 助けて

戦闘は迅速に。

そして、無駄な動きはゼロで音を立てず。

そのおかげで、応援を呼ばれることなく制圧することができた。

本当は、もう少し様子を見たかったのだけど……

こうなると、もう贅沢は言っていられない。

すぐに行動に移るとしよう。

「みんなは周囲の警戒を頼む」

その間に、俺は牢の前へ移動。

鍵を調べる。

「えっと……シンプルなタイプの鍵だな。特にトラップも設置されていないから……よし、これならいける」

「あ、あなた達は……?」

囚われている人達が、牢の中から恐る恐る問いかけてきた。

見た目が人間と変わらない魔族もいるから、敵なのか味方なのか判断がつかないのだろう。

彼らを安心させるために、笑顔を浮かべる。

「安心してください、俺達は味方です」

「僕の名前は、ユウキ・ヴァン・ロールリーズ……第一王子です。あなた達を助けるためにやってきました」

「「「おぉ!?」」」

ユウキの肩書は絶大だ。

さっきまで訝しげにしていた人達だけど、これで助かると、すぐに笑顔になる。

ユウキが一緒にいてくれてよかった。

第一王子を危険な潜入に突き合わせるのはどうかと思っていたのだけど……

特に肩書のない俺では、彼らを安心させることはできなかっただろう。

「そのようなことはないのでは?」

「うむ。レインは、若き英雄として語られているではないか」

俺の考えていることを察した様子で、ソラとルナがそんなことを言う。

その会話が聞こえたらしく、囚われている人達が再びざわついた。

「英雄さま……? もしかして、ホライズンの英雄?」

「それに、王国の危機も救ったという……」

「私、クリオスも救った、って話を聞いたことあるわ」

さらに、囚われている人達が元気になった。

「えっと……」

「ふふ。レインも有名人だね」

「望んでいるわけじゃないんだが……まあ、今は役に立っているみたいだから、よしとするか」

とにかく、解錠を試みる。

とはいえ簡単だ。

シンプルな構造で、トラップも仕掛けられていない。

なら、力技で行ける。

「物質創造」

火薬を作り出して、それを鍵にしかけた。

離れてほしいと言ってから、着火。

ボンッ! という鈍い音と共に、鍵が地面に落ちた。

「よし、開いた」

「もう大丈夫ですよ」

「あぁ……まさか、生きてここを出られる時が来るなんて」

捕らえられていた人達を外に誘導する。

幸いというか、大きな怪我をしている人は少ない。

ただ……

なぜか、女性の方が多い。

ただの偶然なのか、それとも……

「あ、あのっ!」

最後の一人が牢を出て、そして、必死な様子でこちらを見る。

「助けてもらっておいて、わがままを言えるような立場じゃないことはわかっていて……今は、早く逃げないといけない、っていうことはわかるんですけど……」

「落ち着いて。なにか話したいことがあるのなら、きちんと聞くから」

「は、はい」

女性は軽く深呼吸をして、心を落ち着ける。

それから、改めて口を開く。

「お、お願いします! どうか、どうか妹達を助けていただけませんか……!?」

「妹さん?」

「私には、三人の妹がいるのですが、別の場所に連れて行かれたみたいで……今すぐ逃げないと、っていうのはわかります。わかるんですけど、でも……私には、あの子達を置いていくことなんてできません! どうか、どうかお願いします!!!」

女性は涙まじりに訴えて、深く頭を下げた。

俺とユウキは顔を見合わせる。

そして、どちらからともなく笑みを浮かべた。

「わかった。俺は冒険者だ。だから、その依頼、請けるよ」

「僕は王族だからね。民を見捨てるなんてこと、決してしないよ」

「あぁ……ありがとうございますっ、ありがとうございますっ!!!」

女性は涙を流して、再び、何度も何度も頭を下げた。

それだけ妹のことが大事なのだろう。

俺はもう、家族はいないけど……

でも、大事な仲間はいる。

だから、女性の気持ちがわかるような気がした。

「ユウキ」

「うん?」

「絶対に助けよう」

「そうだね」

ユウキも同じ気持ちになっているらしく、笑顔の奥で闘志を燃やしていた。

「レイン、ぼっちゃん。ちとこっちへ」

今の話を聞いていたらしく、グレイに手招きをされた。

苦い顔をしているため、なんとなく話したいことは理解できた。

「あの姉さんは気の毒ですけどね。でも、これ以上は危険ですぜ。これだけの人を助けることができたから、まずは撤退すべきだ。その後で、余裕があるのなら改めて挑む……それがベストだと思いやすがね?」

「うん、そうだね。グレイの言うことは正しいと思う」

「なら……」

「でも、僕は王族だ」

ユウキは毅然とした態度で言い放つ。

「王族だからこそ、どんな時でも民を見捨てるなんてことはしてはいけない」

「そいつは……」

「つまらないプライドと思われるかもしれない。見栄と思われるかもしれない。でも、僕は、王族であることに誇りを持っている。どんな人にも誇れる王族でありたいと思っている。だから……行くよ」

「あー……」

ユウキの性格を熟知しているらしく、グレイはとても困った顔に。

たぶん、こうなると絶対に引かないのだろう。

助けを求めるような視線をこちらに向けてくるのだけど、

「悪いが、俺もユウキに賛成だ」

「レインまで……」

「俺は勇者っていう器じゃなくて、ただの冒険者だ。世界を救うなんて大それたこと、言えないけど……それでも、目の前で泣いている人に手を差し伸べることはできる。その人の力になることはできる。そして、俺自身、助けたいって思う」

「そいつは、どうして?」

「誰かを助けるのに理由なんていらないだろう?」

「……」

「それが俺の答えだ」

グレイは、しばしの間目を丸くして、

「……はぁあああ。ぼっちゃんもレインも、気が合いすぎだろ。出会って大して時間経ってないのに、どうしてそんなに息がぴったりなんだか。反論してる俺が悪者みたいじゃねえか」

「それじゃあ……」

「わかりやした。俺も覚悟を決めましょう」

決まりだ。

ここにいる人だけではなくて、別の場所に連れて行かれたという妹さん達も助ける。