作品タイトル不明
522話 潜入開始
隠し通路を使い、遺跡の中へ潜入した。
遺跡の中はとても暗い。
明かりはゼロで、足元も見えない。
近くに敵の気配はしないが、だからといって明かりを使えば、遠くにいるかもしれない敵に見つかってしまう可能性がある。
さて、どうしたものか?
「明かりは最小限にして、それから、目が慣れるのを待って……おっ?」
「あら?」
どん、となにかがぶつかる感触。
「申しわけありません、レインさまでしたか。なにも見えないため、ぶつかってしまいましたわ」
「いや、いいよ。気にしないで」
「ふふっ、ありがとうございます」
温かい感触が離れない。
抱きつかれている……?
「えっと……イリス?」
「すみません、レインさま。なにも見えないため不安で、体を貸していただけますか?」
「そういうことなら……」
「ダメに……」
「「決まっているのだ!(です!)」」
「あんっ」
みんなの声がした後、イリスが引き剥がされた……らしい。
「ちょっとイリス、どさくさに紛れてなにしてるのよ?」
「そういうのはずるいと思うのだ」
「今は真面目にやらないとダメです」
「ふふっ、申しわけありません。ついつい」
「あはは、レインは大変だね」
「……笑い事じゃないんだけどな」
やれやれ、とため息がこぼれた。
「ソラ、ルナ。この暗闇、魔法でなんとかならないか? 明かりはない方向で、見通す方法はないかな?」
「はい、任せてください。暗闇を見通す魔法はあります」
「ただ、逆に暗闇しか見えなくなるから、一人にしか使えぬぞ?」
「なら、その魔法は俺にかけてくれねえか? こういう遺跡の探索の経験は、そこそこあるからな。道が見えるのなら、先導は十分にできる」
「わかった、グレイに任せる。周囲の警戒なんかは、俺達に任せてくれ」
ソラが魔法を使い、グレイの視界をクリアにした。
そんな彼が先頭に立ち、みんなは手を繋いで後をついていく。
そうして探索を始めること、三十分ほど。
敵に見つかることはない。
しかし、捕まっている人達を見つけることはできていない。
ただ、暗闇の領域から抜けることはできた。
視界が完全に確保されたわけじゃないけど、それでも、多少はものが見える。
グレイにかけられた暗視の魔法を解除した後、一度足を止めて、今後の方針を考える。
「この遺跡、けっこう広いわね。前に探索したところ以上なんじゃない?」
「へえ、そんなことが?」
「その話はまた今度で。でも、タニアの言う通り、予想以上だな」
外から見た感じだと、そんなに広くなさそうだったのだけど……
どうやら地下を中心に、あちらこちらに通路が伸びているらしい。
まるでアリの巣だ。
「やはり、二手に分かれた方がいいのではないか?」
「そうですね。陽動というわけではないから、それほど大きな問題にはならないと思いますが……どうでしょう、レイン?」
「うーん」
悩ましいのだけど……
「やめておこう」
潜入前にも言ったが、ここは敵の本拠地だ。
今は問題なくても、この先、大きな問題と遭遇しないとも限らない。
そうなった時、二手に分かれていたら対処できない可能性がある。
というか、その可能性が高い。
捕まっている人達を助けることは、もちろん大事なことなのだけど……
それ以前に、俺達が壊滅するわけにはいかない。
そのことはみんなもわかってくれて、反対意見は出てこなかった。
ただ、ならどうする? というような感じで、思考が停滞してしまう。
「さあ、レインさま。レインさまのなんでもテイム能力で、この状況を打破しましょう」
イリスにまで、なんでも、って言われた……
「そう言われてもな……」
「なにかこう、うまい生き物をテイムして、人質を探すとかできないの?」
「犬とかをテイムすればよいのではないか?」
「さすがに、このようなところに犬はいないでしょうから……代わりに、ネズミとかでしょうか?」
「ちょっといいかな?」
あれこれと話し合っていると、ユウキが挙手した。
「ちょっとした考えがあるんだけど」
――――――――――
さらに三十分後……
俺達は、人質が捕らえられていると思わしき牢の近くにたどり着いていた。
「ユウキはすごいな」
「あはは……うまくいったみたいで、よかったよ」
ユウキの案というのは、あえて敵を探し出して尾行する……というものだった。
たくさんの人質がいる以上、その世話をする魔族がいるはず。
まずは、その魔族を見つけ出す。
戦闘向きではない魔族で、色々な雑用を担当している魔族がいれば、それだろう。
その次は、後をつければいい。
そうすれば人質のところへ案内してくれる……というわけだ。
わりとシンプルな作戦なのだけど、しかし、敵を利用するという考えはなかなか出てこない。
盲点だ。
さすが王族というべきか、あの王の息子というべきか。
ユウキは強いだけじゃなくて、頭の回転も速い。
こういうところは見習わないと。
「ユウキのおかげで人質を見つけることができた」
「突撃する?」
「タニアは猪突猛進なのだ……」
「見張りがアレだけとは限りません。まずは、気づかれないように周囲の様子を確認して……」
「くしゅんっ!」
かわいらしいくしゃみ。
でも、大きな音。
「申しわけありません♪」
振り返ると、てへ、という感じでイリスが舌を出していた。
「誰だ!?」
「ああもうっ」
結局、こうなるのか!